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  • 2025/04/09 掲載

大成功する「アジャイル開発体制」は何が違う?「引継ぎゼロ日」も可能な組織化の勘所

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前回の記事では、アジャイル開発の誤解と失敗例を通じて、「価値」と「バランス」の重要性を説いた。だがアジャイル開発を成功に導くためには、持続可能な開発を実現する体制づくりも重要だ。そこで本稿では、チーム内での役割分担や求められる人物像など、アジャイル開発に必要な組織体制について、ビープラウド 代表取締役社長の佐藤 治夫氏に解説してもらった。
聞き手・構成:編集部 井内 亨   執筆:行政・ITライター 小池 晃臣

行政・ITライター 小池 晃臣

1993年早稲田大学第一文学部卒業後、ぎょうせい入社。地方行政をテーマとした月刊誌の編集者として、IT政策や産業振興、防災、技術開発、まちおこし、医療/福祉などのテーマを中心に携わる。2001年に日本能率協会マネジメントセンター入社。国際経済や生産技術、人材育成、電子政府・自治体などをテーマとした書籍やムックを企画・編集。2004年、IDG Japan入社。月刊「CIO Magazine」の編集者として、企業の経営とITとの連携を主眼に活動。リスクマネジメント、コンプライアンス、セキュリティ、クラウドコンピューティング等をテーマに、紙媒体とWeb、イベントを複合した企画を数多く展開。2007年より同誌副編集長。2010年8月、タマク設立、代表取締役に就任。エンタープライズIT、地方行政、企業経営、流通業、医療などを中心フィールドに、出版媒体やインターネット媒体等での執筆/編集/企画を行っている。

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アジャイル開発を成功させる体制をどうつくれば良いのか?(後ほど詳しく解説します)

なぜ、それほど「体制づくり」が重要なのか?

 アジャイル開発が従来のソフトウェア開発手法と大きく異なる点の1つが、「チームのコラボレーションと自己組織化」が特に重要になることである。この特徴は、単に役割を割り当てるだけではなく、チーム全体が協力して意思決定を行い、自律的に動く仕組みをつくることに重点を置いている。

 たとえば、スクラム開発(アジャイル開発の1つの手法)における「開発チーム」「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」といった役割(図1)は、それぞれが独立した責任を持ちながら、価値の最大化を目指して密接に連携することにある。この構造が迅速な意思決定を可能にし、問題解決のスピードを高めるだけでなく、変化にも柔軟に対応できる力を生むのだ。

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図1:スクラム開発における役割と関係性
マイナビを基に編集部作成)

「アジャイル開発では、自己組織化されたチームが自律性と責任感を持ち、またそれぞれのメンバーが専門性を生かしつつ、状況に応じて役割を補完し合うことが不可欠です。それが、プロジェクト全体の効率性と成功率を向上させる大きな原動力となります」(佐藤氏)

 しかし、このような体制を実現するためには、チームメンバーがスムーズに連携し、自主的に役割を果たせるような基盤を整えることが求められる。だからこそ、どのようにしてチームの協力体制を構築し、自己組織化を促進するのか──という体制づくりがアジャイル開発の成功の鍵を握るのだ。

アジャイル開発で特に重要な「2つの役割」

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ビープラウド 代表取締役社長
佐藤 治夫氏
エンジニアとして活動を始めて以来、モデリングを中心としたソフトウェアエンジニアリングを実践している。
Xアカウント:https://x.com/haru860
2024年5月から[トレラボ]にて、システム開発に関する自身のノウハウや考え方を記事として発信している。
 アジャイル開発の組織において特に重要な役割を果たすのが、ビジネスサイドを代表する「プロダクトオーナー」と、開発チームをけん引する「リーダー」だ。

「プロダクトオーナーは、ビジネスのニーズを深く理解し、開発チームと協力して価値を最大化するための専任者であることが理想です。特にスクラム開発において、プロダクトオーナーは単なる調整役にとどまらず、プロダクトのビジョンを明確に示し、優先順位を適切に管理する責任を担います。専任でこの役割にアサインすることがベストで、それができればチーム全体が方向性を誤ることなく進むことが可能になります」(佐藤氏)

 一方、開発側のリーダーには技術的な方向性を示すだけでなく、持続可能な開発体制を築く視点が求められる。佐藤氏は次のように指摘する。

「開発サイドのリーダーは、長期的な視点の下、将来の保守性や品質を見据えて、どのようなソフトウェアをつくるべきか、そのためにはどういった開発プロセスが最適かを考えるべきです。経験を積んだ人材であれば、その重要性を理解しているため、設計や開発段階で必要な要素を欠かさないよう配慮できるはずです」

 さらに佐藤氏は、「理想は引継ぎゼロ日です」と続ける。これは、シンプルな設計や一貫性と見通しのある開発、そして日頃の情報共有を通じて、人の入れ替わりがあってもスムーズにプロジェクトを進行できる体制を目指すというものだ。

「そのためには、全体を俯瞰できるドキュメントが欠かせません。それがなければ、プロジェクトの全容を把握し、的確な意思決定を行うのは難しいでしょう」

 このようにアジャイル開発では、単にコーディングを得意とする人材を集めるだけでは十分とは言えない。ビジネスと技術の橋渡しを担うプロダクトオーナー、長期的視野を持つ開発リーダーの適切な配置が、チームのパフォーマンスを最大化する鍵となるのである。

 では求められる人物像の観点ではどうだろうか。

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次のページ以降では、求められる人物像をひも解きつつ、アジャイル開発の体制づくりの秘訣に迫る
【次ページ】アジャイル・ウォーターフォール、人物像の「違いと共通点」
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