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  • 2015/11/27 掲載

「バクマン。」が描く“売れる”という神秘的な現象は、科学的に解き明かせるか?

「バクマン。」×「韓非子」から学ぶ勝利の方法論(前編)

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実写版映画作品が公開された週刊少年ジャンプ(以下、少年ジャンプ)の人気漫画作品「バクマン。」がヒットしている。同作はその少年ジャンプの舞台裏を描き「いかにすれば売れるのか」という疑問に対する考察を、まさに漫画を通じて展開するという、異色の作品だ。この作品のなかで、主人公のライバルとして超天才的な作家が位置づけられているのは極めて象徴的である。結局のところ、ある商品が売れたという事実はどうやったって解析できるものではなく、「天才だから」という一言でしか言い表せないのだ。人間の持つ「計算する力」が、「売れる」という神秘的な現象に対してどこまで切り込むことができるのかという、一種の思考実験のようなこの作品は、あらゆるビジネスにヒントを与えてくれる。
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「どうすれば売れるのか」という疑問を実地で検証する壮大な実験

 いかにすればモノが売れるのか、とは、いかにも普遍的な問いである。

 世の中には様々な商品があり、市場を通してそれらは買い手のもとに渡っていく。市場に参加する者は、市場における「売れるもの」と「売れないもの」との間にある違いを研究し、新たな商品を投入する。それはすなわち、いかにすれば勝てるのか、ということでもある。同じ市場に参加するコンペティターとの戦いであり、同時に、移ろいやすい買い手の、需要の変化や期待値との戦いでもある。

 日用品であろうと、サービスであろうと、飲食店であろうと、芸術作品であろうと、市場が存在し、そこに参加するとういことは、それが「売れるもの」なのか「売れないもの」という峻別に巻き込まれるということを意味する。

 そして、「水もの」という言葉があるように、長い間売れなかったものが、ちょっとしたきっかけで急に売れ始めることもあれば、大ヒット商品があっという間に下火になることもある。

 この「先の読めなさ」の根本には、「変数の多さ」がある。「売れる/売れない」という現象は、「作り手、商品、市場、買い手」という四つの存在によって構成されるシステムの結果である。商品の特性や特長が、そのまま結果に結びつくのならば、これほどわかりやすい話はないが、実際のところは、その商品を市場に投入するタイミング、買い手の嗜好の変化、その時の経済情勢、どの流通チャネルを選択するか、誰かがメディアで取り上げる、といった偶発的なことも含め、ありとあらゆることが「売れる/売れない」という結果に作用するのである。

 結果を見てあれやこれやと後追い分析するものの、その推論がどれだけ妥当なものなのか、実際のところは誰にもよくわからないのであった。

少年ジャンプの異色作「バクマン。」とは? 

 「いかにすれば売れるのか」という疑問を実地で検証する、あたかも壮大な実験場のような存在として機能しているものとして、週刊少年ジャンプ(以下、少年ジャンプ)という漫画雑誌がある。

 200万を超える読者に対して、才能ある作家が次々とその作品を問い、情け容赦なく淘汰されていく少年ジャンプ。その作品の掲載を継続するかどうかの判断が、読者による人気アンケートによってなされるということは有名な話だ。少年ジャンプという場に参加する作り手、買い手に与えられる機会は、基本的には平等であり、「不確実な外部要因に左右されにくい」という意味で、世にある様々なマーケットのなかでも極めて純粋なマーケット性を備えた場である。

 さきごろ実写版映画作品が公開された「バクマン。」とは、その少年ジャンプの舞台裏を描き「いかにすれば売れるのか」という疑問に対する考察を、まさに漫画を通じて展開するという、異色の作品である。

 物語の主軸は、少年ジャンプを舞台に繰り広げられる、若者達の作品アンケートレースである。「秀才型の作家が戦略的・計算的に構築した作品が、天性のセンスを持つ作家が描く王道のバトル漫画に勝つことができるか」というあらすじで、様々な作品をぶつけ合いながら切磋琢磨しあう、群像劇のような形式をとっている。

 主人公は、「亜城木夢叶」というペンネームで漫画を制作する若者二人組だ。原作担当の「高木秋人」と、作画担当の「真城最高」で力を合わせて、「ジャンプでNo.1をとってアニメ化を実現する」という目標に向って突き進む。そのライバルが、同年代にして、主人公に先んじて、天才的な才能によって華々しいデビューを飾っていた「新妻エイジ」である。

 主人公の二人は、高い素質を持ってはいるが、天賦の才能を与えられた選ばれし者、というわけではない。

【次ページ】モノが売れるのは博打なのか?を問う「バクマン。」
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