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  • 2016/12/07 掲載

マーケティングに「脳科学」が進出、価格も脳の反応で決定-ノースウェスタン大教授

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近年、マーケティング分野での活用が進展しているのが「脳科学(ニューロサイエンス)」だ。ニューロサイエンスとビジネスを専門とするノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院のモーラン・サーフ教授は、「過去10年間、脳の反応を見てきて、人々の欲求や価値観、購買行動がより詳しく分かるようになってきた。ニューロサイエンスがマーケティングにおいて果たすことのできる役割は小さくない」と説明する。
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脳科学を用いれば、本人も認識できていなかったようなことがわかるようになる

脳を見ることで、質問してもわからない好みや行動が分かる

 かつてマーケティングに経済学が入ってきたが、今ではニューロサイエンスが、神経のメカニズムから人々の行動を分析するようになってきた。また、その情報解釈の解像度も非常に高まってきている。

 脳の反応を見ることで、従来、人々に質問したり、アンケートを取ったりするだけでは分からなかったことが分かるようになる。それだけでなく、脳の反応によって、未来の行動予測までが立てられるようになった。

 「ワールドマーケティングサミットジャパン 2016」に登壇したサーフ教授は、「脳内の化学物質が脳の神経回路を変えていくことで、我々の行動をつかさどっている。そこを見ていけば、人間の行動が分かるということを私は提案したい」と語る。

 これまでマーケティングは、統計学や行動学など、さまざまな手法を使って、人々の価値観や購買行動を見極めようとしてきた。その新たな手法の選択肢として挙げられるのが脳科学というわけだ。

「例えば人々の視点がどこに行くかを見ることで、彼らに質問をしなくても何が一番興味をそそられているのか、ひいては何が売れるのかが分かるようになった。あるいは、さまざまなデザインを見せて脳の反応を見ることで、どのようなデザインがより好まれるのかがわかる。さらには商品の価格を少しずつ変えながら反応を見ていくことで、価格設定の最適化もできるようになった。脳の反応をデータとして収集し、マーケティングに活用する。いわばデータドリブンマーケティングの世界だ。これらはわずかな例に過ぎず、さまざまな領域で新たなテクノロジーが古い手法を置き換え始めている」

脳科学により今までとは違ったアプローチを採ることができる

 例えばハリウッドの映画業界では、FGI(Focus Group Interview)ではなく、映画を見ている人の脳の反応を見ながらカット割りを変えたり、CMの作り方を変えたりしているという。自動車メーカーが車のデザインを変えていく時も同様だ。

「また味覚や嗅覚も、脳の記憶の〝タグ”として非常に重要な役割を果たしている。つまり、味覚や嗅覚によって、カスタマーエクスペリエンスも大きく変わってくる」

 現在ではますます多くの業界が人間理解を深めるために、脳科学をツールとして活用し始めているという。

「過去1年間に私は多くの企業からアプローチされたが、その多くがグーグルやGMなどの大手企業だ。彼らは予算を割いて、新しい手法を試してみたいと考えている。多くのニューロサイエンティストが、マーケティング領域に足を踏み入れている」

 ただし「古いやり方が役に立たないということではない」とサーフ教授は続ける。

「セグメントやターゲティング、ポジショニングといったこれまでのマーケティングの枠組みは、意味を持ち続ける。私が提案しているのは、次に何をするかを考える時に、脳科学といった新たなテクノロジーを使うことで、今までとは違ったアプローチが採れるのではないかということだ。企業側がコントロールしているつもりになっていても、できていないことが多々ある。だからこそ、マーケティングにおいてニューロサイエンスが果たすことのできる役割は、決して小さくないと考えている」

【次ページ】「応答弾力性」でリソースの最適な配置が可能になる

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