- 2026/08/04 06:10 掲載
なぜライブドアだけが東証を止めた? 粉飾“わずか”53億円が重く見られた本当の理由
連載:失敗企業から学ぶ財務諸表の基礎知識
2011年、公認会計士試験に合格後、清和監査法人、新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツにて監査業務やIFRSアドバイザリー業務などに従事。その後、リクルートホールディングスにてIFRS連結決算、開示業務などを担当。2021年7月に独立開業。現在は、大手公認会計士試験予備校のCPA会計学院が運営するCPAラーニングの実務家講師を務める。著書に『経理になった君たちへ』『伝わる経理のコミュニケーション術』(税務研究会出版局)『会計が面白いほどわかるミステリ 決算書に隠された7つの罪』(KADOKAWA)など。また「公認会計士YouTuberくろいちゃんねる」を運営。
株価急騰のスター企業を襲った“突然の終わり”
2000年代半ば、ライブドアほど世間の注目を集めた企業はなかったでしょう。堀江貴文社長(当時、以下同じ)のもと、インターネット事業を軸にM&A(企業の合併・買収)を繰り返して急拡大し、2005年にはニッポン放送の株式を大量取得してフジテレビと争奪戦を繰り広げました。プロ野球参入の表明や選挙出馬もあり、連日メディアに登場します。1株を100株にするような大幅な株式分割を繰り返して個人投資家を呼び込み、株価は急騰。時価総額は一時9,000億円規模に達したとされます。その絶頂は、あっけなく終わりました。
2006年1月16日夜、東京地検特捜部がライブドア本社などに強制捜査に入りました。翌17日から株式市場は大混乱に陥り、1月23日には堀江社長ら経営陣が証券取引法違反の疑いで逮捕されます。そして4月14日、ライブドア株は東証マザーズから上場廃止となりました。強制捜査からわずか3カ月です。
罪に問われたのは、大きく2つ。買収をめぐる虚偽の発表などで株価をつり上げた「偽計・風説の流布」と、決算書の数字を偽った「有価証券報告書の虚偽記載」でした。
本稿で注目したいのは後者、つまり粉飾決算です。
混ぜていけない2つの取引、P/Lで見るべき「利益」のキホン
会社の成績表である損益計算書(P/L)は、一定期間の「収益から費用を引いて、利益がいくら残ったか」を示します。売上高から始まり、段階的に費用を引いていく、おなじみの表です。ここで大切なのは、会社に入ってくるお金のすべてが「収益」になるわけではない、という点です。会計の世界では、会社の取引を「損益取引」と「資本取引」に分け、両者を混ぜてはならないという大原則があります。
損益取引とは、商品やサービスの販売をはじめ、収益や費用を発生させて、その期の利益を増減させる取引。資本取引とは、株主からの出資のように、事業の「元手」そのものが増減する取引です。
たとえば、あなたがラーメン店を開くために300万円を出資したとします。この300万円は店の口座に入ってきますが、これを「売上300万円」と呼ぶ人はいないでしょう。ラーメンを一杯も売っていないのですから。元手の出し入れは、どれだけ金額が大きくても、業績ではないのです。
だからこそ、会社が自分自身の株式(自社株)を投資家に売ってお金を得ても、それは出資を受けたのと同じ資本取引になります。売った値段が帳簿上の金額を上回った部分は「自己株式処分差益」と呼ばれますが、これは損益計算書の利益ではなく、貸借対照表の純資産の部に「その他資本剰余金」として計上されます。これが会計のルールです。
ライブドアが偽ったのは、まさにこの一線でした。 【次ページ】【迂回取引】数字はこうして作られた…ライブドア粉飾の核心
財務会計・管理会計のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR