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  • 2017/11/27 掲載

「フェイクニュース」は駆逐できるか ツイッター 笹本裕氏やスマニュー VPらが討論

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「フェイクニュース」がまん延している。悪質な情報が良質な情報価値を駆遂する時代だ。「何が本当なのか」「何を信じればよいのか」と読者が悩む時代、情報を提供するオンラインプラットフォーマーは、どのように対策を講じているのか。10月に開催された「ad:tech tokyo2017」ではスマートニュースのバイスプレジデント リッチ・ジャロスロフスキー氏やツイッター 笹本 裕氏などの責任者が登壇し「ブランドセイフティ」についてそれぞれの取り組みを語った。

Miho Iizuka

Miho Iizuka

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これまでのインターネットとは異なる分離したパラレルワールドが出現している、とリッチ・ジャロスロフスキー氏より紹介された“スプリンターネット”。オンラインプラットフォーマーは継続的な課題にどう対峙していくのか

どうする? フェイクニースの横行

 2017年10月17~18日に開催されたアジア最大級のマーケティングの国際カンファレンス「ad:tech tokyo2017」。2日目のキーノートに登壇したスマートニュースのリッチ・ジャロスロフスキー氏は「デジタルメディアが直面する課題と機会」と題した講演で、SNSやクロスデバイスの普及により出現しつつあるスプリンターネット、そしてエスカレートしつつあるフェイクニュースや不正アカウントの横行に対するプラットフォームのあり方について提言した。

 近年、世界的な規模で「フェイクニュース」が問題になっている。政治的利用や広告の透明性など、プラットフォーマーやパブリシャーが抱える品質管理は継続的な課題だ。優れた仕組みづくりを考えなければ、ブランドセーフティの担保もままならない。オペレーションにまつわるあらゆる観点において、広告主やユーザー、ステークホルダーからの信用が問われている。

 「嘘や空想の物語だとしても楽しめればいい」というユーザーが存在するのも事実だ。あらゆるクリエイションは想像力によるもので、発信するコンテンツすべてが実在する人物の実話とも限らない。「曖昧なライン」をさまよう、人々の思考力や倫理観も可視化されている。

 ジャロスロフスキー氏は、「ツイッターやフェイスブックが発表したフェイクニュースや不正アカウントに対しての独自ルール運用がどこまで真剣なのか表からは図りがたい。対策を発表したのも、社会的評価のクリーンナップを主眼としているのではないか」と指摘する。

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スマートニュース バイスプレジデント
コンテンツ担当/チーフジャーナリスト
リッチ・ジャロスロフスキー氏

悪質な情報は良質な情報の価値を駆逐する

 グーグルも無関係ではない。先日起きた米・ラスベガスでの銃乱射事件では、検索結果上位に、容疑者として間違った人物が掲載されるという事案も起きている。米国には古くからアメリカ陰謀の理論家と称され、インターネットや電波を通じて自身の番組から膨大なフェイクニュースを流すアレックス・ジョーンズという人物がいる。ジャロスロフスキー氏は「彼のラジオ番組『InfoWars』は、プラットフォーマーは配信を認めるべきなのか」と疑問を投げかける。

 例えば2012年、米コネティカット州で26名の銃撃者が、子供を含む20名を殺害したというニュースが流れてきた。しかしこれは、出来事自体がでっち上げだった。拡散されたビジュアルの中で泣き崩れている親が、実は雇われ俳優だったとも伝えられた。

 にわかには信じがたい話だが、共感を揺さぶるようなネタに身近な誰か反応することでデマにも勝手な信憑性がついてしまう。ここまでくるとSNSの特性をよく理解しての知能犯・愉快犯かはさておき、ブラックジョークでは片付けがたい。

 ジャロスロフスキー氏は、「経済学では“グレシャムの法則”がある。“悪貨が良貨を駆逐する(Bad money drives out good)”というもの。これに倣って“悪質な情報は良質な情報の価値を駆逐する”ということを提言したいと思う」と警鐘を鳴らした。

