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  • 2009/04/21 掲載

【市場志向型経営の構図 第8回】情報反応の優秀事例

武蔵大学経済学部 准教授 黒岩健一郎氏

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これまでの2回は、マーケティング・リテラシーの情報生成・情報普及に関する優秀事例を紹介した。3回シリーズの最後にあたる今回は、情報反応に関する優秀事例を取り上げよう。マーケティング・リテラシーの高い企業では、普及された市場情報を活用するために、どのような工夫が行われているのだろうか。

黒岩健一郎

黒岩健一郎

武蔵大学経済学部 准教授

反応状況をモニターする

 社内で普及された市場情報を活用するには、その前に、現状どのくらい活用できているかを把握しておく必要がある。現状認識がなければ、改善策も考えられないし、そもそも何らかの対策をとったときに改善されたのかどうかがわからない。

 もちろん、普及されたすべての市場情報が活用されたかを確認するのは難しいが、顧客相談窓口に寄せられた問い合わせや苦情だけなら、製品改良などの反応ができたかどうかをモニターすることは可能である。

 カルビーでは、顧客相談窓口に寄せられた声のすべてに対応することにしている。ここでの「対応」とは、顧客と対話することはもちろん、社内において寄せられた声について検討することも意味している。顧客相談窓口で受けた顧客の声は、応対スタッフが検討課題の形に落とし込み、工場や品質保証室、商品カンパニーへ提案する。提案を受けた部門は、製品改良などの改善が可能かを検討し、不可能であればそれを顧客に伝える。改善が可能であれば、担当者と納期を決めて改善活動を行い、改善内容は顧客へフィードバックする。改善できる場合もできない場合も、とにかく声を寄せた顧客に結果を伝えている。

 カルビーのすごいところは、これだけではない。改善した内容に関しても顧客の評価を受けていることである。声を寄せてくれた顧客に対して、どのように改善したかを説明し、その内容に満足かどうかを確認している。

 資生堂でも、顧客相談窓口で収集した顧客の声を分析して浮かび上がった課題を、リスト化している。それぞれの課題解決へ向けた検討がどのくらい進んでいるかは、顧客相談窓口でモニターしており、担当部門がその課題を解決するまで、リストから削除されない。

反応を最初のステップと考える

 これまでマーケティング・リテラシーを、情報生成・情報普及・情報反応という順で説明してきた。暗黙的に、市場情報を生成して、社内に普及し、それに反応するというプロセスを想定している。しかし、この順番ではなく、反応を最初のステップと捉えると違った見方ができる。つまり、まず自分たちの仮説をもとに企画したマーケティング活動を実施し、そのマーケティング活動のフィードバックとして情報を収集するのである。情報反応は、受動的な活動ではなく、能動的な活動と捉えるのである。

 ネスレのキットカットは「きっと勝つ」という語呂合わせで、受験生に爆発的に売れているが、この背景にはさまざま形のPR活動が貢献している。最初は、受験生が願掛けでキットカットを購入しているという情報を掴んで、それに反応してキャンペーンを行ったが、その後はさまざまなイベントを能動的に企画し、新聞・雑誌やテレビで取り上げられるようになった。例えば、高校生に人気のミュージシャンである175R(イナゴ・ライダー)を使って、ある高校の卒業式でサプライズ・コンサートを行ったところ、非常に大きな反応を得た。そのフィードバック情報に基づいて、次に175Rの音楽CDとキットカットを組み合わせて販売した。ネスレが企画したマーケティング活動に対する顧客の反応を確かめて、次の活動を企画するという循環をうまく回していったのである。

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