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  • 2017/04/10

アマゾンキャッシュ(Amazon Cash)が「小売の王」攻略に必須だった理由

ECの巨人アマゾンが、アマゾンキャッシュ(Amazon Cash)をはじめとした低所得者をターゲットとした複数のサービスを開始した。アマゾンキャッシュ自体は決して目新しいサービスではないが、その取り組みを慎重に見ていくと、実は大きな狙いが透けて見える。小売からビデオストリーミング、自動運転、ドローン、宇宙航空産業、そして金融業にまで手を広げるアマゾンの野望とは?

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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アマゾンが4月3日から開始したアマゾンキャッシュ(Amazon Cash)には明確な狙いがある

アマゾンが「銀行ビジネス」を手がける理由

 アマゾンが4月3日、アマゾンキャッシュ(Amazon Cash)の導入を発表した。通常、アマゾンで買い物をするためにはAmazon.com上でアカウントを作成し、銀行口座あるいはクレジットカード番号を登録して、そこから自動引き落としを申請する必要がある。これを省き、小売店舗でアマゾン口座に現金で入金、それによりEC上で買い物ができる、というものだ。

 米国ではおよそ27%の世帯が「銀行口座を持たない」「口座は持つが銀行以外の金融機関のサービスを受けている」というカテゴリーに入る。

 口座を持たない世帯は2015年で900万世帯で全体の7%、アンダーバンク、と呼ばれる銀行以外の金融サービスを受ける世帯は2450万世帯、19.9%にも上る(2015年調査)。アンダーバンクが使用する金融サービスとはマネーオーダー、小切手の現金換金、国際送金、消費者金融、その他のローンサービスを指す。

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米国における銀行口座利用状況
(出典:FDIC Natinal Survey of Unbanked and Underbanked Households 2015,Federal Deposit Insurance Corporation)



米国では銀行口座に維持費がかかる

 FDIC(米連邦預金保険公社)の調査によると、銀行口座を持たない理由として最も多いのが「口座を維持する十分な資金がない」で、以下「銀行にプライバシーを知られたくない」「銀行を信用しない」「口座の諸費用が高すぎる」などが続く。

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銀行口座を持たない理由
(出典:FDIC Natinal Survey of Unbanked and Underbanked Households 2015,Federal Deposit Insurance Corporation)



 米国の銀行はオンラインバンキングを除いては月々の口座維持費がかかり、これを防ぐには当座預金で日々の平均残高が1500ドル以上、あるいは貯蓄などの合計で5000ドル以上、給与の直接振り込みなどが要求される。この水準を下回ると20ドル程度の口座維持費が引かれる上に、残高がマイナスになると罰金も課せられる。

 口座を持たない層は米のクレジット履歴がつかないため、当然クレジットカードも申請できない。その率は実に75.7%にも及ぶ。アンダーバンクの場合、銀行口座を持つ理由の第一が「デビット機能付きキャッシュカードを持つことでクレジット履歴を積み重ねられる」であり、クレジット履歴のない人の率は25.1%と遥かに低い。

 注目すべきは、口座を持たない人の貯蓄方法についてだ。「自宅あるいは友人、家族に現金で預けている」という人が67.8%で、次に多いのが「プリペイドカード」の12.6%。つまりこうした人々は現金を保管することに不安を覚えるため、プリペイドカードを使ってお金を貯める傾向がある。

 アマゾンキャッシュはまさにこのプリペイド的な役目を果たす。CVSファーマシー、スピードウェイなどの大型小売店舗と提携し、現金を渡すとスマホ上のバーコードに入金記録が入る。これを使ってアマゾンで買い物ができる仕組みだ。1回の入金額は15-500ドルの間に設定される。手数料は無料で、プリペイドカードの多くが5ドル程度の手数料を取ることを考えれば、口座のない人にとっては便利なシステムと言える。

【次ページ】アマゾンキャッシュの本当の狙いはどこにあるのか

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