• 2026/03/12 掲載

AI専任は置かない・利用強制もしない…カオナビ流「生成AI浸透術」が合理的すぎる(2/2)

連載:マスクド・アナライズの生成AI最前線

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「AI利用率100%」ではない超重要な狙い

 AI推進室の役割としては、AI活用の文化醸成も1つだ。

 しかし生成AIの導入において、従業員の意識はさまざまである。一般的には、積極的に利用する者もいれば、関心がなかったり、不安や嫌悪感を抱く人も少なくない。こうした生成AIにおける意思統一について、カオナビでは利用を強制しない点を強調する。

「まずはAIを使いたい人に使ってもらうことが重要です。私自身としては『すべての従業員が必ずAIを活用しなければならない』ではなく、『使いたい人がより使えるようにすべき』だと思っています。AI利用率100%のような数値目標の達成を目指すのではなく、AIによる生産性向上を図る人のサポートが重要です」

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 AI活用をサポートする具体的な取り組みは多岐にわたる。社内勉強会については四半期で3回行い、平均満足度を4.2以上獲得した実績があるほか、各部門でのAI活用事例を20件収集し、社内に共有。さらには、各プロダクト部門と四半期に1回、アイデア共有会を開催するなど積極的な利用を支えている。

「本人の意欲が何よりも大事なのです。まだ生成AIに対する関心が低い人もいますし、グラデーションのように施策を変えていきたいです」

 こうした取り組みが実を結び、生成AI活用のハードルが下がり、利用頻度も質も上がってきているという。

 たとえば社内での活用事例としてこんな事例がある。上司と部下が対面で話し合う定期的な1on1において、Google WorkSpaceで録音した内容を基に、打ち合わせの要約だけでなく、相手の表情や反応といったデータも蓄積している。いつでも過去の1on1の内容をすぐに見返せるようになるため、質の高い対話につなげることができたという。

まずは「積極活用」促す

 企業において生成AIを適切に利用するにはルールやガイドラインが必要になるが、この点はAI推進室が情報セキュリティ部門や法務部門と連携。新たなツールの導入などをきっかけにルールやガイドラインを見直しつつ、大きな問題を事前に防ぐ仕組みを構築している。

 しかし利用制限については極端なルールを設けていないという。

「現在はAIを積極的に使っていく段階です。そのため、従業員がAIで何ができるかを考える環境整備を優先していますし、そこで得られたものを製品開発や営業などに反映してほしいと思います。現状ではなるべく予算を確保しながらAIを使ってもらい、どうやって業務に生かしていくかのイメージを会社全体で作り上げることが重要だと考えます」

コミュニティで「顧客にもノウハウ提供」

 AI推進室の設立からおよそ半年が経過して、社内全体でAIを利用する中でどのような課題が見えてきたのだろうか。

「今は『AI推進室に相談すれば応えてくれる』という認識が社内で定着してきました。次の段階としては、カオナビというソリューションを通してAIを活用できるようにしたり、AIによる開発生産性の向上や業務効率化にいかに寄与していくか、というフェーズに移ってきています。すでにエンジニアを中心にある程度AIを使いこなせていますが、今後は営業やカスタマーサクセスなどのビジネス部門も当たり前のようにAIを活用していく文化を作り上げることが課題です」

 藤田氏もカオナビの利用者とも一緒に作り上げていきたい展望があると語る。

「現在は、営業やカスタマーサクセスの担当者が、より簡単にAIを利用できるような取り組みを強化しています。AIツールを単純に導入しても、そのツールを使うための作業が増えてしまっては本末転倒です。そのため、可能な限りAIがいつもの業務の中で手伝ってくれるような形にしたいと考えています。またClaude Codeなどのツールを使うことで、 エンジニアでなくてもツールを簡単に作れるようになりました。もちろん安全性の確保は必要ですが、社内で誰もが必要なツールを作って利用できる仕組みも構築していきたいです」

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取材を受ける藤田氏(右)と、プラットフォーム本部 業務改善部 データストラテジーグループ マネージャーの本江 雄人氏(本江氏に話を聞いたデータ基盤整備の取り組みについては前編で解説しています)

 生成AIの活用は社内だけでなく、サービスとしてのカオナビにも広げていきたいという。

「カオナビの利用者向けに、『カオナビキャンパス』というコミュニティを提供していますが、ここにカオナビと生成AIを活用した新たな発見や業務改善につながるノウハウを共有できるようになればと構想しています。そのために、AIを活用していきたいお客さまとAI推進室メンバーで一緒に課題を解決するような勉強会の開催などを予定しています」

 カオナビではAI推進室の担当者をあえて兼任として、利用率向上を追わないという独自の方針で取り組んでいる。これまで取材してきた企業や一般的に語られる方法論とは異なる。また、データ基盤の整備という後回しにされやすい作業には積極的に取り組んでいることも特筆すべきだ。

 どんな企業でも生成AIやデータ活用の導入後に求められるのは、利益や業務改善などの具体的な成果である。成果という目的はどの会社であっても同じだが、目的を達成するための手段や過程は各社で異なるのが自然だろう。組織と顧客が必要な目標を実現するために、AI推進室はカオナビにとって最も適した方法で計画を実行していったことがわかる取材となった。

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