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  • 2023/10/23 掲載

CRMがなぜ「顧客体験を阻害する」のか? 顧客体験を中心とした視点への転換方法

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ビジネスの成長に「CRM(顧客関係管理)システム」の活用は必要不可欠だ。その一方で現在、CRMが顧客体験を阻害することも起きているという。「CRMが業務効率化などの企業側の目線で改良されてきた」と指摘するのはガートナーのシニア ディレクター, アナリストの川辺 謙介氏だ。顧客視点でのCRMをどう再構築すればいいのか。川辺氏が解説する。

執筆:フリーライター 翁長 潤

執筆:フリーライター 翁長 潤

ライター。2010年、IT製品・サービスに関する情報提供を目的とするWebサイトにて医療チャンネルの立ち上げに参画し、担当記者として医療分野のIT推進の動向を取材して記事を制作。2011年、日本医療情報学会認定の医療情報技師資格を取得後、病院・診療所向け合わせて30社以上の電子カルテベンダーを取材した実績がある。医療関連システムの製品情報や導入事例、医療IT政策・市場動向に関する取材を行ってきた。

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キャンペーンからコンタクトまで含めた流れの一例
(出典:Gartner(2023年6月))

企業側の目線で改良されてきた既存のCRM

 読者の皆さんも、日常生活や取引先の企業に対して、何度も同じ質問をしなければならなかったり、問い合わせの仕方や対応窓口がわからなかったりした経験はないだろうか。その原因として、ガートナーの川辺氏は「顧客応対システムやオペレーションの問題がある」と指摘する。

 川辺氏によれば、これまでのCRMアプリケーションの多くが、単一の特定部門が利用する前提で開発、構築されてきたという。そのため、キャンペーンからコンタクトに至るまでの各アプリケーションが業務効率化などの企業側の目線で改良されてきた。

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ガートナー シニア ディレクター, アナリスト 川辺 謙介氏

 つまり、必ずしも顧客の視点に立ち、顧客にとってスムーズな体験を提供できているとは言えない状況にあるという。

「今こそ、部門別のテクノロジーに焦点を当てたモデルから脱却し、カスタマー・エクスペリエンスによって推進されるモデルへと移行すべきだ」(川辺氏)

 そして、モデル移行を実現するためにシステム開発部門が実施すべきこととして、以下の3つのステップを示した。

  1. ガートナーが提唱する「CX CORE」を出発点として利用する

  2. ビジネス・ケイパビリティ(ビジネス能力)モデリングを使用して、テクノロジ・アーキテクチャを推進する

  3. テクノロジ・リファレンス・モデル(TRM)を使用して、望ましいカスタマー・エクスペリエンスに必要なビジネス・ケイパビリティにテクノロジーを連携させる

 それぞれについて詳しく見ていこう。

ビジネス・アーキテクチャ/戦略「CX CORE」とは

 そもそも「CX CORE」とは何か。川辺氏は「顧客関係の管理のために使用され、組織または役割ベースでテクノロジーを構成する原理として機能するビジネス・アーキテクチャと戦略」と説明する。

 CX COREは、誰が顧客でどのように感じているのかという「顧客関係の段階」すべてで顧客を中心に捉える。また、顧客関係を統制する一連のやり取り/原則(エチケット)によって顧客にとって望ましくないものを遮断する役割を担う。さらに、すべてのリソース、ワークフロー、やり取りにわたるエクスペリエンスの実装方法を「インテリジェンスな調整」によって決定するという。

「たとえば、エクスペリエンスを提供する実行基盤には、CRMにおけるインテリジェントな調整を可能にすることが求められます。その主な要素として、顧客接点を設計したり、適切なタイミングで自社の製品やサービスを案内する、あるいは適切な形に変えてみたりすることも必要です」(川辺氏)

 また、同氏はCX COREのベースには顧客を中心とする「アウトサイド・イン」の視点があると説明する。これは、企業の外側にいる顧客が企業をどう見ているかという視点でのモデルだ。

 一方、CRMアプリケーション機能群は「インサイド・アウト」の視点で構築されてきた。

「従来のアプリケーション機能は、顧客サービス/サポート、マーケティング、デジタル・コマース、営業部門などの顧客接点でまとめたものです。顧客が求める形のアウトサイド・インから見ると、あくまで企業にとって都合のいい形で開発されてきたアプリケーションは簡単にはかみ合うことはないのです」(川辺氏)

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アウトサイド・インの視点とインサイド・アウトの視点をつなげる
(出典:Gartner(2023年6月))

 では、両方の視点をかみ合わせる方法とは何か。まずアウトサイド・インには「ビジネス・ケイパビリティ・モデル」を適用し、インサイド・アウトにはテクノロジー・リファレンス・モデルを適用する。両方をスムーズに連携できる基盤こそ「顧客テクノロジー・プラットフォーム(CTP)」だ。

 川辺氏は「CTPとは特定のベンダーのソリューションを指すのではありません。ただ、この基盤がなければ、アプリケーションが連携できず、ぎこちない残念なエクスペリエンスを提供することになりかねません」と説明する。 【次ページ】ビジネス戦略を変換して運用化を支援する「BCM」とは

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