• 会員限定
  • 2016/01/19 掲載

マッキンゼーの「7S」と孫子の「五字七計」を比較 古典からビジネスを読むポイント

現代のビジネスに「孫子の兵法」を活かす(前編)

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
数多くの経営指南書において指摘されているとおり、孫子兵法は現代における企業経営にあてはめることが可能である。しかし問題は、これが直感に馴染み過ぎて、細かい部分の検討をせぬまま飲み込まれてしまいがちである、ということだ。あえて細部にこだわって読み進めることによって、その精神や骨法に迫らなければ、皮相的な理解に留まってしまい、「生兵法は大怪我のもと」にもなりかねない。今回は、現代のビジネスに「孫子の兵法」を活かすための方法を前・中・後編にわたって考えてみたい。

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

プロジェクト進行支援家 後藤洋平

予定通りに進まないプロジェクトを“前に”進めるための理論「プロジェクト工学」提唱者。HRビジネス向けSaaSのカスタマーサクセスに取り組むかたわら、オピニオン発信、ワークショップ、セミナー等の活動を精力的に行っている。大小あわせて100を超えるプロジェクトの経験を踏まえつつ、設計学、軍事学、認知科学、マネジメント理論などさまざまな学問領域を参照し、研鑽を積んでいる。自らに課しているミッションは「世界で一番わかりやすくて、実際に使えるプロジェクト推進フレームワーク」を構築すること。 1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創成学科卒。最新著書「予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)」が好評発売中。 プロフィール:https://peraichi.com/landing_pages/view/yoheigoto

photo

人々は孫子の何に痺れ、憧れてきたのか

 「五事七計によって敵国と自国を比較すると、実際に戦わなくても勝敗を予言することができる」という内容は、少し孫子をかじったことのある人であれば、誰もが聞いたことがある話である。

 孫子といえば、いかなる解説書でも必ず冒頭で取り上げるのが「五事七計」だ。孫子を解説する書のなかで、これを取り上げないものは存在しない。また、これの解説を後回しにするものも見たことがない。

 孫子曰く、兵とは国の大事なり、死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり。ゆえにこれを経るに五事をもってし、これを校ぶるに計をもってして、その情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。

(計篇)

 これこそ名著「孫子」の冒頭である。戦争とは、国の存亡にかかわる一大事なので、「道、天、地、将、法」の五つによって分析をしなければならない、ということが語られる。

 すべての解説書が「五事七計」を必ず最初に取り上げるのは、ただこれが原文の冒頭にあるからというだけではない。これぞまさしく「ザ・孫子・オブ・孫子」といってもいいような、この思想の骨格を成しているということこそが、あらゆる解説書でこれが最初に取り上げられる真の理由である。

 第一のポイントは、「フレームワークによって考えよ」という発想を提供しているという点だ。

 「道、天、地、将、法」によって国を分析せよ、というこの発想、マーケティング用語の「3つのC」や経営分析用語の「7つのS」を髣髴とさせないだろうか。

photo
マッキンゼーの「7S」と孫子の「五字七計」を比較した場合、その違いと共通点はどこにあるのか?

 髣髴とさせるどころか、「現実のなかから物事を抽象化させて、一般的に通用するものの見方を見出す」という意味において、今日の国家運営、企業経営において繰り広げられている思考の方法とこれは、まったく違いがない。二千五百も前の時代に書かれた書物のなかに、こうした内容を見出した瞬間、その新鮮さに驚くのである。

 もうひとつのポイントは、「実際に戦わなくても勝敗を予言することができる」というところである。これぞ頭脳派、計算派の面目躍如たる言葉だ。このフレーズが意味するものとは、思考の勝利、マネジメントの勝利である。歴史上の孫子愛読者はそこに痺れ、憧れてきたのである。

【次ページ】安易な「孫子=MBA経営学論」に意味はなし

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます