• 2012/03/30 掲載

【オバタカズユキ×沢田健太 対談】就活シーズンの今、資格取得は何のためかを考える!――ソー活、縁故採用、資格ビジネスの現実をどう読むか(2/3)

『資格図鑑!』オバタカズユキ氏×『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』沢田健太氏

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。

資格取得が目的化され、業者主導の「ブーム」に

――不況を背景に「資格ブーム」が起こったと言われていますが、問題点はありますか?

 オバタ氏■やはり、資格取得の必要性を過剰に喧伝する業者が多いことではないでしょうか。冒頭で紹介した「USCPA(米国公認会計士)」は、第2次橋本内閣のもと1996年から進められた金融ビックバンにより、会計基準の国際標準化が叫ばれたことが、ブームの火種となっています。当時は、「USCPA」を取得すれば日本企業からも引く手あまたになると言われていましたし、外資系企業への就職にも有利だとされていました。

photo

『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』

 しかし、実際には企業の経理部や会計事務所で実務経験がある人材の方が使えるわけですよ。外資系に就職するにしても、会計で使う英語は限定されているので、努力すれば言語の壁も越えられますし。かつては資格ガイド本に「USCPA講座」の広告がよく掲載されていたものですが、現在ではご存じのとおり、世界金融危機の影響で外資系への転職自体が下火で、「国際ビジネス系資格」の注目度は急落しています。ところで、先ほど沢田さんから「TOEIC」の話が出ましたが、大学教育で扱うなら留学するための基準となる「TOEFL(Test of English as a Foreign Language)」の方が適切だと思います。なぜ「TOEIC」を採用しているんですか?

 沢田氏■すでにお話したとおり、大学が資格支援に取り組む背景には「生き残り競争」の激化が根底にあります。本当に学生のことを考えていれば、「TOEFL」に移行すべきかもしれませんが、「TOEIC」の方が取り組みやすく、「TOEFL」の方が難しいことは誰でも知っています。それに「TOEIC」を採用していたとしても、まったく的外れというわけではありませんし……。大学の進むべき方向のズレが、この先どうなるのかは気になるところです。「USCPA」の話で思い出しましたが、旅行関係の資格もよく誤解されていましたよね。

 オバタ氏■「旅行業務取扱管理者(旧・旅行業務取扱主任者)」ですね。「取得しなければ内定が取れない」と、まことしやかに言われていましたが、まったくそんなことはない。普通は入社してから取る資格なのに、「旅行業界へのパスポート」のように喧伝されていました。

 沢田氏■旅行業界は就職が難しくて人気もありますから、マーケットが生まれやすかったんでしょう。最近では、「○○地検定」のような、ご当地検定を取った方がいいと勧める業者もあるようです。「旅行会社に就職するなら、地方のことを知っておいた方がいい」という理屈のようですが……。

 オバタ氏■それは、もう論理が飛躍しすぎていますよね(苦笑)。

――そういった業者主導の「流行」に流されないために、どのようなことを心掛けたらいいのでしょうか?

 沢田氏■『資格図鑑!』のいいところは、資格を取った後の仕事の様子が書いてあるところだと思います。働くうえでの厳しい現実にもきちんと触れていて、実際に職業に就いた姿をイメージしやすい。どの資格も取得しただけでどうにかなるものではなく、結局、自分自身がどう動くのかの方が大切ですよね。そういった視点を持つことではないでしょうか。

 オバタ氏■それは『資格図鑑!』を刊行した1つの狙いでもあります。当時も資格ガイド本は何冊もありましたが、「資格を取得すると人生がバラ色になる」という成功例を語ったインタビューや広告が盛りだくさん。取得自体が目的化され、その後の実態に触れているガイド本はほとんどありませんでした。例えば、高偏差値大学に通い公認会計士を目指して勉強している学生でも、監査法人が具体的にどのような仕事をしているのか十分に理解していない。「予想していたイメージと違った」と漏らす公認会計士は驚くほど多いんです。

 沢田氏■大学のキャリア教育でも、そこまでは教え切れていないのが現状です。福祉や医療など職業直結型の資格であれば、ある程度は講座内で触れることはできますが、「秘書検定」なんかは、「とりあえず取っておいた方がいい」みたいな感じでしか言えていない。

 オバタ氏■秘書検定か……。「とりあえず取って損も得もなし」と私だったら言っちゃうかなあ。そんな調子で書いているから、『資格図鑑!』に対する批判もあるんですよ。よく言われるのが、「やる気を出すために買ったのに、やる気がなくなった」「ネガティブキャンペーンをやっているのではないか」といったものです。各業界の常識を普通に聞き書きしてまとめている本なのだけど。

大学生の学習意欲を引き出す資格の意外な効用

――大学生の資格に対する意識はどのようになっていますか?

 沢田氏■学生が資格を意識するタイミングは2つあって、1つ目は入学してすぐの時期。つまり、「何かを始めたい」と思う時の「何か」に資格がなりやすいんです。さらに、取れるか取れないか白黒がはっきりしていますから、頑張ったことの成果が見えやすいこともポイントです。2つ目は、就職活動を始め出す時期ですね。特に私立大学の文系では、「資格くらいは取っていなければ、就職できない」と焦る学生が多い傾向にあります。

 オバタ氏■例えば、「TOEIC」だったら何点以上を取ると履歴書に書けるんですか?

 沢田氏■500点~550点くらいでしょうか。

 オバタ氏■えー! そんなに低いんですか。転職市場では900点以上が評価対象ですよ。

 沢田氏■500点は下位校の場合です。そもそも、そういった大学に通う学生に対しては、「成功体験」や「達成感」を与えるために資格を勧めるケースが多い。「やれば出来るんだ」ということを教えてあげるという意味合いが強いんです。1つ資格が取得できれば、「もう少し難易度の高い資格を取得してみようか」とか、「その資格に関連する専門の勉強を大学で頑張ってみようか」などと誘導していくんですね。企業から評価される資格ではないと分かっていても、具体的な道を示せないのも歯がゆいですし。

 オバタ氏■具体的に、資格取得による成功体験が良い内的循環に繋がったという例はあるんですか?

 沢田氏■たくさんありますよ。「販売士検定」は良くある例で、流通や販売の仕組み、マーケティングなどを学ぶことができ、取得後に商法や経営学に興味を持つようになった学生もいます。あとは、経営学部の学生に対して、「経営学検定」を勧めることが多いです。学問に直結し、学んだことがどれだけ身に付いているか試すことができますので。学内試験ではなく学外検定を利用するのは、客観的指標として認知されているからです。

――内定率が低水準で推移しています。学生の「資格熱」は高まっているのでしょうか?

 沢田氏■特別に、そう感じることはありません。ただ、書類で落とされることが多い中、資格記入欄の4行か5行を空白で提出することへの恐怖感はあるようです。都心の学生だと運転免許証すら持っていないですからね。下位校の学生でしたら、「英検準2級」でも書かせる場合があります。

 オバタ氏■「英検準2級」くらいじゃ、逆にマイナス評価となっちゃうのでは?

 沢田氏■私立文系の大学って、正直、たいして勉強しなくても卒業だけならできるじゃないですか。だから、「せめて、何か1つくらいは勉強してほしい」とおっしゃる人事部の人も多い。資格を取得していれば、少なくとも取るため自主的に勉強をしていた証拠にはなります。

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます