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  • 2017/09/27 掲載

マストドンを使ってわかった「進んでいる点、足りない点」

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2017年、突如登場したかに見えた「マストドン」。分散SNSとして注目を集めたが、分散SNS自体は決して新しい概念ではないという。SNSの歴史を振り返りながら、マストドンが流行った背景、実際に使ってみることでわかる凄さと改善が期待される点、どのようなコミュニティが盛り上がるのか、これからの応用的な使い方など、さくらインターネットの横田 真俊氏とDMM.comラボの佐々木 健氏が語った。

フリーライター 重森 大

フリーライター 重森 大

メインの活動フィールドはエンタープライズ向けITだが、ケータイからADCまでネットワークにつながるものならなんでも好きなITライター。現場を見ることにこだわり、毎年100件近い導入事例取材を行ってきた。地方創生の機運とともにITを使って地方を元気にするための活動を実践、これまでの人脈をたどって各地への取材を敢行中。モットーは、自分のアシで現場に行き、相手のフィールドで話を聞くこと。相棒はアメリカンなキャンピングカー。

マストドンの登場で注目を集める「分散SNS」とは何か?

 マストドンを語る前に、まず「分散SNS」の歴史を振り返ろう、とJANOG(Japan Network Operators Group)40 Meetingに登壇したのが、さくらインターネットのエヴァンジェリスト 横田 真俊氏だ。横田氏は分散SNSを「分散化」「分権化」「連携化」できるSNSと定義した。

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さくらインターネット エヴァンジェリスト
横田 真俊氏

「分散化とは、中央サーバではなく各自が用意したサーバにSNSソフトを導入できること。分権化はOSSで提供されたSNSを自分で設置して自分のルールで運営できること。そして、連携化は他のインスタンスや他のSNSと連携できることを指しています」(横田氏)

 「分散SNS」という言葉をマストドンで初めて耳にしたという人もいるかもしれないが、決して新しい概念ではないと横田氏は言う。1990年代に隆盛を誇ったIRCも分散SNSといえるし、一部で横連携を行っていたパソコン通信も、分散SNSのプロトモデルと考えられなくはない。英語版のWikipediaには「Distributed Social Network」という項目があり、そこには62ものSNSが挙げられているという。

マストドン登場までのSNSの歴史を振り返る

 横田氏はこれまでのSNSの歴史を、時系列で次のように振り返った。

<2002年>
 SNSが海外で初めて大きな流行となった年だ。当時、最も人気があったFriendsterはSNSとして初めて100万人以上の会員を集めた。その後、MyspaceやOrkut、LinkedInなどがサービスインしている。さまざまなSNSが登場した年だが、その流行は日本にはまだ届かなかった。

<2004年>
 ミクシィ、グリー、フェイスブックが登場した。SNSが一般的なものと認識され、普及し始めたのが2004年だ。OpenPNEやrktSNS、いくつかのミクシィクローンも登場した。この年、「Central-WaWaWa」が日本で公開された。中央サーバであるCentral-WaWaWaが各SNSのログインや公開範囲などを管理し、個人が運営するサーバ同士を結びつけるもので、分散SNSの元祖といえる構造のシステムだったが、2006年に開発が終了している。

<2007年>
 ツイッターが登場した。ツイッターに刺激を受け、ツイッターライクなSNSがいくつか登場している。GNU Socialの前身となるLaconicaが、ミニブログサービス間の相互運用のためのオープン規格であるOpenMicroBologgingを実装した。これにより、ツイッターライクな分散SNSも現れた。

<2010年>
 本格的に分散SNSが広がり始めたのが、この頃だ。中でも有名なのは、オープンなフェイスブックとして登場したDiasporaだ。その後、2013年にGNU Socialが登場した以外には、最近までSNS界に大きい動きはなかった。

<2017年>
 今回のメインテーマであるマストドンが登場した。OStatusを利用した分散SNSだ。マストドンが流行った理由として、横田氏は次の3点を挙げた。

「1つは、ツイッターオルタナティブへの希望、2つ目はクラウドの普及、3つ目はSNS間通信の需要の高まりです」(横田氏)

画像
マストドンが流行った背景として、3つの点が挙げられた

 ツイッターは非常識な投稿を掘り出す「馬鹿発見器」といわれたり、ちょっとした失言で炎上したりと息苦しい場になりつつあると横田氏は言う。そして、似たような機能を持ち、それぞれのルールで運用できる代替手段を希望する人がマストドンに期待したのだろうと分析した。

 しかも、クラウドが普及したことで誰でも気軽に低価格でインスタンスを立ち上げられるようになった。そこに加えて、複数のSNSを使い分ける人々がSNS間通信を求めていた。

使ってみてわかった、マストドンのここがスゴイ

 ここでDMM.comラボの佐々木 健氏にバトンタッチし、実際にマストドンを動かしてみてわかったことが発表された。佐々木氏はJANOG関係者向けにjanogdon.netを立ち上げたが、登壇時点でアカウント数は163、トゥート数は1644と「いまいち伸びない」と漏らす状況。

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DMM.comラボ
佐々木 健氏

 ではマストドン全体ではどうかというと、2017年4月時点でアカウント数は約20万、1日のトゥート数は4万弱。それが同年7月になるとアカウント数は76万まで伸びているものの、1日のトゥート数は400弱と、明らかに勢いが落ちている。

 技術的な視点からマストドンを見てみると、モダンなインターフェイスを備え、外部向けのAPIも装備。バックエンドにデータベースを持ち、OStatusでインスタンス間の通信を実現している。

「clocコマンドで調べてみると、約6万5000行と非常にコンパクトに作られていることがわかります。Ruby on Railsを使い、綺麗なコードで書かれているのも特徴です」(佐々木氏)

 6万5000行がどのくらいコンパクトなのかを示すために、佐々木氏は身近なソフトウェアと比較した。たとえば、ネットワークエンジニアにとって親しみの深いbindは64万行、テキストのみをやりとりするIRCでさえ4万5000行のプログラムで動いている。

「マストドンがコンパクトなプログラムを実現できているのは、モダンな開発フレームワークを使っていることと、外部ライブラリをうまく使っているからです。PostgreSQLやKVS、Node.jsなどを使っており、これらをDockerで管理しています。新しい技術をうまく使った、格好いいプログラムというのが私の印象です」(佐々木氏)

【次ページ】格好はいいけれど… 運用の難しさや商用サービスとしての機能不足も

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