- 2026/07/15 掲載
「AIの回答、広告に寄ってない…?」ついに始まったChatGPT広告、ユーザーに残る3懸念
大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書は『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社:共著)など。
ChatGPTの“広告解禁”、ChatGPTが“検索の次”を取りにいく
ChatGPTを運営するオープンAIは、6月22日にChatGPTへの広告配信に関するプライバシーポリシーを改定し、日本国内でのChatGPT内における広告配信を本格的に開始した。オープンAIは2026年初頭から米国でChatGPTへの広告表示の実証実験を開始し、その後、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどへ対象地域を拡大してきた。さらに6月には英国でサービスを開始し、日本、韓国、ブラジル、メキシコにも順次展開されるなど、広告事業は本格的なグローバル展開の段階に入っている。なお、広告表示はFreeプランとGoプランを対象としており、PlusやPro、Enterpriseなど有料プランでは表示されない。
この動きは、生成AIが検索エンジンやSNSと同様の「広告メディア」として進化を遂げる転換点に来たことを象徴していると言えるだろう。
サービス提供側にとっては、安定収益を確保することで、継続的な開発費用を工面する意義がある。一方で、消費者側にとってのメリットは十分に担保されるのかという懸念も持たれる。生成AIにおける望ましい広告表示のあり方はどのようなものだろうか。
電通・博報堂・CAが同じ船に…競合なのに手を組むワケ
本件に関して、広告販売に電通、博報堂DYグループ、サイバーエージェントという競合企業がそろって参画している点にまずは着目したい。現在でこそ、競合企業同士の協業は珍しくはないのだが、以前であればこの3社が連携するというのは考えづらいことだった。電通グループと博報堂グループは国内1位、2位の広告会社で、既存の広告市場でシェア争いをしてきた。
昨今のデジタル広告市場においては、媒体の成長が市場全体の拡大につながることから、競合企業同士が協業する、いわゆる「呉越同舟」を行うメリットが生まれているのである。
ただし、ChatGPTの広告導入を、もろ手を挙げて歓迎すべきことだろうか。
現在のインターネット広告は、多くの課題を抱えている。誇大広告や投資詐欺広告、偽通販Webサイトへの誘導、著名人になりすました広告など、違法な広告がまん延している。
違法でなくとも、性的な表現、過剰に消費をあおるような表現、利用者の利便性を損なうような過剰な広告表示が問題となっている。広告主の広告費を不当に詐取する「アドフラウド」(広告詐欺)の問題も生じている。
電通の「日本の広告費」によると、日本のインターネット広告は、全広告費の過半数を占めるに至っている。しかしながら、消費者のインターネット広告への信頼性はむしろ低下しているように見える。
生成AIという新しいプラットフォームには、インターネット広告の「負の歴史」を繰り返さないことが強く求められる。導入段階から大手広告会社が参入する意義は、AI広告の健全な発展を支援することにある。
また、現状の広告表示の仕様は、ChatGPTとの「会話の文脈」に合わせて商品やサービスの広告が回答の下部に別枠(区切り線を挟んだ領域)として表示される形式となっている。
ただし、それでも多くの懸念事項が残されている。
生成AI広告、神機能か炎上案件か? 「懸念点3つ」を整理
ChatGPTに限らず、生成AIの広告表示において、主に以下の3点を担保することが重要になってくる。健全性:適正な広告が表示されることが担保されること
中立性:生成AIで出力される回答が広告によってゆがめられないこと
1点目についてだが、生成AIは、利用者との自然な対話を価値としている。昨今のインターネット記事にみられるような、画面を覆うバナー広告や、閲覧を遮るポップアップ広告が表示されれば、利便性は大きく損なわれる。インターネット広告で問題視されている「広告がコンテンツの邪魔をする」という状況は避けなければならない。
利用者が必要とする情報に自然な形で関連する広告や、回答を補足するような情報提供型の広告であれば、利用者にとっても価値を持つ可能性がある。広告が単なる「ノイズ」ではなく、有益な情報となる設計が重要になる。
また、それを実現するためには、広告の内容が、ユーザーの嗜好やニーズに沿ったものであることも重要だ。利用者個人のアクセスログを取得・分析して、ニーズや嗜好を判断し、それにしたがって広告を出し分けられるところが、インターネット広告のメリットだ。
しかしながら、昨今のインターネット広告は、投資、出会い系、脱毛、美容系など、利用者のニーズに沿っているとは思えないような広告が多数表示されるようになっている。
AI広告においては、広告主と利用者の「マッチング」を行うことが重要であるし、それがインターネット広告の理想形でもあるはずだ。
2点目の健全性についてだが、近年のインターネット広告は、不適切な広告が大きな問題となってきた。違法な投資案件、公序良俗に反する広告、偽ブランド商品、医療・健康に関する誤情報など、利用者の不利益になる広告も少なくない。
生成AIは「信頼できる回答」を期待して利用されるサービスだ。画面に表示される広告も、同レベルの信頼性が求められる。広告主の審査基準を厳格にし、継続的なモニタリングを行うことが、サービス全体への信頼性の維持につながる。 【次ページ】広告付きAIは本当に公平? “中立なAI”の終わりが来るのか?
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