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  • 2017/01/06

トヨタ直営販売店のIT戦略、なぜ「クルマの納期遵守」から「デジマ」にまで至ったのか

トヨタというと、昨今は人工知能や自動運転ばかりが注目されるが、足元の自動車販売店でも「カイゼン」は続いている。中でもITによる業務革新(BPM)を推進しているのが、東京地区で販社6社を統括するトヨタアドミニスタグループの情報システム会社、トヨテックだ。同社は納期遵守の仕組みづくりや営業の情報共有基盤を構築、今は顧客を呼び込むためのデジタルマーケティングにも取り組んでいる。トヨテックの森敏雄社長がその取り組みの変遷と詳細を明かした。

執筆:レッドオウル 西山 毅

執筆:レッドオウル 西山 毅

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

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クルマの販売店もIT化に取り組んでいる
(※この写真はイメージです。© Kzenon – Fotolia)

統合物流システムで顧客の配送希望日を担保する

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トヨテック 代表取締役社長 森 敏雄 氏
 トヨタは東京地区に東京トヨタ自動車や東京トヨペットなど、6社の販売会社を設置しているが、これら販社を統括するのが2000年に設立されたトヨタアドミニスタだ。この中で情報システム会社として、新車/中古車の販売業務やバックヤード業務などのプロセス改革を担っているのがトヨテックだ。「第11回 BPMフォーラム 2016」で登壇したトヨテック 代表取締役社長の森敏雄氏は、自社の位置付について次のように説明する。

「東京地区におけるトヨタのプレゼンスを上げるために誕生したのが、ホールディングスカンパニーであるトヨタアドミニスタだ。その傘下には6つの販社があるが、各社のIT部門についても集約したほうが効率がいい。そこで既に1981年から活動しているのがトヨテックだ」

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トヨタアドミニスタグループの概要

 今回トヨテックは、業務の標準化/視える化を図り、顧客に納期を約束する仕組みを構築したが、それを可能にしたのが、1990年から各販社の物流業務を順次、物流会社のトヨタメトロジックに集約してきた取り組みだ。

「それまで販社ごとにやっていた新車点検やカーナビ取り付けなどの納車準備、下取りした中古車の再商品化をトヨタメトロジックに集約していった。また異なる販社が併設されている店舗もあるが、バックヤードではサービスメカニックのサービスを共有化し、さらには新車配送のプロセスも統合した。こうした物流の集約によって、お客さまが希望される日に配送するための下地が整った」

 トヨテックでは、NTTデータ イントラマートの提供する「intra-mart Accel Platform」を共通基盤として、この上に統合物流システムやU-Car統合システムなどからなる基幹系システムと、営業ワークフローなどの情報共有系システムを構築、統合データベースによる情報の一元化も実現した。このデータベースには、各販社が顧客と対面した際の業務情報も含まれており、Webプロモーションを行うための仕組みとも連携する。これがトヨテックが構築したトヨタアドミニスタグループのシステムの全体像だ。

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トヨタアドミニスタグループのシステムの全体像

「この中の基幹系システムに含まれる統合物流システムが、まさにトヨタのジャストインタイムを実現するものだ。これがai21(オールトヨタ販売店システム)と連携する。ai21から入ってきたお客さまの配送希望日を統合物流システムが担保し、その情報が改めてai21を介してお客さまに届くという流れだ」

 ai21は東京地区だけでなく、日本全国の系列販売店が利用する統合型の業務システムで、商談や受注の管理から、点検や整備の案内/受付、さらには財務会計/人事給与までを幅広くカバーするものだ。現在約300社の販社が利用している。

 また統合物流システムは、車両配送システムや新点工場システムなどから構成されるもので、まず車両配送システムがai21から配送希望日を抜き出し、その日付をKeyとする全体の配送計画を立てる。

 次にその配送計画を受け取った新点工場システムが作業計画を立案すると同時に必要なカー用品の発注指示や車両搬入指示を行い、実際の作業と点検が行われた後、物流協力会社が実際の配送を担当する。

 この一連のプロセスはインタフェースを介してai21にも開示され、販売店はその情報を見ることで、顧客に納期を確約することが可能となる。

「各販社からの注文情報を集約し、統合物流システムによって配送プロセスの標準化と視える化を実現したことで、グループ全体としてお客さまに納期をお約束することができるようになった」

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物流システムの全体図

営業のメモをデータベース化、サービス標準化と情報共有を実現

 こうしてITインフラの標準化と業務プロセスの視える化を実現したトヨタアドミニスタグループだが、標準化/視える化の対象はシステムだけでなく、営業のワークフローもその対象の候補として挙がっていた。そこで次にトヨテックが目指したのが、営業スタッフのメモを会社レベルで共有、活用できるようにデータベース化することだった。

「各販社の営業スタッフが個々にメモしている情報やルール、ノウハウを組織全体の管理項目にしようということで、営業スタッフのワークフロー作りに着手した。しかしその際、営業スタッフの人たちが取っているメモをデータベース化するといっても、現場の人たちはピンとこない。それよりもお客さまに喜んでいだたくため、顧客サービスの向上を図るためというほうが分かりやすい。そこで新たに構築するシステムを、来店から退店までのおもてなしシステムと名付けた」

 具体的には、顧客情報と紐付けて接客中にやり取りした内容をすべて記録して、フリーコメントも付けてデータベース化し、それを店舗内の全スタッフで共有できる仕組みを作った。

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営業スタッフの「メモ」をデータベース化

「販社ではお客さまに事前予約してからご来店いただくように案内しているが、事前の予約情報を、店長も含めて店舗内の全員で共有できていれば、ご来店時に手の空いているスタッフが迅速に対応することができる。あのお客さまは自分の担当ではないから応対しなくてもいいということもなくなる」

 データベース化される情報としては、何月何日にどの顧客がどんな用件で来店したのか、最初に挨拶したのが何時何分で、どこのテーブルに案内して、提供したのはコーヒーか紅茶か、また何杯飲まれたのか、JAFの会員かなど、多岐にわたる。

 また最後にはフリーコメント欄があり、スタッドレスタイヤにするかどうか迷っているとか、次の来店予約にまでは至っていないが、新発売されたモデルに関心を持っているなど、本来なら相対したスタッフの頭の中にしか残らない情報も、組織全体の情報として共有できるようにした。

 「お客さまに関する情報を全て集約して全員で共有することで、店舗業務を高い品質で標準化することが可能となる。それは高品質なサービスの提供にもつながっていく。まさに、おもてなしのためのシステムだ」

【次ページ】なぜデジタルマーケティングに取り組んだのか

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