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  • 2009/08/26 掲載

コグニティブ無線とは何か?真のユビキタスの実現に必要不可欠な技術【2分間Q&A(58)】

無線LAN、3G、WiMAX、PHSの統合

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無線LAN、3G、WiMAX、PHS...。さまざまな無線技術が発展し、携帯電話をはじめ、次世代の無線規格に向けた新しい規格が続々と策定、実用化に向けて進んでいる。これに伴い、大きな問題となっているのが周波数の枯渇である。この問題を抜本的に解決するのがコグニティブ無線と呼ばれる技術だ。この技術の内容と実用化に向けた最新動向を探っていくことにしよう。

池田冬彦

池田冬彦

AeroVision
富士総合研究所(現みずほ情報総研)のSEを経て、出版業界に転身。1993年からフリーランスライターとして独立しAeroVisionを設立。以来、IT系雑誌、単行本、Web系ニュースサイトの取材・執筆やテクニカル記事、IT技術解説記事の執筆、および、情報提供などを業務とする。主な著書に『これならできるVPNの本』(技術評論社、2007年7月)、『新米&シロウト管理者のためのネットワークQ&A』(ラトルズ、2006年5月)など多数。

深刻化する周波数の枯渇問題を解決する

 HSPA(HSDPA/HSUPA)、HSPA+、LTEなどの新しい携帯電話システムの規格やWiMAXなどの新たなブロードバンドシステム、次世代無線LANなど、ワイヤレスの世界は続々と新しい技術が実用化されている。しかし、新しい技術を活かすには、新たな周波数の確保が必要になる。

 無線通信に利用できる周波数帯域は無限ではなく、異なるサービスで同じ周波数をそのまま利用すると当然ながら混信が発生する。このため、事業者やサービス、利用用途などに応じて、利用できる無線周波数を適切に割り当てる必要がある。また、新たな無線技術を活かすには、さらに広い帯域が必要となってくる。

 たとえば、HSPAの次の世代、「LTE(3.9G)」を実現するには、各キャリアに新たな周波数帯を割り当てる必要が出てくる(表1)。この周波数をどのように確保し、各事業者に割り当てていくかは各事業者のヒアリング、会合を経て総務省が決定する。しかし、新たな周波数が必要となるのはLTEだけではない。モバイルWiMAXや次世代PHS(XG-PHS)など、あらゆるワイヤレス通信に対して、事業者ごとに利用できる周波数枠を定めていく必要がある(図1)。

表1 総務省が認定した「LTE」(第3.9世代移動通信システム)特定基地局開設計画
事業者イー・モバイルNTTドコモソフトバンクモバイルKDDI
希望周波数帯1.7GHz帯/10MHz1.5GHz帯/15MHz1.5GHz帯/10MHz1.5GHz帯/10MHz
3.9世代等の導入採用技術DC-HSDPA
LTE(5MHz,2×2MIMO)
LTE(15MHz,2×2MIMO)DC-HSDPA
LTE(5MHz,2×2MIMO)
LTE(10MHz,2×2MIMO)
導入周波数帯1.7GHz帯
(DC-HSDPA,LTE)
1.5GHz帯/2GHz帯
(LTE)
1.5GHz帯(DC-HSDPA)
2GHz帯(LTE)
800MHz帯/1.5GHz帯
(LTE)
運用開始時期2010年9月2010年7月2011年1月2011年11月
サービス開始時期2010年9月2010年12月2011年7月2012年12月
エリア展開
(2014年度末)
6,388局 75.2%20,700局 51.10%9,000局 60.63%29,361局 96.5%
設備投資額
(2014年度末まで累計)
644億円3,430億円2,073億円5,150億円
加入数見込み
(2014年度末)
295万加入1,774万加入541万加入984万加入
1.5GHz帯/1.7GHz帯の使用採用方式HSPA,DC-HSDPA
LTE
LTEHSPA,DC-HSDPALTE
運用開始時期2010年1月2012年5月2009年12月2011年11月
サービス開始時期2010年1月2012年度第3四半期2010年4月2012年12月
エリア展開
(2014年度末)
6,676局 75.2%5,700局 50.62%10,000局 81.47%6,361局 53.0%
設備投資額
(2014年度末まで累計)
660億円1,151億円2,100億円1,315億円


photo
図1 3.9Gシステムの周波数割当
(1)1475.9MHzを超え1485.9MHz以下 ソフトバンクモバイル
(2)1485.9MHzを超え1495.9MHz以下 KDDI/沖縄セルラー電話
(3)1495.9MHzを超え1510.9MHz以下 NTTドコモ
(4)1844.9MHzを超え1854.9MHz以下 イー・モバイル

 既に、事業者間の周波数帯域の獲得戦といった様相は、日本だけではなく世界的な問題となっているのが現状だ。このまま携帯電話が3.9G→4Gに進化し、他のワイヤレスブロードバンドシステムや無線LANシステムが進化し続けるならば、周波数の枯渇問題がより深刻化することは確実である。

 この問題を解決するための切り札として大きく注目を集めているのがコグニティブ無線(cognitive radio:適応通信)という技術だ。コグニティブ無線は、無線機の周囲の電波環境に応じて最適な周波数や通信方式を選択して通信を行うという、まったく新しいワイヤレス技術だ。

 コグニティブ無線のアプローチには2つの方法がある。1つは、特定のサービスの中で無線機器が既存システムの間で空いている周波数帯、時間帯を見つけ出して必要となる周波数帯域を確保して通信を行う「周波数共用型」、もう1つは、無線LAN、WiMAXやPHSといった、通信方式の混雑度や接続性を通信機器が認識し、最適な通信方式を自動的に変更しながら通信を継続させる「ヘテロジーニアス型」と呼ばれるものだ(図2)。


Source:NICT
図2 ヘテロジーニアス型サービスと周波数共用型の違い

 このように、コグニティブ無線技術は、空いている既存の「周波数」や、利用可能な「無線方式」、昼間/深夜などの「時間帯」に応じて通信システムを効率良く使用することで、周波数の枯渇問題を解決するための重要なアプローチである。

 この技術は、ユーザーにとってのメリットも大きい。今後は、さまざまな無線規格/無線方式が錯綜し、今後はキャリア系サービスだけで、W-CDMAやPHS、HSPA、HSPA+、LTE、XG-PHSなど、さまざまな新旧サービスが入り乱れ、当面は並行した形でサービスが提供されるはずである。

 しかし、ヘテロジーニアス型のサービスが実現すれば、1つの無線機を利用するだけで、WiMAX、無線LANなどさまざまな無線サービスをシームレスに使える。たとえば、ノートPCにコグニティブ無線に対応するワイヤレスチップを内蔵しておけば、無線LAN、HSPA、WiMAXなど、自動的に無線方式を選択して接続するので、ユーザーにとっては、無線方式そのものを意識する必要がなくなる。まさに、夢のような技術と言えるだろう。

【次ページ】コグニティブ無線の国際標準規格

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