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  • 2012/10/24

ソシエテ ジェネラル ヴィエ氏対談:バーゼルⅢやソルベンシーⅡがもたらすもの

ITはERMを浸透させることに貢献すべき

金融機関に一定の健全性を求める、銀行向けの「バーゼルⅢ」と欧州の保険会社向けの「ソルベンシーⅡ」。両規制が直接適用される欧州の金融機関は、まさに制度の詳細決定の帰趨をにらみながらの対応作業の渦中にある。9月27日に開催された「金融リスクマネジメントフォーラム2012」の基調講演に登壇するために来日した、フランスの金融グループ大手ソシエテ ジェネラルの金融・保険・年金アドバイザリー統括責任者、エリック・ヴィエ氏に、国際金融総合研究センター ファルチザン 大塚賢二氏が話を聞いた。

国際金融総合研究センター ファルチザン 大塚賢二

国際金融総合研究センター ファルチザン 大塚賢二

1989年(平成元年)、日本長期信用銀行入行。以来、大手金融機関、コンサルティングファーム等にて、統合リスク管理の責任者等、ほぼ一貫してリスク管理やコーポレート・ガバナンスに関する実務およびアドバイザリーサービスに従事。大小金融機関でのリスク管理や経営企画等の現場経験に根差した具体性と、コンサルティングファームにおいて国籍/業種/分野を問わずさまざまなクライアントと接して培われた客観性を併せ持ったサービスに特徴。また並行して、内外金融規制や金融機関経営管理についての著述および提言も積極的に行っている。

東京大学法学部卒業。
ニューハンプシャー州公認会計士。
社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
日本CFO協会グローバルCFO(米国CTP)。
国際総合防災学会会員。
地活アソシエイツ 代表

金融規制が長期投資の停滞を招いている

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ソシエテ ジェネラル
金融・保険・年金アドバイザリー統括責任者
マネージングディレクター
エリック・ヴィエ氏
【大塚氏】
──金融規制が長期金融にもたらす影響についてお教えください。


【ヴィエ氏】 近時の金融規制は、経済活動の基盤となる長期金融を停滞させるのではないかと懸念している。すなわち、バーゼル規制により、銀行は一定の流動性確保とレバレッジの抑制を義務づけられるため、長期貸出の供給が以前に比べて制約を受ける状況となる。

 また、ソルベンシーⅡの方向性に伴い、年金や保険は、資産および負債の時価評価によりリスク・ベースでの所要資本規制に服することになる。規制の詳細は不明であるが、短期的な金利変動が最終的に純資産のボラティリティを高めることが予想され、年金や保険にとっても長期資金が出しにくくなるだろう。

【大塚氏】
──規制当局はこうした問題に対してどのように対応するつもりなのでしょうか?


【ヴィエ氏】 規制が長期金融に及ぼすネガティブ要因を和らげるために、いくつかの詳細規定を打ち出している。中でも、負債の時価評価の際のマッチング調整(注1)はソルベンシー比率を上昇させる効果が大きくなり、今後の議論において適用要件が拡張されれば、年金・生保の資本戦略なかんずく前向きな長期投資に与えるインパクトも強くなる可能性があるだろう。

注1 マッチング調整とは(Matching Adjustment Premium)
ソルベンシーⅡの下では負債の時価評価に使用される割引金利は基本的にリスクフリー金利だが、下記1~3を含む諸要件を満たす負債の時価評価の際に、割引金利に織り込むことができる利率のこと。マッチング調整を織り込んで評価された負債の公正価値を、一定以上の格付けを持つなど所定の要件を満たす固定金利マッチング資産の公正価値と一致させることができる。
  1. 将来の保険料収入がない
  2. 解約オプションが含まれないか、解約時の資産を超えない解約返戻金に限定される
  3. 引受リスクは、長寿リスク、経費リスク、更新リスクに限定される


長期投資が進まない3つの理由

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ファルチザン
代表
大塚賢二氏
【大塚氏】
──規制が実際のビジネスへおよぼす悪影響についてもう少し詳しく説明していただけますでしょうか。


【ヴィエ氏】 銀行は資金調達をめぐり、いわばネガティブなサイクルに陥ってもいる。銀行による国債投資のケースを例に取ってみるとわかりやすい。発行体政府の財政状況の悪化は銀行の保有資産劣化につながり、当該銀行の調達スプレッド上昇を招く。ネガティブ・キャリーに直面した銀行は資産の売却、すなわちデレバレッジに走るようになり、それがさらに進み損失を計上するに至ると、より多くの資本が必要となる。その一方で、政府が銀行に資本を注入し救済すると、政府のさらなる財政悪化につながる。

 こうした悪循環を打破するには、サイクルの外部、つまり年金・保険からの長期資金供与が必要だ。また、利ざや確保の面からも年金・保険の方が銀行に比べて長期ローンを出しやすいと考えられる。住宅ローンから獲得できる利ざやは、信用コストやオペレーションコストなどを経済価値ベースで加味すると年金・保険は銀行よりもずっと大きいという調査結果もある。

 こうした状況にもかかわらず、年金・保険(特に保険)による長期投資が進んでいない理由の1つ目は、規制上、日次でバランスシートを時価評価する際に、ボラティリティの高いリスクフリー金利の使用が義務づけられることにある。リスクフリー金利の使用によりソルベンシー資本の価値がボラタイルとなる結果、年金・保険各社は長期投資を回避しがちになる。悪いことには、長期投資資金の出し手が減ると長期投資のボラティリティが押し上げられ、さらに長期投資を足踏みさせる悪循環がある。

 2つ目は資本要因だ。ソルベンシーⅡでの所要資本規制は、保有期間1年、信頼水準99.5%で計測されるリスク量に基づいた資本の確保を要請しているが、長期的投資としては誤解を招きやすい。年金・保険負債の性質からは、期待キャッシュフローの不確実性により着目し、長期投資に対応した割引率で考えたほうが合理的とも言える。

 3つ目として、欧州市場インフラ規制(EMIR)上、プレーンな金利スワップなど一定のデリバティブを決済する際の中央清算機関(CCP)の利用義務を挙げておきたい。CCPが担保として受け入れるのは基本的に現金のみで、国債・社債は対象外となる。年金・保険各社はALMにデリバティブを利用しようとすると多額の現金が必要になりうる。計算上、20年物の金利スワップで期間を通し想定元本の25%に上る現金を用意しなければならない可能性もある。

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