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- 2010/01/13 掲載
【連載・全3回】なぜシステム導入プロジェクトの70%は遅延、予算オーバーとなるのか(2)
アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシー 金澤明彦氏
アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシー
ディレクター
24年以上にわたる製造業および金融業双方での豊富なビジネス経験を有している。
具体的には、石油業界および消費者向け金融業界における国際企業でのマネジメント・ポジションで広範囲な実務経験を持つ。特にシックス・シグマの手法を駆使したプロセス改善やIT関連プロジェクトにおいて豊富な経験と実績を有しており、また日本企業と米国企業の合弁会社のマネジメントという貴重な経験も積んでいる。
【アリックスパートナーズについて】
アリックスパートナーズは、米国デトロイトに本社を置く世界最大規模の「企業再生専門のプロフェッショナルファーム」。日本支社は、アジア初の拠点として2005年に設立された。
現在、日本オフィスでは20数名のプロフェッショナルスタッフが、緊急対応を要するような苦境や危機に陥った企業の支援業務に特化し、「再生専門のプロフェッショナル集団」として数多くの成果を遂げている。
カネを使う人間と成果を出す人間が一致しない
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他のコストはこの点ではるかにストレートフォワードだ。たとえば、営業販促費であればカネを使うのも、そのカネで成果を出すのも営業部門であるし、製造機械装置への投資であればカネを使うのも成果を出すのも製造部門である。したがって、経営はそのカネの使い方・成果の出し方について、営業部門あるいは製造部門とだけコミットを取り付ければよい。コストの追跡や成果の把握もコミットをした部門の責任で管理させ、役員会での定期的なKPI報告や経理や監査部門による数値のチャックの仕組みをかませればよい。結果に関する責任の所在、つまり責任の取らせ方もストレートフォワードだ。
第3のステークホルダーの出現
PDCAの一気通貫した責任者は誰だ!?
それに対し、システム関連コスト、特にシステム投資には経営と当該部門(先の例では営業部門や製造部門)の間に“システム部門”という第3のステークホルダーが介在する。そして往々にして、投資の企画段階(PDCAの”P”)からこの“第3のステークホルダー”がチラチラ顔を出す。この“チラチラ”という所が問題で、“どっしりと、全面的に、自分の責任で”なら良いのだが、当該部門とシステム部門のどちらが当事者なのか判然としないなかで PDCAの”P”が過ぎ、当該部門とシステム部門の共同発議の稟議書が回ってくる。一応、投資対効果(CFROIなど)やスケジュール、モニタリングすべきKPIなども記載されている。同業他社でも同じようなシステム導入をしているという定性情報も書いてある。売上比率でのシステム投資もほぼ前年並みだ。多少、モヤモヤ感はあるが、まあ専門的なことは良くわからないし、他社に遅れをとるのも嫌なので、ハンコを押しておくか。PDCAの”P”の最後に稟議書に捺印する時の経営者の心境はこのようなものだろう。ただ、この後、実際にカネを使うのはシステム開発を担うシステム部門であり(PDCAの”D”) 、そこでの開発物(ハードやソフト)を使いこなして成果を出すのは当該部門である。では、成果に対し責任を持つのはどの部門なのか(PDCAの”C&A”の責任者は誰なのか)?システム部門は「成果が出ないのは使いこなせない当該部門の問題」と言い、当該部門は「使えないものを作ったシステム部門のせい」と言うだろう。
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