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  • 2016/10/18 掲載

研究技術・機器のシェアリングサービスに、新規事業の「アイデア検証」を学ぶ

第2回「MVPアワード」結果発表

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社会課題を解決するアイデア事業化コンテスト「第2回MVPアワード」。同アワードでは、プロダクトやサービスの品質以上に、アイデアの「検証」に重点を置いた評価基準を設けている点が特徴的だ。9月14日に行われた最終審査に選出されたチームのプレゼンでは研究技術・機器のシェアリングサービスやモノづくりプラットフォーム、ゲーミフィケーションを取り入れた地域活性アプリといった多様なアイデアが発表された。
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社会課題を解決するアイデアの仮説検証プロセスを学ぶ

研究機器・技術シェアリングサービスのランディングページが話題に

 SBメディアホールディングスおよびギルドワークス主催の「第2回MVPアワード」。完璧なプロダクトの開発ではなく、対象とする課題やニーズに対する検証度、今後の発展可能性などが審査のポイントとなる同アワードで最優秀賞に選ばれたのは、古谷優貴氏と大橋弘宣氏のチームCQのアイデアだ。

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 古谷氏は総合化学メーカーで、材料系のR&Dや新規事業の立ち上げに従事している人物だ。同氏は今回、アイデアコンペで知り合った大橋弘宣 氏とともに、自身の研究活動を通じて感じていた問題点を解決すべく、MVPアワードに応募した。

 同チームが提案したのは、研究機器・技術シェアリングサービスの「CO-LABO MAKER」だ。

 いまやメーカーは自社だけで研究開発していてはグローバルでの競争に勝てない時代だ。そこで、リソースを持つ人と研究した人が知り合い、お互いの強みを組み合わせたオープンイノベーションが求められている。CO-LABO MAKERは、研究機器を持つ研究室や組織に登録してもらい、研究機器の提供者と、それを使いたいユーザーを、Web上でマッチングさせる。マッチングと手続き代行を行うことで得られる取引手数料や付加サービスでマネタイズするというサービスだ。

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CO-LABO MAKERは、実験機器・技術を持つ人とやりたいことがある人が巡りあい、お互いを活かし合うことを目指したプラットフォームだ

「これまでの経験では、研究室によって技術があってもコラボが苦手だったり、研究機器を持っていても人手が足りなかったり、研究をしたくても予算がなくて高価な装置を買えないこともあった。その一方で、企業の中では遊休の設備があったり、お蔵入りになった技術も多いのが実情だ」(古谷氏)

 マッチングによって、予算の少ない研究室や個人でも未所有の研究機器を使える機会が増やせる。一方で機器を貸す側は、余っている機器や設備の稼働率を上げ、収益が得られる。

 さらに同氏は研究者ならでは視点から「高価な機器を購入すると、その機器を使うことに固執し、幅の狭い研究に陥りがちになる。研究機器を貸せば、研究者間で頻繁にコミュニケーションが起きて、よりイノベーションが起こりやすい社会を築ける」と、機器シェアリングのメリットを強調した。

 このようなサービスは日本のマーケットでは未成熟だが、米国では類似のサービスが育ちつつある。例えばScience Exchangeは、約33億円を調達し、2015年には500%超えの成長を遂げており、ひと月で1億円の取引を行う顧客もあるという。

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最優秀賞を受賞したチームCQの古谷優貴 氏
 同氏は今回、このサービスのニーズがあるかを検証するためにCO-LABO MAKERのランディングページをつくった。SNSやWebサービスでランディングページを拡散したところ評判が高まり、なんと月刊「事業構想」のモノづくりプラットフォーム5選のトップに掲載されたそうだ。予想以上に反響があったため、正式版リリースに向けて、段階的に開発を進めているところだ。

 最優秀賞を受賞し賞金100万円が授与された古谷氏は「まさか最優秀賞するとは思っていなかったが、いろいろな偶然が重なって、ここまでやって来れた。全力でアイデアを形にして、世界や社会を変えるサービスに育てたい」と意気込みを語った。

デジタル造形技術を活用し、オンリーワン製品を届ける「Monovation」

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デジタル造形技術で「あなただけのモノ」を提供する「Monovation」を提案した竹内国貴 氏
 優秀賞を獲得したのは、Monovationの竹内国貴 氏だ。同氏は京都大学時代の友人とDMM.make AKIBAに入居し、3Dプリンターなどのデジタル造形技術を活用した「Monovation」の設立に向けて準備を進めている。

 同氏の構想は、誰かに自慢したくなるような「あなただけのモノ」を提供すること。新興国の台頭によって、活力を失った製造業の課題を解決するとともに、テクノロジーで身の周りの「Mono」(唯一)を世に届けることをビジョンに掲げている。

 竹内氏は「世の中には量産品があふれているが、アンケートでは85%の人が個性的なオリジナル品を求めている。また、モノづくりしたい人の中には、どこでつくればよいのか分からないという人が半数もいる」と説明する。

 具体的な事業としては、3Dプリンターなどを備えた工房兼ショップの「Mono Salon」と、クリエイターとユーザーをつなげるプラットフォーム「Mono Connect」を計画中だ。

 Mono Salonは「形に出会う」をコンセプトに設計・製造・販売を一気通貫で行う。「フィギュアなどのフルオーダーから、オンラインで文字・イラストを入力して製品をつくるセミオーダー、パートナーの斬新なデザインを提供するデザイナーズ、顧客持込み品を加工するオーダー加工を用意する」(竹内氏)。

 一方、Mono Connectでは「形をつなぐ」をコンセプトに、自分のオリジナル製品が欲しいユーザーと、実際にそれをつくれるデザイナーや3Dプリンター所有者をマッチングさせる設計・製造プラットフォームを提供し、設計・製造のクラウドソーシングを行う。

「つくりたいイメージはあるがデザインがないユーザーのためのオーダーデザイン、CAD図面はあるがモノをつくれないユーザー向けの造形サービス、デザインから造形までワンストップで提供するサービスを用意する。顧客から注文を受けたら、パートナーが価格・納期などを入札し、我々がパートナー情報などを提供する。それを見て顧客がパートナーを選択するという流れだ」(竹内氏)

 すでに同様のサービスも存在するが、フルオーダーからセミオーダーまで何でも手軽に対応できる点や、デザインや3Dプリンターの特化型クラウドソーシングでユニークなポジションを確立できる点がメリットだ。同氏は「1年目にECサイト、2年目に実店舗を展開し、3年目に4万人の顧客獲得を目指す。検索することを『ググる』というように、オーダーメイドすることを『モノる』と呼ばれる存在になりたい」とアピールした。

【次ページ】ゲーミフィケーションで町中が助け合う「まちかどギルド」

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