- 2025/08/10 掲載
元キーエンス田尻氏が詳解、売上2倍の地方旅館「成功」再現にIT企業が挑んだ結果は…
京都市出身。大阪大学基礎工学部卒業後、株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニア、国内外の販売促進技術として従事。2017年の創業以来、企業の高収益・高賃金を同時に実現する独自メソッドを開発し、マーケットイン型経営実現のための付加価値戦略コンサルティングおよび人財育成事業を展開。またエンジニアとコンサルタントの両面から付加価値に繋がる生成AI活用の仕組みを伝えている。価値訴求によるシェアアップ施策で売上30億円、利益ベース10億円のプロジェクトを3カ月で推進。GMOブランドセキュリティ社などプライム上場企業8社以上とともに価値を生み出す構造化に徹底的に取り組み、資本主義と人主義を掛け合わせた価値主義の浸透を目指している。日経、プレジデント、NewsPicksなどメディアに出演、Forbes JAPANから世界の96賢人として選出。著書に10万部超『付加価値のつくりかた』など。
部下から相次ぐネガティブな声…そこから生まれた視点
ここでは、外部の付加価値を自社で再現するプロセスを仕組み化する方法を、あるIT企業の成功事例をもとに解説する。IT企業のリーダーKさんは部下たちに、地方のリゾート旅館が客単価を大幅に上げて成功した事例を共有した。具体的には、「温泉旅館なのに、チェックイン後すぐ“農業体験”を楽しませ、そこから戻ったら囲炉裏端で囲む夕食。翌朝は地域の伝統工芸をプチ体験させる……。その結果、単なる宿泊費にプラスして体験料金をとりつつ、リピーターが増え、売上を2倍にした」という事例だ。
Kさんは、「うちの企業でも“体験型”を取り入れれば、付加価値を高められるんじゃないか?」と興奮を隠せない。しかし、部下からは次のようなネガティブな声が相次いだ。
「旅館とITサービスじゃまったく違うし、農業体験なんて関係ないでしょう」
「人件費や準備コストがかかるわりに利益出ないかも……」
案は立ち消えになりそうだったが、Kさんは「せっかく面白い事例なんだ。成功要因を分解すれば、自社でも使える部分があるかもしれない」とチームを説得した。ここから、付加価値の「再現」という視点が生まれる。
細かく分解することで“成功要因”が浮き彫りに
旅館の成功背景を単なる“農業体験”として見てしまうと、すぐに「真似できない」となる。しかし、もう少し要素を細かく分析すると、次のような構造が浮き彫りになってくる。(1)豊富な自然資源
- 旅館の周囲に広がる田畑や山々、そこから得られる新鮮な食材や絶景
- 「非日常感」を味わえるロケーションがある
(2)農家と旅館の協力体制
- 観光客向けに体験コースを提供することで、地域の農家の新たな収益源になる
- 旅館は宿泊者に“ここだけの体験”を保証し、顧客満足度を上げる
(3)観光資源の相互補完
- 農業体験が終わったら温泉へ…… という動線が「1日のスケジュール」を濃密に演出
- その結果、滞在時間が延び、追加料金(体験費、特産品販売)を収益化できる
(1)複数の“体験メニュー”の設定
- 農業体験(夕刻)、囲炉裏端での夕食、翌朝の伝統工芸体験など
- 1泊2日の中に“複数のアクティビティ”をちりばめることで飽きさせない
(2)顧客自身が「つくる・触れる・感じる」
- 単なる“宿泊”ではなく、五感を刺激する非日常の行動
- その結果、顧客が「また来たい」と思う記憶を形成
(3)“滞在時間”が増え、追加収益チャンスも増える
- 体験費用、体験後の商品の購入、地元食材のお土産販売など
- 滞在中に収益ポイントを複数設けることで客単価が上がる
(1)ビジュアルインパクト
- 農作業の様子や囲炉裏、伝統工芸品の写真がSNS映えしやすい
- 顧客が自主的に撮影・投稿してくれる可能性が高い
(2)共有しやすい“ストーリー”
- 「今日は畑で野菜を収穫して夕食に使った」「翌朝は地元の工芸を体験」といった物語性
- 人々がSNSで発信する際、「#農業体験」「#地方旅」などのハッシュタグで興味を惹く
(3)口コミ拡大と新規客獲得
- 見るだけでも楽しそう → 自分も行ってみたい
- 効果的なSNS戦略を伴えば、広告費を抑えつつ大きな露出を得られる
つまり、この旅館が「付加価値」を高められた要素は次の3つに集約される。
- 非日常ロケーション×地元資源活用(A)
- 体験による長時間滞在&複数収益(B)
- SNS拡散を前提にしたビジュアル設計(C)
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