• 2025/12/20 掲載

ディズニーはOpenAIに何を「差し出した」のか?日本企業が無関係でいられないワケ

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米ウォルト・ディズニーは12月11日、生成AIを開発する米OpenAIへの巨額投資と、キャラクターを含む知的財産(IP)の提供を発表した。生成AIを巡っては著作権侵害を理由とする訴訟が相次ぐなか、世界最大級のIP企業は対立ではなく提携を選んだ。この判断は誰の利益を反映したものなのか。日本のコンテンツ企業にとっても、同じ選択を迫られる日は遠くなさそうだ。
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ディズニーの決断はコンテンツ業界にどんな影響を及ぼしたのか
(Photo:Longfin Media/Shutterstock.com)

ディズニーの決断は、なぜ日本にも直撃するのか

 ディズニーがOpenAIとの提携を公表したことで、生成AIを巡る構図は新たな段階に入った。これまでの主な対立軸は、出版社や作家、メディア企業がAI企業を相手取り、無断学習や類似生成を問題視するものだった。IPを中核資産とするディズニーも、訴訟を選ぶ側に立つ可能性は十分にあった。

 それでも同社は、法廷闘争ではなく資本参加と提携という選択肢を取った。背景にあるのは、生成AIの拡大がもはや止められないという現実認識だ。AIは既に世界中の画像、映像、テキストを学習し続けており、個別企業が単独で利用を封じ込めることは難しい。

 この判断は米国企業特有の話にとどまらない。アニメ、漫画、ゲームといった分野で、日本は世界有数のIP供給国だ。生成AIが普及すれば、日本発のキャラクターや作風も、意図しない形でAIに再生産される可能性が高まる。ディズニーの選択は、その未来を先取りするものでもある。

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ジブリ風画像の生成は大きな話題を集めた。写真は日本北海道小樽市小樽オルゴール館内スタジオジブリ店(どんぐり協和国)
(Photo:HeroToZero/Shutterstock.com)

「AIに奪われる」恐怖から「AIを使わせる」現実へ

 生成AIに対する最大の懸念は、創作物が無断で学習され、価値が希薄化する点にある。IP企業にとっては、長年築いてきたブランドが安価に模倣されることへの恐怖が根強い。これまでの議論は、「AIに奪われる」という前提に立つものが多かった。

 一方で、ディズニーが選んだのは、AIに使われることを前提に、その条件を設計する道だった。OpenAIと組むことで、どのキャラクターを、どの用途で、どの範囲まで使えるのかを定義する。無秩序な利用を放置するより、影響力の大きいAI企業と正面から向き合う方が、結果として主導権を握れると判断したのだろう。

 生成AI時代のIP価値は、「使われないこと」ではなく「正規に使われ続けること」に移りつつある。映画やテーマパークに加え、対話型AIや仮想空間でキャラクターが活動する場面が増えれば、ユーザーとの接点は飛躍的に拡大する。ディズニーは、AIを新たな流通チャネルとして位置づけたことになる。

 こうした発想は、現場のクリエイターにとっては受け入れがたい側面もある。自ら生み出したキャラクターが、AIを通じて大量に消費されることに、強い抵抗感を示す声は少なくない。ディズニーの判断は、そうした感情よりも、市場の変化を優先したものとも言える。 【次ページ】日本企業の「足かせ」となるもの
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