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  • 2009/07/10 掲載

小さく始めるSOAのススメ、IBMの「Smart Work」が目指すもの(2/2)

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人間系を結びつけるBPM

──「BPM」についてはいかがでしょうか?

  「BPM」の導入が難しい理由は“人間系”の考慮が弱い点にあると思います。「BPM」では全体最適が重要視されますが、全体最適ばかりに目を奪われると、実現が非常に困難になります。ITによる実装以外に、組織へのプロセスの定着といった基本的ではあるが重要な点を見落としてはいけないと思います。

 この人間系の部分は、ソフトウェアの領域で言うと、たとえば会計とサプライチェーンをどのようにつなぐか、社内だけでなく社外との業務間連携をどのように効率化するかといったことです。

──こうしたコンセプトを強調されるのは、企業内のシステムがバラバラだということですか。

 そうですね。システム関連というと夜間にバッチでファイル転送してするケースがいまだに多いのですが、これはまだいい方で、メールに受発注履歴などの重要な情報をファイルに添付して送信し、再び手入力するというケースすらありました。

Think Big, Start Small

──日本企業にどのように「Smart Work」を導入して行こうとされているのでしょうか

 たとえばBPMで新しい承認のワークフローをつくることも日本の企業にあった「Smart Work」の形だと思います。現状と、将来像からなる業務モデルを書いて、それに合わせて業務システムを変えて行くやり方もありますし、BPMだけでもさまざまな取り組み方があります。

 「Smart Work」は大きなビジョンであり、「SOA」と同様に、来年になったら画期的に「Smartになった」というものでもないですし、そうあるべきものでもないと思います。簡単なところから始め、少しずつ実行し、大きく広げていくというのは、SOAでも「Smart Work」でも同じです。こうした取り組みにより、日本でも働き方を変えて行くことは可能でしょう。

 しかし、ビジネスの世界の移り変わりは非常に激しく、グローバリゼーションも現実のものとなりました。国内だけに閉じた視点でビジネスを行うのではなく、グローバルな視点で業務をどのように進めて行くかが課題ではないでしょうか。

 それには業務プロセスを標準化して“見える化”することが必要です。たとえば、現在コミュニケーションの手段としてはメールが主流ですが、15年ほど前では考えられないことでした。このように考えると、新しいコラボレーションの仕組みを使って、もっと時間と距離の壁を狭めて行くコミュニケーションのスタイルも出てくると思います。

──御社が掲げられている「Think Big, Start Small 」ですね。ただ、SOAは小さい所から始めることができるものでしょうか。

 可能です。むしろ、初期に大きな投資を行ってしまうと、失敗するケースが多いのです。先ほど申し上げたメールで受注情報を交換していたケースでも、リアルタイムでESBから次のシステムに流すような小さなものから始めるのがよいでしょう。実装上はSOAですし、早く、間違いがなくデータ処理を行うことが可能になり、コスト削減効果もあります。そうすると、「社内のAとBをつないで効果が出たから、AとCもつなごう」となり、企業内のインフラが整ってくることになります。

──小さく始めても部分最適にならず、全体最適にするにはどのようにすればよいでしょうか?

 そのためにはきちんと評価することが重要だと思います。一部分でもうまくいった要因をしっかり把握し、次に全体を見据えながら、どういうアーキテクチャーで組んで行こうかと検討することになります。ビッグバン方式の導入は失敗するケースが多いようです。しかし、小規模な導入を繰り返していては、”ESBのスパゲティ化”になってしまいます。この辺りのノウハウもIBMは蓄積しています。

──こうしたことを実現するうえで、IBMの製品群をみるとどうなりますか。

 Smart Workは、あくまでもビジョンであり、製品ではありません。コラボレーションの領域はLotusが牽引しています。SOA基盤では、ESBとしてWebSphere、開発系としてRational、運用でTivoliなどがあります。ビジネスプロセス系では旧ILOG製品がWebSphereに組み込まれたほか、インフォメーション・マネジメントのFilenetなどもあります。

未来に向けたIT投資を

──現在の経済状況下では投資は大幅に抑制されています。そうした中で、「Smart Work」はどのような意味を持つのでしょうか?

 中堅企業の情報システム部門の室長さんがおっしゃっていましたが、基幹システムは5~10年は使われるため、IT投資は10年を見据えて計画する必要があります。一方、今日ではビジネスの変化は1~3年で起きます。このような状況下で、不況期であるからとIT投資を止めていいのかということを熟慮する必要があります。

──情報システム部門の危機意識は経営者の理解を得られるのでしょうか?

 これは各社の調査会社の調査結果や、当社のサーベイなどでも明らかですが、IT投資のうち、約30%程度が新規投資で、約70%は人件費を含めた保守経費だそうです。この保守に関する費用を節約する動きは間違いないと思いますが、この部分を効率化することで新規投資を増やしているのです。

 たとえば、新規にESBを構築した場合、開発の生産性があがるため、その後の開発コストを大きく低減できるメリットがあります。

 この点、IT投資を削減するといっても、たとえばシステム連携するためにどの程度の費用がかかっているのか、内訳をきちんと把握されている企業は思った以上に少ないのです。まず、コスト構造を把握し、どの部分を削減できるのか把握すれば、間違いなく経営者の理解を得られると思います。

──ありがとうございました。

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