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2022年のFIFAワールドカップ(ワールドカップ)が、「アルゼンチン優勝」をもって閉幕した。今大会は、2018年 ワールドカップロシア大会で初めて採用されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のさらなる進化により、属人性を排除した試合展開が可能になるなど、「テクノロジー」が注目された。では、なぜこうしたテクノロジーをFIFAは採用することになったのだろうか? FIFAとワールドカップをテクノロジーの視点で紐解いてみよう。
フットボールのデジタル化は進んだか?
11月20日(現地時間)に開幕し、アルゼンチン優勝をもって幕を閉じたFIFAワールドカップ2022。ピッチ内外でさまざまなトピックが話題となったこのカタール大会を、4年前の筆者連載の続編として、フットボール・テックの観点から総括したい。
2014年のブラジル大会においてゴールラインテクノロジー(Goal Line Technology:GLT)、2018年ロシア大会でビデオアシスタントレフェリー(Video Assistant Referee:VAR)と電子パフォーマンス&トラッキングシステム (Electronic Performance and Tracking Systems:EPTS)がそれぞれ導入
された 。
この8年間で明らかになってきたFIFAの目指す方向は「フットボールのデジタル化」だ。選手やボールのあらゆる動きをデジタル化し、プレーや時間進行のあらゆる判定・判断から曖昧な属人性を排除し、客観性や厳密さを追求した競技性の強化を目指してきた。
日本関連で言えばグループリーグ第3戦のスペイン戦での三笘薫選手のプレーのVAR判定が世界的に大きな話題となり、フットボール・テックが大きく注目されることになった。ではなぜFIFAをこのような技術導入を積極的に進めているのか。日本のメディアがあまり報じていないバックグラウンド・ストーリーから、ひも解いてみよう。
FIFAの強烈な「高潔フットボール志向」
FIFAの「デジタル化=機械化」については、選手をはじめとした業界関係者から疑問や反対の声がこれまでも上がってきたが、FIFAの毅然とした姿勢は一貫して続く。
FIFAはロシア大会後の2020年にインファンティーノ会長の強いリーダーシップの下、“
THE VISION 2020-2023 ”を発表している。その目標は2022年の男子ワールドカップ・カタール大会と、2023年 女子W杯オーストラリア&ニュージーランド大会までにあらゆる改革を推進することだ。
会長自身が「my vision」と述べるこのビジョンの根幹には、「フットボールの真のグローバル化」というメッセージが込められている。
インファンティーノ会長はグローバル化の意味するものとして“popularising, developing and democratising football”(フットボールの大衆化、発展、民主化)、“modernising our sport to be global, accessible and inclusive in all aspects”(スポーツをモダン化することでグローバルで、アクセスしやすく、さまざまなものを巻き込んでいくものにする)といった言葉を発信している。
これからのフットボールは、一部の強豪国やビッグクラブの選手や関係者だけが優先されるものではなく、その是正のための改革や支援を主導していく、というインファンティーノ会長のメッセージだ。
世界中のあらゆる国・クラブ・団体・個人に愛され、フットボールに関与する人々を増やしていく。その先には、欧州や南米のみといった限定的な地域ではなく、世界全大陸からなる50カ国以上の代表チームと、50以上のクラブがトップレベルで競い合える環境の構築を目指す。
1998年から2015年まで17年間続いたゼップ・ブラッター前会長時代に、FIFA幹部が多数関与する形で、FIFA自身および各大陸サッカー連盟における複数の汚職事件が生じており、フットボール・ビジネスの社会的信用が著しく棄損された。
また、2000年代以降のフットボール・ビジネスの急速拡大によって欧州フットボールに巨額の富と人材が集まり、世界のフットボール地政学における極端なまでの欧州偏重が進んだ。こういった事象が背景にあることは間違いないと筆者は考える。
THE VISION 2020-2023は、フットボール復権の強い意志を込めたガイドラインなのである(その裏では中国資本の巻き込みを狙っているのが本音ではないか、といった懐疑的な声も上がっているが、本稿では取り上げない)。
【次ページ】the new FIFA「11のゴール設定とは?」
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