- 2026/08/08 07:10 掲載
【研究で判明】有名企業の実例も…「パワハラが起きやすい職場」の共通点
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学)・博士(保健学)・公衆衛生学修士。和歌山県立医科大学講師、ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を経て、現在神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授。クオレ・シー・キューブ 人と場研究所所長。これまでに「ハラスメント実態調査」「中小企業におけるハラスメント相談体制実証事業」「カスタマーハラスメント・就活ハラスメント等防止対策強化事業」等、厚生労働省検討委員会の各委員も務める。著作に『パワハラ上司を科学する』(ちくま新書、2023年)がある。
パワハラが起きやすい「余裕のない職場」の共通点
「余裕のなさ」が人を攻撃に向かわせることは、厚生労働省のハラスメント実態調査でも示されています(注1)。図1は、職場風土とパワハラの被害経験割合を示したものです。これらの職場風土に「当てはまる」と回答した人のうち、上の棒が過去3年間にパワハラを受けた人の割合、下の棒が受けなかった人の割合です。パワハラを受けた者の割合が受けなかった者の割合より大きい項目ほど、その職場風土がパワハラ発生に寄与している可能性が高いと言えます。被害者割合と非被害者割合に2倍以上の差が見られた項目の中に、「余裕のなさ」を示す項目が多く含まれています。具体的には、
- 業績が低下している/低調である
- 失敗が許されない/失敗への許容度が低い
- 遵守しなければならない規則が多い/高い規律が求められる
- 従業員間の競争が激しい/個人業績と評価の連動が徹底している
こうした風土を持つ職場ほど、パワハラが起こりやすいのです。
合併・人員削減が生む「職を失う不安」とパワハラ
組織で「余裕のなさ」が生まれる背景の1つに、吸収合併や人員削減などの大きな組織変化があります。ベルギーの労働者1031名を1年間追跡した研究では、合併や人員削減が行われた職場で、いじめ・パワハラの発生が有意に増加していたことがわかりました(注3)。オーストラリアでも、企業の人員削減はいじめ・パワハラや職場の暴力を招くと報告されています(注4)。職場環境が大きく変わるストレスフルな状況では、労働者から余裕が失われ、些細な衝突からハラスメントが引き起こされやすくなるのです。
組織変化がパワハラを誘発する理由としては、「役割葛藤」と「職の不安定さ」があることがわかっています(注5)。吸収合併が起こると、企業文化や仕事の進め方に大きな変化が生まれます。変化そのものがストレスを生むだけでなく、「どちらの企業のやり方を踏襲するか」をめぐる葛藤や対立も起きやすくなります。さらに、吸収合併や人員削減で仕事を失うかもしれないという不安が高まると、人員削減の対象になることを避けるために、競争相手となる同僚を陥れるような行動が起きることがわかっています(注6)。
つまり、組織の変化は従業員に役割葛藤や職の不安定さをもたらし、それが他者への攻撃を引き起こしているのです。 【次ページ】残業が長い人ほどパワハラを受けやすい…調査で見えた関係
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