• 2007/09/06 掲載

セカンドライフの大いなる可能性とは

デジタルハリウッド大学院三淵啓自教授にインタビュー

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3D仮想世界のセカンドライフ。個人はもちろん、企業からも熱いまなざしが注がれている。第4回では、セカンドライフが秘める今後の可能性について、デジタルハリウッド大学院に、「セカンドライフ研究室」を設立し室長に就任した三淵啓自教授に、話を聞いた。


専門の常駐コミュニケーターなど新しい職業が生じる


デジタルハリウッド大学院三淵教授

デジタルハリウッド大学院
三淵啓自教授

――企業活動に関してセカンドライフの特徴はありますか。

三淵■
 小さな会社でも参入可能ですよね。コミュニティを作る際、企業の大小は関係ありませんから。大手がこのまま、コミュニティに目を向けないなら、逆転現象が起こってくるかもしれない。これから生まれるベンチャー企業にも色々な可能性があります。

――新しい職業も生まれますか。

三淵■
セカンドライフに一日中入って、情報交換を行ったりするトランスレーター、コミュニケーターなどの需要が生じるのではないかと思っています。企業の人は、忙しくて一日ずっとセカンドライフの中に入っていることは難しい。中を知らないと、戦略的に間違ったことをしてしまう可能性がありますから。

 実際には、仮想空間参入ビジネスをおこなう企業が出てきています。また、企業が中でものをつくるのが大変なので専門のディベロッパーなども出現するかもしれません。

  ――参入する企業として扱っている商品の向き不向きはありますか。例えば車などは、見ていて楽しいのですが、坦々麺のように食べ物だと…

三淵■
 もちろん、あると思います。ただし、仮想空間はリアルと近い面があります。テレビで食品のコマーシャルをやっても売れます。大事なのは、イメージなんです。例えば、坦々面のTシャツができたり、頭の上に乗せる坦々面が流行れば、リアル社会でも坦々面を食べる人が増えるかも(笑)。

 確かに、例えば、業務用のセラミックなどを作っている会社が参入しても、最終消費者に向けて優位性を発揮するのは難しいかもしれません。しかし、テレビでもアイドルを使ってイメージ戦略をする場合もあります。要するに、いかにして、環境を使ってイメージ戦略を行うかが大事です。そう考えるとあらゆる企業が参入できます。

自社製品とセカンドライフ両方に詳しい人材が必要


――すでに参入している企業で興味深い成功例などはありますか。

三淵■
 例えばインプレス社は、公式本をリリースした際に、中のコミュニティの人たちと協力して、モトクロスの大会を実施したんですよ。お金をかけずボランティアを集めて開催されました。担当者にコミュニケーターのような人がいて、かなりの時間、中にいて仕事をしたんですね。

 企業にお金をかけてほしいのは、中で時間をかける人とのコミュニケーションですね。今、中の物にお金をかけている企業が多いのが残念。さっきのコミュニケーターの話ともつながってくるのですが、作って中を見てない企業が多いんですよ。自社のブランドと、セカンドライフ内の両方を分かった人が重要ですね。Webの黎明期も同じでした。社長の写真をバンと出して、満足して誰も見に来ていないとか、多々ありました…。

 いい物を作れば効果が出るという従来の法則にとらわれると、人々は一回、訪れて終わり。人の滞在時間を長くするには、やはりコミュニティです。

今のところ、SIMに入れるのは50人が限度


――セカンドライフに、欠点はありますか。

三淵■
はい。広告媒体としてセカンドライフを使おうと思っている企業が多いのですが、欠点があります。セカンドライフはSIM(シム)と呼ばれる島で形成されています。現状のSIMは入れる人数が50人限度です。そのため、今までのマス広告のように、多様な人に向けて情報を配信することができません。これ以上、人が集まるとサーバーがダウンし、表示できなくなったりします。リンデンラボ社が、サーバのソフトウェアをオープンソース化すれば、将来的には数千人収容可能な場所も可能だとは思いますが。

  ――SIMとは…。

三淵■
 それについて今、(*1)セカンドライフ研究室で実験を行っています。セカンドライフ市民ネットワークを作っています。よく勘違いされるのですが、囲い込みではありません。それぞれのグループなりに運営しながら、市民のネットワークでイベントや放送局などをやっています。

SIMのオーナーも土地を買ったはいいが、一人ではなにをやっていいかわからない。それぞれのコミュニティを持った島が有機的につながっていくネットワークができれば、色々な可能性があると思っています。

 5月にはNPO法人とイベントを行いました。セカンドライフ内とリアル社会に会場を設置して、それをつなぎました。リアルでは150人、セカンドライフでは200人強の人が集まって、同じ質問に回答しました。セカンドライフの中ではきっちりした数字もとりやすいのですがあえて、赤白の旗を持ってもらって、いろんな質問をしました。例えば、会場の人に「いろんな企業が参入することをどう思うか?」と尋ねたところ、ほとんどの人が肯定的でしたが、セカンドライフ内の人に聞いたら半分の人が懐疑的でした。200人ということは、4つのSIMを連動させてイベントを行ったということです。SIMのオーナーに協力していただき、SIMの状況を同時中継しました。

 7月には、一般的な配信のテストとして、10個以上のSIMオーナーに協力いただいて、セカンドライフコレクションというファッションイベントを開催、500人近くが参加しました。もともとは住民が実施しようとしていたローカルなイベントだったんですけど。

 住民の協力を得ると、お金をかけなくても大きなことができる。逆に言えば、それを成長させていきたい。企業にも協力していただきたいと思っております。ゆくゆくは、ノウハウを公開していきますので、市民発の放送局なども生まれると思います。

(*1)セカンドライフ研究室(Second LIFE Laboratory)
2006年10月、デジタルハリウッド大学院の「メディアサイエンス研究所(MSL)」内に『セカンドライフ研究室』(以下SLL)を発足。研究室室長は三淵啓自教授。SLLの主なミッションは、セカンドライフの日本での普及における問題点を明確化、その問題点の対策に向けた研究開発や、クリエイター・ディベロッパーの育成と支援、企業との共同研究などが挙げられる。


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