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- 2025/08/12 掲載
消える駄菓子屋…なのに急成長?「おかしのまちおか」のヤバすぎる“儲けのカラクリ”
【連載】流通戦国時代を読み解く
みずほ銀行の中小企業融資担当を経て、同行産業調査部にてアナリストとして産業動向分析に長年従事。分野は食品、流通業界。執筆、講演活動中で、TV等マスコミで情報発信中、連載記事は月6本以上。主な著作物に「図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書」(技術評論社)、「小売ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)などがある。
知る人ぞ知る「みのや」とは?
菓子小売チェーンを運営する「みのや」が急拡大を続けている。みのやと聞いても、「何の会社?」と、多くの方は感じるのではないだろうか。ただ、店の名前が「おかしのまちおか」だと聞けば、首都圏在住のかなりの方が知っているかもしれない。イメージは、首都圏の商店街や駅前にある、小さなお菓子のディスカウントショップだが、大手菓子メーカーの商品がスーパーよりも安く並んでいて、中には大幅値引きされている掘り出し物も並んでいる。それも、マイナーなメーカー品だけでなく、誰もが知るような有名ブランド品が明らかに安いので、なんかお得な気分になる菓子屋ではある。
ただ、そんなに儲かっていそうには見えないこのお店が急拡大しているとは、実際どんな会社なのだろうか。上場で情報開示がされたので、詳しく見ていこう。
小さな駄菓子屋が消えた理由
現在のみのやは、菓子ディスカウント店「おかしのまちおか」を展開する小売チェーンであるが、元々は埼玉県大宮市(現さいたま市)の菓子卸売業者だった。卸売業者がなぜ小売に転換したのかを解説する前に、菓子流通のむかしについて触れておく必要があるだろう。今、お菓子を買うならば、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどのチェーン店で買うのが主流だが、かつて昭和の時代は、個人経営の菓子屋というのが、どこの街にもあって、そこで買うのが普通だった。
かつて栄えていた小さい菓子屋は、菓子メーカーから直接商品を仕入れることはできなかった。というのも、注文数が少なく、メーカーに相手にされなかったからだ。そこで、いろいろなメーカーの菓子を揃えるには、「問屋」と呼ばれる中間業者を通じて仕入れる必要があったのだ。
当時のお菓子の流通は階層構造になっていて、メーカーと直接やり取りする「一次卸」は主に大手の小売店と取引していた。その下に「二次卸」「三次卸」がいて、仕入れる量に応じて商品を分けて届ける役割を担っていた。とくに「三次卸」は、街の小さな菓子屋にきめ細かく商品を届ける役割を果たしており、地域ごとにたくさんの卸売業者が活躍していたのだ。
しかし、今はどうかと言えば、お菓子を取り扱っているお店のほとんどはチェーン店となり、街の菓子屋はほとんど見かけなくなった。その結果お菓子の流通は大きく変わり、今では多くの商品がチェーン店の物流センターにまとめて納品されるようになり、小規模なスーパーぐらいしか、個別の店舗への配送を必要としない状況になってきている。
つまり、かつて重要だった「二次卸」や「三次卸」の役割は、今ではほとんどなくなってしまったのだ。そうした業界で、おかしのまちおかは、革新的な方法を採り入れ、大きく成長してきたのだ。具体的に、同社は何を行ったのか。
【次ページ】「まちおか」の成長を支えた“独自戦略”とは
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