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- 2023/04/05 掲載
冷食ブームの裏で進む「物流倉庫の大変化」、賃貸を選ぶしかなくなった“切実事情”
スーパーの「ライフ」も売り場拡大
日本冷凍食品協会の統計資料によると、2021年における冷凍食品の国内生産量は重量ベースで102.9%、金額ベースで105.2%と2020年実績から増加する結果となった。中でも家庭用は、共働き世帯・単身世帯の増加や、最近ではコロナ禍による自宅での食事機会増加などで、2015年以降、右肩上がりで上昇を続けている。まさに「冷食ブーム」である。こうした状況を受けて、新規開店するスーパーマーケットでは、冷凍食品コーナーのスペースを大幅に拡大し、競合他店との差別化を図る動きも見られる。
2022年9月にオープンしたライフ豊洲店では、冷凍食品やミールキットなどの種類を拡充。冷凍食品に至っては、売り場面積がライフ全店の中でも最も大きい面積を誇るという。
スーパーなどが冷食の取り扱いを拡充していることが見て取れるが、こうした冷食需要の拡大とともに、冷食を取り扱う物流事業も変化しようとしている。
ある運送会社が下した「所有から賃借へ」という決断
藤原運輸(大阪市西区)は、1935年に創業した老舗の物流企業である。その藤原運輸が、日本GLPが神戸市内で開発する2024年3月竣工予定の冷凍冷蔵物流施設を1棟まるごと借り受ける、と2022年10月に発表された。藤原運輸 支店長代理 石渡 大氏は、「六甲アイランド内(神戸市東灘区、神戸港内にある人工島)に自社冷凍冷蔵倉庫を保有していますが、竣工から30年が経過し、老朽化が進んでいます。設備の入れ替えを行おうとすると相応の投資が必要となるため、自社倉庫ありきではなく、賃借という選択が浮上しました」と説明する。
冷凍冷蔵倉庫に限らず、もっと言えば倉庫だけではなく、不動産ビジネス全般の話なのだが、倉庫やオフィスビルなどを建設し、20年かけて減価償却した後、「後は賃料丸儲けだからね」と期待する不動産オーナーは少なくない。
だが石渡氏は、「これからのビジネスを考えたとき、自社資産に縛られてしまうと、柔軟で素早い動きができない危惧もある」とこのような考え方に対する懸念を語る。
冷食需要が激変した昨今において、倉庫も「所有」から「賃借」へと移行させることで、スピードの速い冷食ニーズの変化に対して柔軟に対応できる体制を整えようとしている。だがこれだけでなく、立地面においても大きな変化が見られるようになってきた。 【次ページ】冷凍冷蔵倉庫=湾岸のイメージが“ガラッと”変わるワケ
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