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  • 2010/01/07 掲載

欧州で人気の音楽サイト「Spotify」からみるフリーミアムビジネスの重要指標【○○はビジネスになるか(5)】

ビジネスモデルで先行する音楽市場

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音楽市場は、フリーの世界となじみが深く、同時にフリーミアムを成立させることが難しい市場でもある。かなり早くから無料と有料を組み合わせたビジネスモデルが形成されている一方、ネット上の音楽といえば、すぐに違法コピーや海賊版が思い浮かぶほど、“悪しき無料”がはびこっており、単に楽曲を無料にしただけでは、あまりインパクトはない。そのため、ビジネスモデルの構築には相当な工夫が求められることになる。その半面で、音楽のフリーミアムビジネスは他のジャンルのお手本にもなるかもしれない。

行宮翔太

行宮翔太

ローカルTV記者、全国紙記者を経て、ITやビジネス分野のライティングを手がける。NTTPCコミュニケーションズ運営時のCNET、(株)ガリレオの「Infostand」などで執筆。四半世紀以上前に数年間住んだインドが“IT先進国”になったことを、どうしても信じられない。

一歩先を行く音楽ビジネス

 ついに邦訳が出版されたクリス・アンダーソン氏の『Free』では、ラジオというメディアの登場に「フリーの力を予想させる最初の兆候」がみられるとしている。

 20世紀初めのラジオ放送が始まった当時、生演奏で報酬を得ていたミュージシャンたちは、タダで視聴者に音楽を聞かせるラジオが、音楽ビジネスを崩壊させると考えた。彼らは生演奏という“プレミア”を守るために、著作権団体を通じてラジオ局へのさまざまな対抗措置をとった。

 ところがふたを開けてみると、ラジオは音楽産業を巨大で儲かるビジネスに変えた。コンサートに出向いて生演奏で聞くことができる人だけの小さな市場は、ラジオを持つあらゆる人が参加できる巨大市場に成長。「低品質の無料バージョン(低音質でいつ曲がかかるかわからないラジオ)が、音質のよい有料バージョンを買ってもらうためのすぐれたマーケティング手法となり、ミュージシャンの収入は、演奏からレコードの著作権使用料に移った」のである。

 そして現在、インターネットが音楽市場をさらに拡大している。レコードやラジオ/テレビ放送に代わって、インターネットが消費者に音楽を届ける新しい配信経路となったのである。インタラクティブなインターネットでは、一人ひとりが好きな音楽を選んで、いつでも、どこでも聞くことができる。放送のように番組時間やエリアの制約はなく、世界中にリーチできる。同時に視聴できるユーザーの数は、地上波放送とは比べものにならないほど多く、1人あたりに届けるためのコストはきわめて安い。

 こうして、音楽ビジネスは、価格破壊を繰り返しながら、いち早くフリーの域に到達した。

音楽の提供形態の変遷と、制約、コストの関係
音楽の提供形態対象制約各リスナーのコスト
生演奏 その場の少人数1度きり(回数制限 )
放送同じ地域にいる多人数リアルタイム(時間的制限、地理的制限)
インターネット どこかにいる超多人数いつでも、どこでもOK(制限がきわめて少ない)

音楽業界にはもともとフリーミアムビジネスがある

 もともと音楽は、それ自体が「商品」と「プロモーション素材」という2つの側面を持っている。お金を払って楽しむものでありながら、無料のものがいくらでもある。前者はCD・レコードなどのパッケージ音楽や、コンサートの生演奏などで提供されるもの。後者はテレビやラジオの番組などのプロモーションで用いられるもの。

 一般的な音楽の売り方は、テレビ番組に歌手が出演して、新曲を披露し、レコード・CDをプロモーションするというものだった。テレビ番組制作のコスト(歌手の出演料など)は、スポンサーが広告を出して負担し、視聴者は無料で番組の音楽を楽しむ。視聴者が曲を気に入ったら、CDを買い、よりよい音質で存分に聞く。レコード会社とミュージシャンは、CD・レコード、ビデオを売り、コンサートに客を集め、関連グッズを売って儲ける。

 これは、無料の放送を、有料のCD・レコードを販売するためのマーケティング手段として活用するもので、「フリーミアム」ビジネスモデルの原型ともいえる。もっと端的な例としては、テレビのCMソングというプロモーション素材が、そのまま大型の商材に化けるケース。「商品」と「プロモーション素材」の両方の側面を持ち、まさに「フリーミアム」ビジネスモデルと言えよう。

 そんな音楽の世界で、今、注目のフリーミアムサービスが「Spotify」だ。前置きが長くなったが、今回はこのサービスからフリーミアムビジネスをみてみよう。

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