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  • 2016/07/16

九州の出版社版リアル「重版出来!」 芥川賞候補作品編集者の仕事の流儀とは

6月20日、第155回芥川賞の候補作が発表された。その中には、今村 夏子さんの「あひる」があった。同賞の結果は7月19日に発表される。「あひる」は福岡市の出版社、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)が発行した文学ムック「たべるのがおそい」創刊号に掲載されたもので、その担当編集者が田島安江さんだ。「たべるのがおそい」はすでに重版済み。三刷も間近だという。人気作を生み出す原動力はどこにあるのか? 出版不況と言われる中、精力的に本を作り続け、九州の文芸誌では20年ぶりとなる芥川賞候補作品「あひる」を世に出した田島さんに聞いた。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

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芥川賞候補作品「あひる」を世に出した田島さんの仕事の流儀とは?

著者との出会いを大切にする

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「たべるのがおそい vol.1」
 「たべるのがおそい」は小説、翻訳、短歌を中心にした文学ムック。16人の作家が寄稿し、幅広いジャンルで作品を発表している。

 さまざまな本を出版してきた田島さんは、なかでも文芸誌をいつか、と考えてきた。自らも詩人でもある田島さんが詩集や歌集を発行するなかでの翻訳家・西崎憲(にしざきけん)さんとの出会いが今回の「たべるのがおそい」発刊につながり、今村夏子さんの「あひる」の寄稿にも恵まれた。

 執筆者の1人であり編集長でもある西崎さんは「わたしたちは誰もが重力というものに支配されています。『たべるのがおそい』は、その重力を少し弱めてみたいと思っています。読んでいるあいだ、少し動きやすく、歩きやすい、それがこの一風変わったタイトルの文学誌の目標です」とコメントを寄せている。

 田島さんは「私は本が大好きですから、家にも会社にも本が溢れています。本好きが高じて出版社を作ったようなものですが、文芸誌を作ることは夢のようなものでした」と胸中を語る。

 では、本を売るための戦略はどこにあるのだろうか。

出したい本を売れる本にする戦略

 小説や詩集などが売れない時代に、あえて文芸誌を出版する意図とは。

 「たべるのがおそい」は初版3000部のムック本。ムック本とは、形式は雑誌だが、定期的な刊行を前提としてはいない刊行物を指す。

 ムック本である「たべるのがおそい」には雑誌コードではなく、書籍コードが付され、基本的に一般書籍と同じ要領で作られる。書籍と違うのは、執筆者への報酬が印税ではなく、原稿料の形をとる点だ。そのため、初版コストが高くなるが、雑誌の作りと同じにすることで、文芸誌らしい体裁になり、再版コストは下がるのだという。

 出版に踏み切ったのは「新しい切り口だからやる価値がある」との決断からだという。ところが、この挑戦ともとれる決断から、重版になるケースは少なくない。

【次ページ】本を作り、本を売る流儀

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