- 2026/07/19 07:10 掲載
“最強の解答者”AIには勝てない…それでも評価される人間の条件とは
早稲田大学理工学部卒業後、プロセス改善コンサルティングファームを経て2009年に創業。100を超えるスマホアプリ開発などを行う中でデザイン産業の課題に直面し、いち早くAI技術の研究開発をスタート。2019年にAIを活用したクリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」をリリース。同サービスはのべ1000社・3000名以上に導入され、企業の業務フローと、個人の思考や働き方に根本的な変革をもたらしている。「ICCサミット KYOTO 2022 カタパルト X」優勝など起業・スタートアップ関連の賞を多数受賞。テレビやウェブメディアでも広く取り上げられ、1万人超への講演実績も持つ。現在は累計約24億円の資金調達を実施し、AI技術の社会実装を牽引している。
“優等生型ビジネスパーソン”が評価された時代の終わり
私は1981年生まれで、子どもの頃はいわゆる「受験戦争」が過熱していた時代でした。私自身もご多分に漏れずその渦中に身を置き、中学受験に挑戦していました。小学校が終わるとすぐに塾に行き、帰ってきて宿題をやり、さらに学校に行く前にも勉強をし、多い日は1日に10時間はゆうに超える時間を勉強に費やしていました。幸いなことに私はその「勉強」そのものが楽しかった。楽しくて仕方なかった。仲間とともに切磋琢磨し、時に仲間に、時にライバルに。そんな人間関係の環境も良かったのですが、その競争環境の中で何よりも褒められるのが、先生が出した問題に対して、早く、正確に「解答」ができること。記憶力と計算力、読解力や理解力などを日々トレーニングしながら解答を追いかけていました。
「はい!」と、誰よりも早く手を挙げて答える爽快感。白いテスト用紙が迷いなくどんどん埋まっていくスピード感。それは、当時の私にとって唯一無二の正義であり、自分の価値を証明するたった1つの手段でした。
この考えを私は「解答思考」と呼んでいます。
与えられた枠組み(問い)の中で、用意された「唯一の正解」にいかに早く、正確にたどり着くか。振り返れば、教育課程のすべてがこの能力を磨くためのものでした。そして社会に出てからも私はこの「解答思考」を武器に戦ってきました。上司が求める答えを出し、市場のセオリー通りの解決策を提案する。そこには、確かに高い市場価値が存在していました。
しかし、AI時代の到来によって、この「解答思考」の価値は根底から覆されようとしています。
「正解を出す能力」だけでは、もうAIに勝てない
なぜなら、生成AIこそが人類史上最高の「優等生」であり、最強の「解答者」だからです。私たちが10時間かけて頭を絞り、必死に導き出していた答えをAIはわずか数秒で、しかも文句1つ言わずに提示してくれます。過去の膨大な知識やデータに基づいた「正解」を導き出す能力において、生身の人間がAIに勝てる余地は、もはやほとんど残されていません。AI時代に価値ある人になるには、AIができない「問い」を立てることに注力するのです。
AIは「答え」を出す天才ですが、自ら「問い」を生み出すことはできません。
「そもそも、なぜこの問題を解く必要があるのか?」こうした本質的な「問い(課題設定)」があって初めて、AIはその圧倒的な計算能力を発動させ、輝きを放ちます。優れた「答え」は100%あなたが投げかける「問い」の質に依存します。
「私たちが本当に目指すべき姿は、ここではないのではないか?」
「この常識を疑ってみたら、どんな景色が見えるだろうか?」
これが、私が考える「問い思考」です。
「解答思考」の人が「HOW(どう解くか)」を突き詰め、AIという巨大な壁に立ち向かって疲弊していくのに対し、「問い思考」の人は「WHAT(何を解くべきか)」や「WHY(なぜやるのか)」を定義し、AIという最強の解答エンジンを自在に使いこなします。
「良い解答」を持っている人が賢いとされた時代は、もう終わりました。
「解答」の価値がコモディティ化する中で、自分だけの「良質な問い」を武器として持ち続けること。それこそが、AI時代を軽やかに生き抜くプロの条件となるでしょう。 【次ページ】AI時代のビジネスシーンで求められる「問い思考」を実践
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