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  • 2022/04/07 掲載

なぜ「物流不動産」は儲かる? 1兆円がたった4年で消える絶好調ビジネスの正体とは

連載:「日本の物流現場から」

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過去最高の1兆円ファンド成立──。物流不動産ディベロッパー大手の日本GLPが、2022年2月に発表したニュースリリースに業界はどよめいている。年24兆円という巨大な物流ビジネスとはいえ、1兆円というファンドは、「さすがに勇み足ではないのか?」という声が上がる。日本GLPは、物流業界にさらなる発展をもたらす救世主か、それとも風車に無謀な戦いを挑む変わり者のドン・キホーテなのか?また、物流不動産ビジネスはどのような道をたどっていくのか。日本GLP 帖佐社長を直撃した。

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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図1:大規模物流不動産の開発面積はこの10年で6倍に拡大する見込み。なぜこれだけの拡大を続けているのか
(日本ロジスティクスフィールド総合研究所資料より編集部作成)

たった4年で使いきる? 1兆円ファンド誕生の舞台裏

 2022年2月9日、日本経済新聞は「GLP、物流施設整備へ1兆円ファンド 国内最大規模」と報じた。既に追随する報道が続いているので、ご存じの方も多いだろう。金額が大きいだけに、「大丈夫なのか?」といった、ビジネスとしての現実性に疑問を抱く人があらわれるのも致し方ないと思う。

 しかし、物流不動産ビジネスは、拡大を続けている。


 リーマンショック以前は、新規総床面積の開発が多くても年間200万平方メートル程度であったが、2022年には600万平方メートルにまで拡大すると予測されている(図1)。この10年で見ればリーマンショックの影響はあるものの、6倍にまで拡大する見込みだ。年間投資額については、約1兆円超にまで広がるとの予想だ。

 物流不動産ビジネス・マーケットの活況を受け、新規参入者も増えている。2021年3月、IHIは三井不動産と共同で神奈川県綾瀬市に延べ床面積5万8700平方メートルの物流施設を着工した。サンケイビルは、「SANKEILOGI」なるブランドを立ち上げ、単独事業として千葉県柏市に1万1408平方メートルの物流施設を2021年4月に着工した。

 物流不動産の開発に参画する事業者は年々増え続け、2012年には17社だった事業者は、2022年には56社に増えると見込まれている(図2)。

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図2:絶好調のビジネスを取り込もうと、2012年に17社だった事業者数が2022年には56社に増える見通し
(日本ロジスティクスフィールド総合研究所より編集部作成)

 今回の1兆円というファンド規模は、2022年の1年間で56社の物流不動産ディベロッパーが行う開発と同等で、大型物流施設を50棟前後も建設できる規模である。

 1兆円ファンドとして話題を集めた「GLPジャパン・デベロップメント・パートナーズIV」(JDP4)は、北米、アジア、中東の代表的な年金基金、政府系ファンド、保険会社などの多様な投資家グループが参加し、募集上限額である4,120億円(約37億米ドル)を調達、運用資産は1兆円(約91億米ドル)以上に達すると見込まれている。

 JDP4は、前身の「GLPジャパン・デベロップメント・パートナーズⅢ」(2018年に設立)と比較し、資産規模が約65%拡大した。JDP4は、当初の目標額であった3,000億円に対し、2倍を越える申し込みがあり、結果、上限額である4,120億円でクローズした。つまり、投資家は、日本の物流不動産ビジネス・マーケットに対し、依然として旺盛な投資意欲を持っていることになる。

 ちなみにJDP4による物流施設計画は、4年以内に完了する。竣工はともかく、1兆円の使い道となる立地選定、物流施設の基本設計などは、4年以内で決まるのだ。

日本GLP社長が語る「物流不動産」ビジネスの可能性

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日本GLP 代表取締役社長 帖佐義之氏(左)とモノフル 代表取締役社長 藤岡洋介氏
(写真:筆者撮影)

 「1兆円という金額には固執していません。規模一辺倒で今回のファンドを求めたのではなく、今の時代にマッチするビジネスサイズが、1兆円だっただけです」──説明してくれたのは、トラックバース管理システムなどを提供する日本GLP子会社のモノフル 代表取締役社長であり、日本GLP 常務執行役員を兼任する藤岡洋介氏である。藤岡氏の言葉からは、1兆円という巨額の資金調達に対する特別な気負いは感じられない。

 藤岡氏の言葉を受け、日本GLP 代表取締役社長 帖佐義之氏は「たしかに、1兆円のファンドは大きいですよ」と前置きした上で、「20年間、私は物流不動産ビジネスに関わってきました。その間、1度たりとも足の止まる瞬間はありませんでした」と説明する。

「過去を振り返れば、リーマンショックや東日本大震災など、経済のターニングポイントはいくつもありました。だが、物流不動産ビジネスは、ずっと成長をし続けてきました。それは、物流には無限の可能性があるからです。『こんなこともできるんじゃないか?』、新たなアイデアが次々と生まれては、挑戦し、そしてその結果が次の挑戦に向けた自信へとつながることを、実感し続けた20年でした」(帖佐氏)

 「物流に、未来の、+αを。創造連鎖する物流プラットフォーム」──これは、日本GLPが新たに立ち上げた物流施設のブランド「ALFALINK」(アルファリンク)のキャッチコピーである。では、日本GLPが物流不動産ビジネスにおいて、新たに「創造連鎖する+α」とはなんだろうか?ここから物流不動産が担っていく役割や将来のビジネスモデルが見えてくる。

【次ページ】日本の物流を変える物流不動産と「3つの+α」

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