- 2026/03/03 掲載
生成AIはどこまでOK?“法的リスク”を完全解説、著作権と依拠性の新常識
東京都出身。Googleのテクノロジーや生成AIなどを専門にその活用法などについて執筆している。最新の動向を追いかけ、日常生活やビジネスそれぞれでバランスの取れた視点から情報を提供。AIの可能性を広げるとともに、より安全で有益な活用方法を模索している。
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「あなたがどのようにAIを利用したのか」が持つ重要な意味
AIの利用に関しては、従来から存在する法律が引き続き強く関与しています。中でも注目されるのが、著作権における取り扱いです。日本の著作権法では、「類似性」と「依拠性」が著作権侵害を判断する2つの柱とされています。生成AIをめぐる議論でもこの考え方がそのまま適用され、AIの生成物が既存の著作物の権利を侵害しているかどうかは、この2つの柱に基づく判断で決まります。まず「類似性」では、AIの生成物が既存の著作物と表現上の本質的特徴において似ているかが検討されます。ここでいう「類似」とは、単なるアイデアやテーマの共通ではなく、具体的な言葉の使い方、構成、構図など、表現そのものの一致を指します。生成AIの出力が偶然既存の著作物に似通ったとしても、それだけで直ちに侵害と判断されるわけではありません。まずは外形的にどの程度似ているかが評価され、その結果が偶然の一致かどうかが慎重に見極められます。
次に「依拠性」、すなわち既存著作物をどの程度参照しているか、またはその影響を受けているかという点です。AI自体には意図や判断がないため、どの著作物をどのように参照したかを直接特定することは困難です。したがって、依拠性の判断はAIを操作したユーザーの行為によって左右されます。たとえば、ユーザーが特定の著作物を入力として与えたり、資料としてアップロードしたりしていた場合、その出力は既存著作物を参照して生成されたとみなされる可能性が生じます。
最近では単にAIに回答を出力させるだけでなく、資料を与えてその内容を参照させた上で生成させる利用形態が一般的になっています。これは、ユーザー自身が依拠関係を意図的に形成している構造といえます。たとえば、「この論文を参考にまとめてほしい」や「この小説の文体で続きの章を書いてほしい」という指示は、AIに対して特定の著作物への依拠を促す行為として解釈され得ます。このように、AI利用が高度化するほど、ユーザーがどのようにAIを利用したのかが法的責任の判断において重要な意味を持つようになっているのです。
著作権だけじゃない…どんなAI利用が法律上の問題となるのか
AIを利用する際に注意すべき法的問題は、著作権だけにとどまりません。具体的にどのような行為が法律上の問題となるか確認してみましょう。たとえば、既存の著作物をNotebookLMに参照させて内容を読み上げるオーディオファイルを作成・販売したり、Nano Bananaにアニメキャラクターの画像を参照させて新しい画像を生成し、グッズとして販売したりする行為は、生成物が原作品と類似していると判断される場合、著作権法上の翻案権・複製権の侵害に該当する可能性があります。また、キャラクターや名称が商標登録されている場合には商標権の侵害、さらに著名なキャラクターのイメージを無断で利用して商品化する場合には不正競争防止法による差止めや損害賠償の対象となる可能性もあります。このように、AIを利用した場合においても、著作権・商標権・不正競争防止法といった既存の法体系の上に成り立っていることを理解しておく必要があります。AIを使うこと自体が新たな法的リスクを生むわけではありませんが、その使い方次第で既存法に抵触する可能性が高まるという点を理解しておくことが重要です。また、逆にAIを利用した権利侵害の被害を受けた場合には、既存の法律を元にその被害を訴えて適切に対処していくことが必要です。
さらに、AIが自律的に出力したものに対しては著作権が認められないとされているため、出力に対しては必ず人間が何らかの形で手を加えて、その過程を後から説明できるようにしておくことが求められます。他人の著作権を侵害せず、自身の成果を守るためにも人間の関与を前提とした運用を想定しておくとよいでしょう。 【次ページ】理解すると見えてくる「ハルシネーション」の本質
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