- 2026/06/19 掲載
「マック一強」は終わり? バーガーキング急増で始まった新バーガー戦争の大異変
日本のバーガー市場で起きた異変
日本のハンバーガー市場は、長くマクドナルドを中心に回ってきた。安く、速く、どこにでもある。子ども連れからビジネスパーソン、学生、高齢者まで、ほぼ全方位の需要を受け止めるチェーンは他にない。2026年5月末の店舗数は3033店。直近の月次でも全店売上高、既存店売上高ともに前年を上回っている。ところが、その一強市場に小さくない「異変」が起きている。バーガーキングが急速に店を増やしているのだ。2026年5月21日の発表では、5~6月に神奈川、福岡、千葉、大阪、新潟、茨城で計8店を開いた。これにより2026年6月25日時点の予定で全国362店となる。
362店という数字だけを見れば、マクドナルドの脅威とは言いにくい。モスバーガーも2026年5月31日時点で国内1305店を展開しており、バーガーキングはまだ3番手以下の規模にある。だが、店舗数の絶対値ではなく増加ペースに目を向けると見え方は変わる。
バーガーキングは2019年5月末に77店まで減少していた。そこから2023年末に200店を突破し、2026年には300店台半ばに乗せた。外食産業では、いったん縮小したブランドが再び多店舗展開の軌道に戻る例は多くない。店を増やすには、商品力だけでなく、加盟店、物件、採用、教育、物流、広告の歯車をそろえる必要がある。
市場そのものも拡大している。帝国データバンクは2025年度のハンバーガー店市場について、事業者売上高ベースで1兆300億円前後に達し、2年連続で1兆円を超えるとみている。かつてデフレの象徴だったハンバーガーは、価格改定を経ても市場を広げている。
この局面で問われるのは、単なる「マック対バーガーキング」ではない。安く食べる外食から、価値を選ぶ外食へ。日本のバーガー市場で起きているのは、チェーン同士の順位争いではなく、食べ方そのものの変化である。
なぜバーガーキングは行きたい店になったのか
バーガーキングは、かつて「近くにあれば行く店」ではなく、「近くにないから行けない店」だった。味を知っている人は支持するが、生活圏に店舗がない。外食チェーンとしては致命的な弱点である。どれほど商品に特徴があっても、来店機会がなければ習慣にはならない。その弱点が、出店拡大で薄れ始めている。2026年5~6月の新店は、商業施設、駅前、空港、地方都市にまたがる。福岡県筑紫野市のイオンモール筑紫野、千葉県習志野市のイオンタウン東習志野、大阪府泉佐野市の関西国際空港第一ターミナル、大阪市中央区の御堂筋本町など、買い物、移動、通勤、観光の動線に入り込む立地である。
特に象徴的なのが新潟だ。バーガーキングは2026年6月、イオンモール新潟亀田インター店を開いた。新潟では7年ぶりの復活出店となる。地方都市での復活や初出店は、単なる店舗増ではない。「ようやく来た」というニュース性を伴う。チェーン店でありながら、希少性を保ったまま認知を広げられる。
商品にも分かりやすい記号がある。バーガーキングは直火焼きの100%ビーフパティを前面に出す。主力のワッパーは一般的なハンバーガーの約1.4倍、バンズの直径は約13センチ、パティは約114グラムと説明される。外食では、こうした分かりやすさが強い。大きい、肉らしい、直火焼き。初回来店の動機にも、再来店の記憶にもなりやすい。
バーガーキングを運営するビーケージャパンホールディングスの戦略説明会では、マーケティング本部の野田裕太氏が「他社にはない一番のポイント。ここをしっかりと使って広げていきたい」と直火焼きへのこだわりを語っている。大型バーガーや期間限定商品も含め、バーガーキングは安さ一辺倒ではなく、「食べた感」を商品価値にしている。
マクドナルドが日常の安心感を提供するなら、バーガーキングは少し強い欲望を満たす店である。消費者が「今日はマックでいい」ではなく、「今日はバーガーキングがいい」と考える回数を増やせるか。急拡大の成否はそこにかかっている。 【次ページ】1兆円市場で変わったバーガー店の勝ち筋
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