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- 2012/03/12 掲載
銀聯カードの基本を知る:中国人の脅威の消費ポテンシャルで注目を集める決済方法
中国展開における最低条件
銀聯カードは中国人の「もう1つの財布」
こうした中国人観光客への取り組みの一貫で急速に普及しているのが「銀聯カード」への対応だ。銀聯カードとは、中国が国家主導で設立した金融機関連合「中国銀聯」によって提供されるオンライン決済システムが付与されたキャッシュカード、あるいはクレジットカードのこと。すでに中国国内では約28.5億枚(2011年12月時点)が発行されている。
銀聯カードは本来、デビットカード(注:カードの利用と同時に引き落としが発生する仕組み)に分類されるもので、VisaやMasterCardといった国際ブランドのクレジットカードとは異なり、与信機能を持たないのも特徴の1つ。中国国内においてはVisaやMasterCardよりも遙かに多い、318万店舗で利用できる。沿岸部だけではなく、地方都市など中国全土で利用可能で、今や「中国人のもう1つの財布」になっていると言っても過言ではない。
現在、中国銀聯は、Visa・MasterCardなどと同様に国際ブランドとしての展開を強化しており、中国国外での銀聯カードの利用拡大を図っている。2005年から利用がスタートした日本以外にも、欧州や韓国など、海外の銀行・カード会社とも積極的な提携を行っている。
爆発的に増える中国人観光客の取り込み合戦が続く
日本政府観光局(JNTO)によると、2011年は東日本大震災の影響もあり、中国人観光客は2010年の141.3万人から104.4万人と前年比で26.1%の大幅な減少となった。滞在ビザの発行条件を緩和した2011年7月1日以降、約10万人の中国人がビザの申請を行ったと言われる。中国の旧正月と言われる2012年の春節の期間中、日本を訪れた中国の個人観光客数は昨年の春節連休期間と比べて約2倍に増えた。
2010年度の日本国内における中国銀聯の決済総額は480億円。2011年末時点で、銀聯決済が利用できる日本の加盟店数は約7万店にのぼる。中国人観光客が訪れる大型加盟店への導入はほぼ一巡し、「現在は商店街など、個店レベルでの導入が進んでいる」(三菱UFJニコス)という。
2012年1月末まで、約2万8000店舗の加盟店に銀聯決済を導入した三井住友カードでは、ホテル、飲食、ショッピングセンターに加え、個人旅行の解禁による新たな観光ルート拡大に合わせて利用エリアを開拓している。
中国人観光客の購買動向として、化粧品、炊飯器、ゲーム機、オーディオ、腕時計などをまとめ買いする傾向がある。三井住友カードによると1件あたりの平均利用額は、3万円程度。百貨店・ブランドショップが3万5,000円、空港免税店が1万5,000円、家電量販店が5万円程度となっている。「最近では決済単価の低い店舗にまで加盟店が拡大していることもあるせいか、2012年の春節では、決済件数は増加しているが、単価はやや下がり気味な傾向にある」(三井住友カード)そうだ。
国土交通省観光庁では、2010年7月16日に銀聯と中国人の訪日旅行を促進するための覚書を締結。中国銀聯ではゴールド会員向けに2011年の旧正月にあたる春節までに「日本旅行カード」の企画を行う予定だったが、東日本大震災の影響で同企画はいったん見合わせになった。
しかしその後、銀聯と協力して、関西および九州地区において銀聯カードで1万円以上買い物するごとに1,000円のクーポン券を利用できる小冊子を作成。中国国内に8万部、日本国内に2万部を配布するなど、中国人観光客を取り込むために、官民を挙げた取り組みが続いている。
【次ページ】IT・POS対応の現状
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