後藤 洋氏 トライベック・ストラテジー コンサルティング部 ゼネラルマネージャー

　Webサイト構築のステップにおいて、今では当たり前のように「まず始めにWeb戦略構築だ」と言われるようになった。しかしながら、このWeb戦略構築の本当の意義を知り、実践できている企業は果たしてどれくらいあるのだろうか？

　Web戦略構築のもっとも重要な意義は、Webサイトの構築ステップにおいて、すべての判断基準となるということである。変化しつづけるWeb2.0時代において、判断基準をもって一貫した方向性を実践していくことこそが、成功のカギなのである。　

　またWebサイト構築においては、PDCAサイクル（Plan［計画］→Do［実行］→Check［評価］→Action［改善］）も重要な考え方である。その考え方のなかではWeb戦略はPlanであるととらえられがちだが、実はWeb戦略はCheckにおいてもっとも重要な機能を果たす。たとえるならばこれは、道路標識があるかないか、くらいの大きなインパクトをもつのである。

図1：トライベック・ストラテジー社のWeb戦略ツリー構造

　以下、Web戦略を構築する前提としておさえておくべき点について考察していく。

　Web2.0時代におけるもっとも大きなパラダイム変化のひとつは、インターネットにおける情報主体が“企業発信情報からユーザ発信情報へ”シフトしてきていることである。こうしたなかでWebサイトを構築するにあたって、ますます重要性を増しているのがWebサイトの目的や存在意義などの目指す方向性を明確にすることである。それらを総称して“Web戦略”と呼ぶ。

　企業が運営するWebサイトは、多かれ少なかれ企業側の目的を反映し、ユーザから支持されようと努力している。にも関わらずうまくいかない、ユーザ離れが起こるのはなぜか？そこには共通した問題点が潜んでいる。企業は自社の商品を売りたいし、そのために多くのユーザを獲得しようと努力する。当然である。しかし、その当然のことを追求するがあまりに、コーポレートオリエンテッド（企業中心思考）に陥り、企業の思いどおりにユーザを動かそうと、さまざまなトレンドや技術を駆使し、ユーザを引っ張っていこうとする現象が起こる。それこそが最大の問題であり、ユーザ離れの原因なのだ。このような結果を引き起こす考え方は“Web1.0型戦略志向”（＝企業中心な考え方）であると言える。

　ユーザは引っ張られることを良しとしない。そのWebサイトに興味をもち、参加し、共感し、理解することで、はじめて親近感を覚えリピータになっていくのである。ユーザの本質的な気持ちを忘れることは、すなわち変化しつづけるWeb2.0時代において限界を迎えることとイコールである。



　ではWeb2.0時代におけるWeb戦略をどのように考えるべきか？答えは非常にシンプルである。連載第1回でも話したが、そこにユーザオリエンテッド（ユーザ中心の考え方）を組み入れるのである。企業戦略視点×ユーザ戦略視点の最適化によってWeb戦略を構築する。それこそがこの変化し続ける時代を乗り越えるための重要なファクターであり、その考え方こそ“Web2.0型戦略志向”と呼ぶにふさわしい。

図2：Webサイトの目指すべき方向性

　企業は 今まさに“Web1.0型戦略志向”から“Web2.0型戦略志向”への転換を余儀なくされている。“Web2.0型戦略志向”を用いたWeb戦略構築。この具体的な構築方法を次回は紹介しよう。



【筆者プロフィール紹介】
後藤 洋氏
トライベック・ストラテジー
コンサルティング部 ゼネラルマネージャー

慶應義塾大学法学部卒業。同大学卒業後、ソフトバンクに入社。同社出版部門の広告 局にて、幅広いクライアントの広告営業に従事。また新規事業立ち上げにおいてマー ケティングを担当。2002年4月より、トライベック・ストラテジーに参画。同社のユー ザー視点でのワンストップソリューションを核に、IT、飲料、金融、エンタテインメ ント、など業種業態にかたよらない幅広いプロジェクトに従事。Webマーケティング 戦略、プロモーション戦略の策定から企業ブランドサイト構築、ECサイト構築、コミュ ニティサイト構築などを手がける。専門は、Webマーケティング戦略全般／コミュニ ケーション戦略／ブランドサイトならびにコミュニティサイトプランニングおよび構 築など。


【会社プロフィール紹介】
トライベック・ストラテジー
「徹底的なユーザー視点」を核にマーケティング戦略のIT化を支援するプロフェッショナル集団。
Web戦略の策定からWebシステム開発、サイト運営まで、eビジネスのトータルソリューションをクライアントの方々とともにゴールを共有して、ワンストップで提供することを目指す。
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