- 2026/08/16 07:10 掲載
「叱ると人は育つ」は幻想か…研究で見えた危険な副作用と「注意指導」4つの基本
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学)・博士(保健学)・公衆衛生学修士。和歌山県立医科大学講師、ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を経て、現在神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授。クオレ・シー・キューブ 人と場研究所所長。これまでに「ハラスメント実態調査」「中小企業におけるハラスメント相談体制実証事業」「カスタマーハラスメント・就活ハラスメント等防止対策強化事業」等、厚生労働省検討委員会の各委員も務める。著作に『パワハラ上司を科学する』(ちくま新書、2023年)がある。
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「叱る」と「怒る」は本当に違うのか
「叱る」という行為は、「マイナスの価値判断の表明」と、「そのことの改善を求める行為」という側面からなるとされています(注1)。教育心理学分野のとある研究においては、「個人が不当と認識する行為を相手に指摘し、改善を求める行為」と定義されています(注2)。この定義であれば問題ない行為のように聞こえますが、実際には、「叱る」という行為の中には、ネガティブな表現が付随することも多いことがわかっています(注3)(表1)。
叱責で部下は育たない…研究でわかった意外な結果
では、「叱る」ことは、部下の成長を促すために必要なことだと思いますか?よく、「叱る」と「怒る」は違うと言われます。しかしこれは、あくまで「叱っている側の言い分」であって、叱られている側に話を聞くと、「叱る」と「怒る」の違いを判別できないことが多いのです。
基本的には、「叱る」も「怒る」も「ダメ出し」も、すべて「ネガティブフィードバック」にまとめることができます。多少、感情の大きさに違いがあるだけです。
そして残念ながら、日本人を対象にした筆者らの研究で、ネガティブフィードバックは、上司に対する信頼を上げることにも、仕事に対するポジティブな態度にもつながらないことがわかっています(注4)(図1)。
また、同じく日本の労働者を対象にした筆者らの研究において、過去1カ月間に一度も叱責を受けなかった人に比べ、週に1回以上叱責を受けた人は3.7倍、月に数回しか受けなかった人でも2.6倍、メンタルヘルス不調を抱えるリスクが高いことがわかりました(注5)。
つまり、叱るという行為は、成長を促すどころか、モチベーションを下げ、メンタルヘルス不調を引き起こすリスクが高い指導形態だと言えます。「叱ると人は育つ」という考えは幻想なのです。 【次ページ】それでも「叱るべき」3つの場面とは
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