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  • 2011/01/14

米シリコンバレーと戦えるか?無料ERPで躍進するErplyにみる欧州ベンチャー:○○はビジネスになるか(18)

増えるインキュベーターファンドとイノベーティブな企業

Webサービスの起業はいつまでもシリコンバレーの専売特許なのだろうか――。この課題は日本に限らず、スカイプ以降、IT関連の大スターが生まれていない欧州も同じである。新年早々、本連載でも取り上げたスウェーデンの音楽サイト「Spotify」が米国進出を頓挫したというニュースが流れた。これを機にネット上では、欧州のベンチャーは、なぜ米国(シリコンバレー)よりも貧弱なのかといった議論が起こっている。今回はこれらの議論を紹介するとともに、「シリコンバレーと戦える欧州ベンチャー」として注目を集め、クラウド&フリーミアムERPサービスで成長する企業Erplyを取り上げる。

行宮翔太

行宮翔太

ローカルTV記者、全国紙記者を経て、ITやビジネス分野のライティングを手がける。NTTPCコミュニケーションズ運営時のCNET、(株)ガリレオの「Infostand」などで執筆。四半世紀以上前に数年間住んだインドが“IT先進国”になったことを、どうしても信じられない。

Spotifyの挫折で始まった欧州ベンチャー議論

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SpotifyのPC向けソフト。Spotifyは欧州で爆発的な人気を博し、2009年秋には6カ国600万人超のユーザーを集めていた。
 本連載の第5回でも紹介したように、SpotifyはP2P技術を利用したストリーミング型音楽サービスを手がける企業で、フリーミアム方式(基本サービスは無料、プレミアムサービスは有料という方式のこと)を採用して欧州では高い人気を得ている。当初は米国でも2009年にサービスを開始する計画だったが、レコード会社との交渉が進まず、次の目標としていた2010年内にも間に合わなかった。テレグラフなどの欧州メディアによると、メジャーレーベルが「あまりに高額の前払い金を要求してきたため」だという。

 このSpotifyの失敗は昨年末から話題になっており、TechCrunchでは「なぜ、欧州からビッグなWeb企業が生まれないのか」と題して、ヨーロッパの投資家クラウス・ホムメル氏のインタビューを紹介している。同氏は「“一つのヨーロッパ”という宣伝とは裏腹に、あまりにも細かく分断化している市場が原因」だと指摘している。

 Spotifyは、以前にも紹介したように、欧州の「いくつかの市場」で非常に高い「コンバージョンレート」を獲得しているのが特徴だ。一方で、このことは欧州市場がセグメント化されているという、ホムメル氏の解説を裏付けるものだと考えられる。シェアが細かい市場ごとの特殊事情で決まるのだとすると、欧州で成功したからといってグローバルで成功できるとはいえない。

欧州からビッグなWeb企業が生まれない訳

 ドイツのベンチャーキャピタリスト、Paul Jozefak氏は、欧州と米国の起業マインドの違いについて、Q&AサービスのQuoraで答えている。同氏は13項目を列挙しているが、主に次の6つにまとめることができる。

  1. 起業家自身の起業経験が少なく、ベンチャーキャピタルとの仕事の仕方も知らない
  2. 米国に比べて調達できる資本が小さく、マーケティングなどに十分な投資を回せない
  3. 教育の違いのせいで、米国の起業家に比べてプレゼン能力が弱い
  4. 失敗が汚点になることをおそれて「failing fast」(駄目なものは速く失敗して撤退すればいい)を信じられない
  5. グローバルプレーヤーよりも地域のスーパースターである方を好む
  6. 年間30日間のバケーションの習慣

 ここで挙げられた多くは日本の状況にもあてはまりそうで、興味深い。ただ、このエントリー自体が、現在最も注目されているWeb企業の一つで、シリコンバレー発のQ&AサービスのQuora上にあるところが、なんとも皮肉である。

 とはいえ、シリコンバレーに対抗できるベンチャーが徐々に欧州から生まれているのも確かだ。中でも、ReadWriteEnterpriseやウォール・ストリート・ジャーナルなどで2011年の注目企業に取り上げられているErplyはその代表例だろう。同社はフリーのERP(業務統合パッケージ)サービスを手がける企業だ。

【次ページ】フリーミアムのERPサービスErplyとは

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