- 2025/10/18 掲載
「データだけ先に盗んでおく」──恐ろしすぎる量子コンピューター時代の新攻撃
1971年東京生まれ。千葉大学法政経学部卒業。学生時代からビジネスに興味を持ち、ITベンチャーの創業期に参画して会社規模を短期間で大きくする。その後さまざまな職業を経験し、2014年からフリーライターとして独立。ビジネス・金融・ITを中心に、書籍・雑誌・Webを問わず記事を多数執筆。
【質問】量子コンピューターの出現でセキュリティはどう変わる?
【回答】 根本から変わります。量子コンピューターの登場で今までの暗号技術が無力化されるでしょう。一方で、新たな防御技術が発展してより強力なセキュリティが実現されます。ところが、量子コンピューターによって強化されたセキュリティが構築されると同時に、サイバー攻撃者も強くなるのです。「解読に何千年もかかるから安全」が通用しなくなる
サイバーセキュリティの世界は、これまでずっと「新しい攻撃が出てきたら、それに合わせて守りも進化する」という歴史をたどってきました。たとえば、ウイルスやハッキングの手口が進化するたびに、私たちもウイルス対策ソフトや強いパスワードなどで対応してきました。今のネット社会の安全は、RSA(注1)やECC(楕円曲線暗号)(注2)といった「公開鍵暗号」と呼ばれる技術に大きく支えられています。これらの暗号は、普通のコンピューターでは解読に何千年もかかるから安全だと言われてきました。
ところが、量子コンピューターが登場すると話は変わります。量子コンピューターは、「ショアのアルゴリズム」という特別な計算方法を使って、今まで解読が不可能だった暗号をあっという間に解いてしまう力を持っています。つまり、今までの「安全の常識」が通用しなくなるかもしれないのです。
量子コンピューターを使って大きな数を素因数分解するための方法。1994年にピーター・ショアによって開発されました。従来のコンピューターでは、巨大な数を素因数分解するにはとても長い時間がかかりますが、ショアのアルゴリズムは短時間で可能になります。
さらに、「今は解けなくても、データだけ取っておいて、量子コンピューターが実用化されたら解読する」(Harvest Now, Decrypt Later)という新しい攻撃も心配されています。
これからは、量子コンピューターに対応する新しい暗号技術が必要になり、サイバーセキュリティの世界もまた大きく進化していくことが求められています。 【次ページ】量子時代のサイバー攻撃に対抗する2つのアプローチ
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