• 2026/03/12 掲載

AI専任は置かない・利用強制もしない…カオナビ流「生成AI浸透術」が合理的すぎる

連載:マスクド・アナライズの生成AI最前線

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生成AIの活用が加速度的に進んでいる一方、「利用が広がらない」「成果が出ない」と悩む企業は多い。こうした中、AI担当やAI専門組織を設置して、積極的に展開しようとする企業が増えている。今回紹介するカオナビは、前編の記事で紹介したデータ基盤の整備と並行して、2025年6月に「AI推進室」を立ち上げた。実はそのメンバーは皆、元々の部署と「兼任」しているのだ。「AI担当は専任で配置すべき」との声が多い中、なぜあえて「兼任」を選んだのか。裏には不利なようで合理的な意図が隠されていた。今回は、AI推進室 室長の藤田 泰生氏に、AI活用の成功の秘訣について話を聞いた。
取材・執筆:マスクド・アナライズ

マスクド・アナライズ

AIスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスについてSNSによる情報発信で注目を集める。現在は独立して、イベント登壇、研修・セミナー開催、書籍執筆、企業向け生成AI・ChatGPTの導入活用支援などを手掛けている。支援実績は北海道庁、日立製作所、JR西日本、シーメンスヘルスケアなど。著書に「会社で使えるChatGPT」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」がある。

書籍「会社で使えるChatGPT」発売中

  撮影:大参 久人
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カオナビ AI推進室 室長 藤田 泰生氏

生成AI活用“爆速化”へ「AI推進室」立ち上げ

 カオナビでは2025年6月に「AI推進室」を立ち上げ、全社的な生成AIの利用推進を開始した。背景としては、生成AIツール活用のスピード感を早めるために、全社横断的な部署が必要だった点にある。

 以前から、社内からは「生成AIやAI系ツールを利用したい」との要望がよく挙がっていたという。だがこうした要望に応えるには、安全性などについて法務部門を含めた確認が必要となるため、手間も時間もかかる。AI推進室が調整役に入ることで、AI活用における意思決定を素早くすることを狙ったのだ。立ち上げの経緯について、藤田氏はこのように説明する。

「当時、同じツールでも部門ごとに予算を確保していたなど、管理が複雑になっていたことが問題となっていました。その上、開発部門のエンジニアや営業・カスタマーサクセスなどのビジネス部門からは『生成AIを利用したツールを使えるようにしたい』という要望が上がっていました。そこで社内全体における横断的な組織が必要だと考えて、AI推進室を立ち上げました」

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 当初はエンジニアが利用するプログラミング系のAIツールの検証が多かったが、デザイン系ツールの検証など対応範囲は拡大。また社内におけるAIに関する相談や要望に対応するなどの活動も実施している。

なぜ「専任」ではない? 不利なようで合理的な「兼任」の理由

 立ち上げ当初は3名だったAI推進室だが、わずか3カ月で10名、現在は13名にまで拡大した。自発的にAI推進室に関わりたいと手を挙げる社員が増えているという。

 メンバーは、エンジニアやデザイナー、カスタマーサポートなど、社内の各部門から参加。特徴的なのは、各メンバーが担当業務と兼任している点にある。

 これまで取材した企業は生成AI専任の担当者を配置することが前提であり、兼任では難しいという意見があった。なぜカオナビでは、他社では不利とされている「兼任」を選択したのだろうか。藤田氏はこう語る。

「AI推進室立ち上げ時には、一緒にAIの活用・推進をやりたい人に声をかけました。ただ、AI推進室に異動してもらうと、今担当している業務を止めることになってしまい、チームや組織に影響が出てしまいます」

 だが理由はこれだけでない。

「AI推進室はAIの利用率や、AI活用による生産性向上などを主目的にした組織ではありません。自分の担当業務で抱えている重要な課題を解決するためにAIが必要であれば、AI推進室を兼任で入ってもらい、課題解決に向けたAI活用を模索してほしいという狙いがありました」

 そのため同社では専任にはせず、兼任を選択した。しかし、藤田氏は「もちろん兼任では業務の優先順位を上げにくいなどの欠点はあります。ですが今のところ当社では、順調に生成AIが社内で普及していますし、AIを活用したい人が集まって意見を集約して課題を見える化することにもつながっています」という。 【次ページ】「AI利用率100%」ではない超重要な狙い
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