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  • 2023/05/01 掲載

CDAO(最高データアナリティクス責任者)とは何か? 必要なのは技術力だけではないワケ

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データとアナリティクスによる新たな価値創出に向け、最高データアナリティクス責任者(CDAO)に寄せられる期待は高まる一方だ。しかし、データ分析にかかわる多くのミッションは一筋縄ではいかない取り組みが多い。ChatGPTをはじめ、ジェネレーティブAIも台頭する中で、CDAOやデータ/アナリティクス部門がより大きな成果を上げるために何が必要となるのか。ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント,アナリストのアラン・ダンカン氏は「技術的な知見だけでなく、アイデアを生む能力や他社と連携できる能力も求められる」と指摘する。同社が実施した調査を基に、企業のデータ/アナリティクスの現状と課題について解説する。

執筆:フリーライター 岡崎勝己

執筆:フリーライター 岡崎勝己

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CDAOが果たすべき役割は大きい
(Photo/Shutterstock.com)

CDAOとは? 背景にあるデータアナリティクスの“明”と“暗”

 最高データアナリティクス責任者(CDAO)とは、データアナリティクス(DA)の最高責任者であり、DA戦略の策定と実行、DAチームの指揮、経営層との協業などを担当する役職だ。つまり、データとアナリティクスから新たなビジネス価値や収益の創出を担う責任者と言える。

 CDAOの登場は、振り返れば、データの重要性が強く叫ばれる中、2000年代半ばに全社的なデータ管理を統括する最高データ責任者(CDO)が登場し、後を追うようにデータ分析を指揮する最高アナリティクス責任者(CAO)の配置も広がった。アナリティクス精度を向上させるには自社のデータ戦略やデータの扱い方の掌握が不可欠。CDAOの誕生はいわば必然とも言える。

 もっとも、CDAOのミッションはDX(デジタルトランスフォーメーション)そのものであり、達成は一筋縄ではいかない。では、現状においてCDAOはどれほど成果を挙げられているのか。

 ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント,アナリストのアラン・ダンカン氏は、「この点を踏まえ、当社は日本と東南アジアで調査を実施し、約560社から回答を得ました。結果から明らかとなったのは、目的が『目先のビジネスの成功』か『将来的なビジネスの成長や持続可能性』かで、DA施策の成功度が大きく左右されているということです」と解説する。

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DA施策は目先のビジネスの成功のために一定以上の成果を上げる一方で、将来的なビジネスの成長や持続可能性の点では大きな成果は上がっていない
(出典:Gartner(2023年4月))

 すでに成果を上げているのが前者だ。倫理的なビジネス、顧客満足度や収益の向上、リスク低減、ESGの達成/改善などを目指す取り組みであり、「特にESGでは多種・大量のデータ管理が不可欠です。その中にあって、すでに多くの企業で、データ分析が当たり前のように行われており、その継続性から概ね満足のいく成果が上がっていると言っていいでしょう」(ダンカン氏)

 対して「成果がいまだ不十分」(ダンカン氏)と指摘するのが、新しい製品/サービスやイノベーションの創出、レジリエンスや適応力の獲得/向上、データ・リテラシーを備えた人材の育成/定着などを目指す後者だ。

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ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント,アナリスト アラン・ダンカン氏

DA部門に期待されている役割と「成果が上がらない」現状

 DA部門は、「データに基づく予測/分析」で、他部門と一線を画す能力を持つ。そこで大きな期待を集めているのが先行指標など、将来に向けた知見の獲得だ。その経営における意義の大きさから、DA部門はIT部門から独立した存在として広く認められ、すでに6割以上で何らかの分析プロダクトの自律的な開発が進められている。

 ただし、ダンカン氏によれば現状において目立った成果は上がっていないという。

「分析結果を測定可能なかたちでビジネスの成果につなげられているDA部門は現段階ではわずか1/3、データの収益化では1/4にとどまります。結果だけを見ると、DA部門が経営の期待に応えられているとは到底言えません」(ダンカン氏)

 全社ビジネス対する貢献度の低さから、社内に対する影響力も依然として小さく、ビジネス戦略の策定に携わるCDAOも現状、約3割にとどまるという。M&Aによる新たなビジネスインテグレーションでは、経営資源などのデータ/アナリティクスは極めて有益だが、実際に携わった経験のあるDAチームも2割未満だ。

 もっとも、将来に向けたDAが本格化したのは、DXと同じくここ数年のこと。ノウハウもない中での新たな取り組みだけに、実績の乏しさ、ひいては戦略策定におけるCDAOのプレゼンスの低さは仕方のない面もあるという。

「一昨年の同様の調査では、データの収益化を達成したDA部門は11%で、ノウハウの蓄積により成果は上がりつつあるという見方もできます」(ダンカン氏)

 その上で、この状況からのいち早い脱却に向けてダンカン氏が必要性を訴えるのが、経営層とのコミュニケーションの強化だ。

「社内におけるCDAOとDAチームの存在感を高めるためには、まずはCEOやCIO、CFOから信頼される必要があります。そのために、常日頃からのコミュニケーションを心掛け、DAがビジネスにどう貢献できるかについてビジョンを提示しつつ訴え続けなければなりません。その中で、DAチームとして具体的な施策を提案し、認めてもらえるよう働きかける。その成果を積み上げることで、任される範囲を広げていくというわけです」(ダンカン氏) 【次ページ】6割が投資を拡大、人材不足をどう解消すべきか?

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