- 2025/12/08 掲載
データアナリストとは?仕事内容や年収・資格・向いている人は?
データアナリストとは?ビジネスの意思決定をデータで支える専門家
現代のビジネス環境では、企業が持つ顧客データ、売上データ、Webのアクセスログ、内部システムの実績データなど、あらゆる「データ」が戦略や施策の根拠になる。そんな中で、データを収集し、整理し、分析し、そこから意味ある「インサイト」を引き出すことで、経営判断や事業改善を支えるのが「データアナリスト」という専門家だ。データアナリストとは、単なる「データの数値チェック係」ではなく、ビジネス課題を理解し、データを読み替え、将来の方向性を示せる──。つまり、データを“言葉”に翻訳する「通訳者」であり、「案内役」である。特にデジタル化が進む企業や、Web/アプリ/サービス運営を行う企業では、データアナリストの存在が、組織の意思決定の質に直結するようになってきている。
なぜ今、データアナリストに注目が集まるのか
多くの企業が「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「データドリブン経営」を標榜するようになったことで、ただデータを溜め込むだけでは意味がない──という認識が広がっている。過去数年で、データ分析の重要性は劇的に高まってきている。- データ量と種類が爆発的に増加した。
Webサービス、モバイルアプリ、クラウド、IoT──企業が扱うデータは量も種類も多様化し、Excelでの集計では追いつかない。 - 経営やマーケティングにおける“科学的根拠”のニーズ。
感覚や経験だけでなく、データを根拠にした仮説構築・検証サイクル(PDCA)が求められるようになった。 - 競争の激化で、迅速かつ正確な判断が求められる。
市場の変化や顧客の行動はスピーディ。データをもとにした迅速な判断と改善が競争力につながる。
こうした背景から、データを「所有しているだけ」の企業から、「活かせる」企業へと生まれ変わるために、データアナリストの存在は不可欠となってきている。
データアナリストの具体的な仕事内容
データアナリストの仕事は多岐に渡る。単なるデータ集計に留まらず、ビジネスに直結する「価値ある提案」まで含まれる。以下に代表的なフェーズと業務内容を示す。1. ビジネス課題のヒアリングと要件定義
まず、データアナリストはビジネスの現場や経営層、マーケティング担当などから「何を解決したいか」「どんな疑問を明らかにしたいか」を聞き取る。たとえば「今のキャンペーンは効果あったか?」「離脱が多いユーザーはどんな特徴か?」といった問いだ。
ここで重要なのは、単に数値を追うのではなく、「そのデータ分析がビジネスにどう影響するか」を見定めること。要件定義とは、必要なデータ、期間、KPI(重要業績指標)を決めることであり、これが曖昧だと後の分析がぶれてしまう。
たとえば、以下のような問いを明確にし、プロジェクトの設計図を作るのが、まさにこのフェーズだ。
- 解約率を改善したい
→ どの期間のデータを見るか、どの顧客層を対象にするか - 効果的な広告チャネルを知りたい
→ 広告クリック、コンバージョン、顧客獲得コストなど、どの指標が必要か
2. データの収集・加工・整理
問いが決まったら、次に必要なのはデータそのもの。だが、企業データはしばしばバラバラで、形式もまちまちだ。ログデータ、CSV、データベース、外部サービスのデータなど。そこで、データアナリストはこれらを集め、整える──つまり“前処理”をする。
この工程でよく使われるのは、SQL(データベースから必要なデータ抽出)、Python や R(データのクリーニング、欠損値処理、型変換など)、Excel/BIツール(簡易的な集計)などだ。
たとえば、次のような作業が含まれる。
| 作業内容 | 意義 |
| 重複レコード削除、NULL処理、異常値チェック | 分析結果の信頼性確保 |
| 異なる表・ソースの結合(JOIN) | データを統合して全体像を掴む |
| タイムスタンプの整形、カテゴリ変数のコード化 | 分析可能な形に整える |
こうして初めて「分析に耐えうる」「意味ある」データが整う。
3.データの分析・可視化
データが整ったら、次は分析。過去の傾向を読み取ったり、異常なパターンを見つけたり、相関関係や傾向を把握したり──。分析の目的に応じて、手法はさまざまだ。
よく使われるのは、以下のようなものだ。
- 集計(例:月別売上、地域別ユーザー数)
- クロス集計(例:年齢 × 離脱率)
- 時系列分析
- 相関分析・傾向分析
加えて、結果を「ビジュアル(グラフ・チャート・ダッシュボード)」で表現することで、技術者でない人にも直感的に理解してもらえるようにする。たとえば、折れ線グラフで売上の推移を示したり、棒グラフや円グラフで構成比を示したり。これが「可視化」の力だ。
分析と可視化がうまくかみ合えば、単なる数値ではなく「ストーリーのあるデータ」を示すことができる。
4.分析結果のレポーティングと施策提言
分析と可視化が終わった段階で、データアナリストの本領が発揮される。それは「洞察(インサイト)」をもとに、実際のビジネス施策を提言することだ。
たとえば、以下のようにデータだけでなく「なぜそうなっているか」「どう改善すべきか」を考え、経営層やマーケ担当に提言する。そして、施策実行後は再び効果を検証し、改善サイクルを回す──。この「データ → 行動 → 改善」のサイクルを回せるのが、データアナリストの強みだ。
- 「このユーザー層は離脱率が高いため、オンボーディング施策の強化が効果的」
- 「広告AのCPA(顧客獲得コスト)が高く、Bのほうが効率的」
- 「この期間の売上停滞は季節要因というより、キャンペーン設計が悪いため」
データサイエンティストとの違い
「データアナリスト」としばしば混同されるのが「データサイエンティスト」。両者ともデータを扱う職種だが、目的や役割、必要スキルには明確な違いがある。データアナリストは主に“現在/過去のデータ”からビジネス上の洞察を引き出す。つまり「今、何が起きているか」「どこに改善点があるか」を見抜き、施策提案を行う。一方、データサイエンティストは“未来の予測”や“新たな価値創造”を担うことが多く、機械学習や統計モデル、予測アルゴリズムなどを用いて、「これからどうなるか」「どんな戦略を取るべきか」を設計する。
ただし企業やチームによっては、データアナリストが機械学習モデルの基礎分析や簡易な予測を行うこともある。そのため境界はやや曖昧で、「どこまでを“アナリスト”と定義するか」は組織やプロジェクトによって異なる。
データアナリストの年収は?
〇年代・経験別の平均年収日本におけるデータアナリストの年収水準は、他の一般的なエンジニア職や会社員に比べて高めだ。転職サイトGeeklyの調べによれば、平均年収は約700万円。求人ボックスの調査によれば、同サイトに掲載されていた求人情報では平均718万円だったという。ただし、全体の給与幅としては440~1,244万円と比較的広いため、勤務先や経験によっても大きな差がある。
こうした数値から分かるのは、データアナリストは専門性が高いために報酬もしっかり設定されやすく、経験を積むことで安定的に年収と市場価値を上げやすい職種であるということだ。 【次ページ】年収を上げるためのポイント
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