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  • 2015/04/03 掲載

多角化がわずか1ヶ月で破綻!とある雑貨卸のひとり情シスによる経営改革実録

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筆者は、数年前に大手ユーザー系SIerから中小のとある卸売業会社に転職し、誰もエンジニアがいない環境で一から会社の営業活動を支えるシステムの構築などに取り組んでいます。いわゆる「ひとり情シス」として、システムを組み上げてから約3年の間、システムを運用改善していく中で、ようやく会社全体を俯瞰できるようになり、エンジニアならではの視点で、会社の経営改革を促すことができました。ここでは、この実体験をもとに、どのようにしてエンジニアが経営を変えていくことができたのかについてご紹介します。

湯本 堅隆

湯本 堅隆

1979年生まれ。文系卒。旧アイ・ティ・フロンティア(現タタ・コンサルタンシー・サービシズ)に2003年に新卒入社。Javaプログラマ→PM→コンサルタントとキャリアを積み、特に小売・流通業界のシステムに従事。プログラム実装からIT戦略立案までを経験し、ユーザー企業のIT競争力強化のためには内製化の促進が最良だと考えるように。2009年4月より雑貨製造・卸業のエフケーコーポレーションに「ひとり情シス」として転職。社内システムの構築運用や外販のサービス開発運営に従事。
ブログ:GoTheDistance

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 筆者の所属している企業では、エプロン・かっぽう着・ルームウエアをシーズンごとにOEM生産して販売するメーカー業と、他メーカーのインテリア雑貨を仕入れて雑貨店に販売する卸売業の2つの事業を展開しています。

 販売先は雑貨を販売されている小売店です。かつて売上の比率はメーカー業が8割、卸売が2割でした。比率の差は販売数量の差です。生産枚数は春夏秋冬のシーズン毎に数万枚となりますので、年間で20万枚近い販売数になります。

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筆者の所属する企業のビジネスモデル

 OEM生産を行うことのメリットは、「爆発力」です。販売数量が雑貨の卸売より圧倒的に多いため(発注単位が大きいため)、大量生産することで原価も抑えられます。受注(予約)を取ることさえできれば、短い期間で多くの利益が出せます。デメリットは、売れ残りが発生するリスクです。シーズンが過ぎてしまうと翌年に持ち越すか、原価割れ覚悟の価格で在庫処分をしなければなりません。

 OEM生産は2社に依頼していましたが、従来はそのほとんどすべてを主要仕入先であるA社にお願いしていました。卸業という看板を掲げていますが、実態としてはA社の販社だったわけです。同業の卸業でも、仕入先が少なくとも数十社近くあるのですが、弊社はそもそも仕入先が数社しかなかったのです。

 というのも、シーズンごとに大量に販売できる商材をA社が扱っており、その商材に経営資源を投入するのが効率的で、かつ最大の利益をあげられるため、必然的に販社化していったのです。

 当時、私のIT担当としての主な仕事はコーポレートサイトの運用とOEM生産を行う季節商材の予約管理でした。年間で20万点近い販売を行うため、システムで入出庫を管理しないと在庫数の把握すら困難になります。

 昨年の実績と比べて今年はどの商品を何点生産するのか、生産数に対して何点の予約をいただいたのか、在庫として今現在で何点あるのか、どのお客さまにどのように納品すればいいのか...そのような管理を行う社内システムを開発し、運用していたわけです。

売上の柱が枯れ始めた

 順調に見えた事業ですが、3年前に大きな転機が訪れます。毎年売り切ることができていたOEM生産の季節商材が、在庫として残り始めたのです。店頭での動きが鈍くなり、予約数が2割近く減りました。突然の2割減です。前述のとおり、季節商材はシーズンを逃すと売り時を逸してしまい、来年のシーズンまで待たねばならないため、売れ残りは大きな痛手です。

 前年と同じ注文がなくなってしまったのに加えて、さらなる追い打ちに遭いました。原価の高騰です。生産元の中国工場の工賃が、中国経済のインフレに伴い、跳ね上がってしまい、その工賃の上乗せ分が仕入単価にしわ寄せされた格好です。売上は落ちているのに、仕入れ値が上がる。泣きっ面に蜂です。

 さらに困ったことに、原価の上昇に反比例して商品の質が下がりました。商品として旬が過ぎたことで成長が見込めないのに、原価は上がっていく。そして、商品の品質が下がっている。何一つ良いことがない状況でした。

 OEM依頼先のA社の販売状況も芳しくないため、事業を縮小する可能性も大いにありました。それはすなわち、弊社OEM分の生産ができなくなり商材を仕入れることができないという最悪のシナリオが、現実味を帯びてきていたのでした。

【次ページ】取扱商材の多角化に挑戦するも開始1ヶ月で破綻

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