• 2025/09/30 掲載

生成AI活用の「足を引っ張る」想定外コスト増、ガートナー解説「10の対処法」とは(4/5)

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「推論コストを下げる」ための4つのベストプラクティス

 ここから紹介するベストプラクティスは、「推論コストを下げる」ために効果的だと桂島氏は話す。

■(5)ガイド付きのプロンプト設計を採用する
 プロンプトは「誰でも書ける」と思われがちだが、実際には設計によって生成AIの性能やコストに大きく影響を与える要素である。たとえば、適切なコンテキストの挿入、出力フォーマットの明示、サンプルの提示、「N個出力せよ」といった指示など、工夫次第でトークン数を抑えつつ高い品質の出力を得ることが可能になる。

 桂島氏は、近年では「ReAct」や「Chain of Thought(思考の連鎖)」といった高度なプロンプト技法も登場しており、効果的な活用には“職人的”なノウハウが求められると説明する。

「設計が甘ければ、本来必要な出力が得られず、大規模モデルを使わざるを得ないことにもなりかねません。逆に、緻密に設計されたプロンプトであれば、小規模モデルでも必要十分な成果を得られる可能性があります。すなわち、推論コストの削減につながるということです」(桂島氏)

 こうしたプロンプト設計の高度化と効率化には、各クラウドベンダーが提供する支援ツールの活用が効果的だという。たとえば、マイクロソフトの「Prompt Flow」やアマゾンのツールでは、設計のベストプラクティス支援、評価、バージョン管理、チーム内共有が可能となるとのことだ。

「これらのツールをうまく生かしながら、職人的ノウハウを組織全体で共有・活用していく仕組みを作ることが、非常に重要になるでしょう」(桂島氏)

■(6)LLMの応答をキャッシングすることを検討する
 生成AIのコスト最適化において有効なのが「LLMの応答キャッシング」である。これはWebサイトで用いられるキャッシュと同様の考え方で、同じプロンプトに対して毎回APIリクエストを行うのではなく、過去の応答を保存・再利用することでコスト削減を図る手法だ。

 桂島氏によると、近年は「コンテキストキャッシング」と呼ばれる高度なキャッシュ技術も登場しており、意味が類似していれば同じ応答を返す仕組みも可能とのことだ。実際には、キャッシュのヒット率やレイテンシといったメトリクスをダッシュボードで確認しながら、運用を最適化していく。

 また、「LangChain」のようなフレームワークやCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)的な構成でもこの考え方は取り入れられており、APIリクエストの削減手法として現実的かつ効果的な選択肢であると桂島氏は話す。

■(7)モデルの選択/ルーティングを自動化する
 モデルルーティングとは、生成AIの利用時に「性能重視」「コスト重視」などの要件に応じて、システム側が最適なモデルを自動選択する仕組みである。

「すでにグーグルやアマゾンなどが導入を開始しており、たとえばアマゾンでは、リクエスト内容に応じて『高精度モデル』と『安価なモデル」を自動的に使い分けることが可能となっています」(桂島氏)

 この仕組みは、コストと性能のトレードオフを動的に最適化できるという点で非常に有効であり、今後主流になる可能性が高いという。

「現在は発展途上の技術ではあるものの、AI活用が加速する中で、モデルルーティングのような自動化機能を取り入れることは、将来的な戦略として検討すべき点です」(桂島氏)

「モニタリング」が重要な納得理由

■(8)利用状況をモニタリングし、ガバナンスを強化する
 生成AIのコスト最適化には「モニタリング」や「オブザーバビリティ(可観測性)」の強化が不可欠である。全体の使用量やユーザーごとのコストを監視し、閾値を超えた際のアラートや処理停止など、基本的な管理機能の導入は必須と言える。

「さらに一歩進んで、どこにコストがかかっているのかを分解・分析できる体制の構築も重要です。ユーザーがどのモデルをどのアプリで使用しているかを可視化することで、異常なコスト上昇の早期発見が可能となり、改善対象やフィードバック先が明確になります」(桂島氏)

 こうしたLLMのオブザーバビリティは、コストだけでなく、性能・精度・セキュリティなど全方位的な最適化に不可欠である。桂島氏は、最初にベンダー・ネイティブのモニタリング機能を活用して利用状況を把握し、ガバナンスを強化することを推奨した上で、ユーザー/ロール・ベースの利用制限など、より高度なコントロールを探求する道筋を示す。 【次ページ】「効果的な変更管理」はどう実現する?
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