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  • 2016/10/28 掲載

UberEATSのビジネスモデル:東京は「フードデリバリー」がタクシーより普及する?

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2016年9月、世界的な配車サービスUberによって開発された出前(フードデリバリー)サービス「UberEATS」が東京でもサービスを開始しました。配達を行うのはレストランやUberの従業員ではなく、スキマ時間で収入を得たい個人です。配車サービスと同様に、個人レベルで物流を最適化する手法で新たなフードデリバリーのビジネスモデルを構築しました。40以上の都市に展開されたUberEATSですが、都市によって、順調に成長を上げる場合と軌道修正を余儀なくされているケースが存在しています。フードデリバリーが流行る都市とそうでない都市には、どのような違いがあるのでしょうか。

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

執筆:在スペイン コンサルタント 佐藤 隆之

Mint Labs製品開発部長。1981年栃木県生まれ。2006年東京大学大学院工学系研究科修了。日本アイ・ビー・エムにてITコンサルタント及びソフトウェア開発者として勤務した後、ESADE Business SchoolにてMBA(経営学修士)を取得。現在は、スペイン・バルセロナにある医療系ベンチャー企業の経営管理・製品開発を行うとともに、IT・経営・社会貢献にまたがる課題に係るコンサルティング活動を実施。Twitterアカウントは@takayukisato624。ビジネスモデルや海外での働き方に関するブログ「CTO for good」を運営。

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東京でもサービスが開始された「UberEATS」は流行るのか?


「UberEATS」はレストラン、配達員、ユーザーをマッチング

 配車サービスで世界展開を続けるUberは、手軽に移動したい人と、車と時間を持て余す個人をマッチングし「Win-Win」の関係を築きます。Uberが次に進出した分野は「出前」。お腹を空かしたユーザー、すきま時間にお金を稼ぎたい配達員、そして、低コストで宅配事業を始めたいレストランが持つ三者のニーズを同時に満たすビジネスモデルです。

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スライド一枚で分かる「UberEATS」のビジネスモデル

 UberEATSは世界42の都市に展開されてきました。米国の都市が中心ですが、欧州(ロンドン・パリ・アムステルダム)、オーストラリア、アジア(ドバイ、シンガポール)、南アフリカでも事業を行っています。9月に東京でもサービスが開始されましたが、今後の進出先としてベルギー、スウェーデン、香港、台湾、インドネシア、タイ等が挙げられています。

 UberEATSのアプリを導入したユーザーは、その都市の主要なレストランが提供するメニューの中から、食べたいものを選択します。数十分のうちに配達されるスピードの速さがUberEATSの特長です。配車サービスと同様に決済がアプリ内で完結するので、支払いの手間がかかりません。

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UberEATSのアプリ画面。料理を注文すると、配達にかかる時間やステータスが一目で分かる
 配達を行うのは従業員ではなく、業務委託される個人です。Uberへ登録・本人確認を行った配達員が、Uberのシステムによってマッチングされ、宅配の仕事が割り振られます。自転車や原付きバイクを使用し、Uberから貸し出された配達用バッグに料理を積め、レストランからユーザーへの配達を担当します。雇用という形態をとらず、すきま時間で収入を得られるのが配達員のメリットです。

 UberEATSでは、これまで出前を行っていなかったレストランが多く登録されています。レストランが出前を行うには、需要予測に合わせた配達員の雇用が必須になりますが、UberEATSを使えば、自社で配達員を抱えるわけではないので、人件費の最適化が可能です。新たな販売チャネルの追加によって、利益の向上が見込めます。

 Uberの仕組みはユーザーによる評価がポイントです。配車サービスで運転手の評価が登録されていたように、UberEATSでは配達員の評価が登録されます。さらに、UberEATSの場合、注文された料理ごとに人気の度合いが記録されていくと見られています。食べログやイェルプのようなレビューサイトでは店舗ごとに評価されていたのに対し、UberEATSでは料理ごとの人気度が分かるため、Uberはより詳細なマーケット情報を手にし、サービス改善に応用できるのです。

配車に向かない都市だからこそフードデリバリーが流行る?

 Uberのビジネスモデルは、狭義の「配車サービス」と見るか、広義の「マッチングサービス」と見るかで大きく状況が異なります。

 配車サービスに関しては、米国で普及が進む一方で、他の都市ではタクシー業界の壁を打ち破れないままです。Uberが受け入られる条件として、公共交通機関が発達していない、タクシーのサービスに不満がある、自家用車で乗客を運ぶ「白タク」規制の緩和が進まないなどの理由から、東京や欧州の各都市ではUberの普及が進んでいないのが現状です。

 しかし、食べ物を運ぶ出前は、日本の都市でも古くから既存サービスとして普及していますので、強い規制はありません。配車のシステムをUberEATSで横展開し、ユーザーを増やしていくのがUberの戦略と言えるでしょう。

 モルガンスタンレーの調査によれば、オンラインでのフードデリバリー事業は2100億ドルもの潜在的な市場規模があるとされています。これまでは宅配の6割をピザが占めていたものの、今後はそれ以外の食事が増加していく見込みです。UberEATSのように手軽にレストランの味が楽しめる仕組みの登場によって、オンラインで出前を頼む習慣が増えていくかもしれません。

 市場の拡大は激しい競争を意味します。UberEATSが参入した各国では、すでにオンラインでの宅配を行う競合企業がサービスを開始しました。米国では「Postmates(ポストメイツ)」や「DoorDash(ドアダッシュ)」といったスタートアップが有名になり、また、「Caviar」は企業向けの宅配など充実したサービスを揃えます。欧州ではイギリスの「Deliveroo」、「JustEat」、「Delivery Hero」、オランダの「Takeaway.com」などがあり、ドイツ(ベルリン)で創業されたFoodpandaはアジアを含む43か国で展開されています。

 Uberにとっての最も大きな競合相手としてはアマゾンが挙げられます。米国12都市や欧州にある大都市での提供に限られていますが、アマゾンの物流に関するノウハウを考えると、UberEATSにとっては無視できない存在です。ロンドンではピザのチェーン店からミシュランガイドから星を獲得した高級レストランまでがアマゾンの配送対象となりました。

【次ページ】都市によって成否が分かれるフードデリバリーサービス

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