• 2026/07/04 掲載

AIへの質問がうまい人は何が違うのか──「超深い話」をし続けるコツ(2/2)

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「AI導入したのに使えない」という企業にありがちな誤解

深津 貴之氏の考え方
 構造的な優位を作るための、AI時代ならではの武器があります。

 それが、AIによる「面制圧」という使い方です。

 多くの人は、AIに対して「たった1つの完璧な正解」を求めがちです。

 同じ問いを少しずつ言い換えながら、唯一の正答を引き当てようとする。

 しかし、これはAIの特性を十分に活かした使い方とはいえません。

 現場で「AIを導入したのに使えない」という不満が出やすいのも、多くの場合、人間側がAIに決定論的な正しさを求めすぎているからです。

 AIは、1回で100%正しい答えを返す装置というより、大量の候補や観点を高速で出せる推論装置として見るほうが実態に近い。

 全体像を捉えることや、選択肢を広く出すことには強い一方で、1発で唯一の正解を断定する仕事には向き不向きがあります。

 だからこそ、AIは「1発で当てる道具」としてではなく、「多数の仮説を同時に広げる道具」として使ったほうがいい。

 僕はこの使い方を「面制圧」と呼んでいます。

 たとえば、的を狙う射撃を想像してください。

 1発の精密射撃にすべてを賭けると、風や体調のわずかな差で外すことがあります。

 でも、的の周辺に1000発の弾をばらまけばどうでしょうか。

 1発ずつ見ればズレていても、着弾点の全体を見れば、どこに中心があるかが見えてきます。

 AI活用でも同じで、単発の回答を信じるのではなく、複数の問い、複数の視点、複数の出力を重ねることで、「正解の輪郭」や「構造的な傾向」が見えてきます。

 つまり、AIに「これが正解ですか」と一度だけ聞くのではなく、視点を変えながら何度も問いを立てるのです。

 異なるペルソナから考えさせる。異なる目的で見させる。異なる前提条件を置いて答えさせる。

 個々の回答にはブレがあっても、それらを重ね合わせれば、共通して浮かび上がるパターンがあります。

 そこにこそ、使える知見があります。

商品のPR戦略は、「複数の問い」から組み立てる

 たとえば、ある商品のPRを考えるとします。

 その時に、単に「この商品を売るためのPRを考えてください」と一度だけ聞くのでは弱い。

 むしろ、次のように角度を変えて問いを立てていきます。
「この商品を最初に手に取る人は、どんな課題を持っているか」
「この商品と比較されるとしたら、どんな選択肢か」
「この商品を人に勧めたくなった人は、SNSでどんな言葉を使うか」
 こうして複数の方向から回答を集めると、単発のアイデア出しでは見えなかった構造が見えてきます。

 誰に刺さるのか。何と比較されるのか。人はどの言葉で価値を認識するのか。

 そうした輪郭が、少しずつ立ち上がってきます。

 僕は、このように多くの問いを通じて、まだ誰も気づいていない構造を見つけにいくやり方を「面制圧」と呼んでいます。

 1発の精密射撃だけに頼るのではなく、圧倒的な試行量で面を押さえる。

 この発想の転換が、戦う前に勝負を決めるメタゲームを支える、AI時代らしい戦法になります。

 これは単なる「数撃ちゃ当たる」の話ではありません。

 本質的には、試行回数を増やすことで、不確実性をならし、確からしさを上げるという考え方です。

試行回数を増やし、不確実性を下げることがAI活用の強み

 たとえば、コインを1回投げて表か裏かを当てる勝負に全財産を賭けるのは、ただのギャンブルです。一発勝負では、運の振れ幅が大きすぎます。

 でも、100回、1000回と投げた結果の分布を見るならどうか。

 回数を重ねるほど、全体の傾向は見えやすくなります。

 重要なのは、1回ごとの当たり外れではなく、繰り返した時にどんなパターンが現れるかです。

 身近な例でいえば、知人のパーティーにワインを持っていく場面も似ています。

 「赤がいいか、白がいいか」と1人で悩むのは、不確実性を抱えた一発勝負です。

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 でも、コストが許すなら、赤、白、ロゼ、スパークリング、さらにノンアルコールまで持っていけば、外す確率はかなり下げられます。

 正解を1点で当てるのではなく、選択肢を面で押さえているわけです。

 一撃の正解だけに賭ける時代は、もう終わりつつあります。

 コストの低いAIという道具を使って、多数の可能性を素早く広げ、重ね、そこから構造を読む。

 不確実な領域を、少しずつ管理可能な領域に変えていく。

 この「面で考える」使い方こそが、AI時代のメタスキルの1つだと僕は思います。

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