Agoopは、NTTドコモ、au、ソフトバンクといった国内主要キャリアの接続率を調査・分析を行っている会社で、そのデータはソフトバンクのCMなどでも利用されている。同社はもともとADSLの速度調査などを行っていたと、Agoop 代表取締役社長 柴山 和久氏は振り返る。
「例えば、ADSLで10Mbps前後でている地域より、1Mbps前後のスピードしか出ていない地域のほうが高速化のニーズが高いはずで、投資効果も高い、といった分析を行っていました。これらの情報は、FTTH化を優先すべき地域や、通信事業者の投資戦略に役立つものです」
近年はスマートフォンアプリを利用したデータを使い、その調査範囲や応用を広げているという。電波つながりチェッカー、Wi-Fiチェッカー、ラーメンチェッカー、コンビニチェッカーなどの「チェッカーシリーズ」アプリを始め、モバイルデバイスから収集したビッグデータを利用した調査分析が増えているのだ。
基地局ではわからない情報を10億件/月のデータから分析
キャリアの接続率の調査も、まさにモバイルデバイスからのビッグデータを利用したものだ。
「携帯電話のつながりやすさは、電波の圏内であるかどうか、つまりカバーエリアの広さだけでは決まりません。混雑による輻輳や周辺環境による電波の干渉などによって、『つながっても切れる』、『安定しない』といった問題が発生します」
このような状況から、基地局を利用したデータ収集ではユーザーの「つながりやすさ」の判定が難しい。基地局はコネクションが確立できればOKとしてしまうためだ。
実際につながりにくい状況を知るには、端末側の情報を収集する必要がある。そのため、同社のチェッカーアプリやサービスなどは、事前に利用者の許諾を得て、端末のGPS情報や接続状況の情報を収集している。この点について柴山氏は、「現在ビッグデータビジネスを語るとき、個人情報やプライバシーの問題は無視できません。したがって、Agoopのサービスでは事前の許諾の他、UDIDを含む個人情報やそれにかかわる情報は収集していません」と補足する。
Agoopでは、このようにして集めたスマートフォンのアプリ通信ログの情報が、月に約10億件、1日およそ3,600万件に達するという。アプリのダウンロード数は3キャリア合計で360万にのぼる。キャリアは、このビッグデータを解析した情報によって、つながりにくさ解消のための基地局対策、そして対策後の検証、フォローアップなどに利用する。提出できるレポートは日次、週次などの他、時間単位の細かいものから、GPSデータをもとに地域、地点別のピンポイントデータまで多岐にわたる。
Agoopのビッグデータ分析でわかること
では、これらのデータを分析するとどのようなことが見えてくるのだろうか。