 ジャロスロフスキー氏は、世界最大級のデジタルジャーナリズム組織であるオンラインニュースアソシエーション(Online News Association)創設者であり、ジャーナリストでもある。「ニュース事業に携わる中で、日々悪質な情報の持つパワーがもたらす影響を目の当たりにしている」(同氏)という。フェイクニュースが横行することで、本来伝えられるべき情報に脆弱性が出てしまう。結果、読者はすべてのニュースに対して、懐疑的になってしまう。だからこそジャーナリストや学者たちがフェイクニュースが流れるたびにそれを指摘すべきであり、闘うことを讃え、応援しなければならないというのが、同氏の主張だ。

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「倫理観なきフェイクニュースには徹底した対抗策を自主的に実施すべき」と主張するジャロスロフスキー氏

「スプリンターネット」の出現で世界が分断化される?

「我々は日本でのファクトチェックのイニシアティブをとる。自身の提供するサービスが高級サービスや高級品と肩を並べられる品質であるのかどうか。フェイクニュースや疑わしいコンテンツから身を守れないサービスは、有害な環境しか生み出せない。アドブロッキングのソフトウェア導入が、アメリカでは18%、中国では13%に及ぶという数字もある。この数字はどんどん拡大していて、プラットフォーム自体の未来について、自ら首をしめていることに気が付いていない」(ジャロスロフスキー氏)

 プラットフォーマーがあまりにも大きくなり制御が難しくなることに対して、「政府が権力をもってネガティブな行動を規制することについては賛成しかねる」とジャロスロフスキー氏は力説する。多くの独裁政権は「国家にとって不快な行動を規制する」という口実で、自由な情報やアイディアの交流の息の根を止めてきた。ジャーナリストでもあるジャロスロフスキー氏は、その現場を数多く見ているのだ。

「オンラインニュースアソシエーションの人気スピーカーで、フューチャーリストのエイミー・ウェブ氏は、メディアとジャーナリズムにフォーカスしたトレンド/未来予測を毎年発表します。その中で私が注目したのは、“スプリンターネット”の出現です」(ジャロスロフスキー氏)

 インターネットの代替に別々の分離したパラレルワールドが出現し、コンテンツ、ツール、テクノロジーでさえも、それぞれ独自のカルチャーやルールを持つと考えられているのが「スプリンターネット」である。これはメディアとしてのインターネットの概念を弱体化するようなものとも考えられている。

「従来の取り組み方がまるで意味をなさないスプリンターネットの概念が流布することは不可避です。これらの動きに対し、フェイスブック、ツイッター、グーグルそれぞれが、悪質な情報をクリーンアップするためのコストを予測できていないのではないかと私自身は考えています」(ジャロスロフスキー氏)

 私たちに何ができるか。本当にこの問題を是正することができるのか。やがては避けられない問題を第三者に強いられることなく、オンラインプラットフォーム全員が手を携え、ブランドにとって安全な環境を作るよう要求しなくてはならない。ジャロスロフスキー氏は「それが遂行できなければ、現在提供しているサービスの価値も、やがては切り崩される」と指摘した。

手軽な情報発信と社会的責任のバランスは

 プラットフォーマーに対する強いメッセージの後で登壇したツイッター ジャパンの笹本 裕氏は、「4,000万MAUのTwitterで実現できるブランド構築」をテーマに講演。リリースされたばかりの動画インストリーム広告で提携する数十社のコンテンツパートナーから、テイストメイドジャパン代表取締役の吉岡 研一氏と、ブルームバーグ メディア グループ メディアセールスディレクターの岡崎 慎介氏と共に、良質なコンテンツ提供のあり方や、ブランドセイフへの取り組みを語った。

 笹本氏は現状の問題への取り組みを冒頭で延べ、日本国内におけるTwitteの規模やユーザー特性、優良コンテンツパブリシャーとの取り組みについて説明した。

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ツイッター ジャパン 代表取締役
笹本 裕氏

「先ほどのセッションを受けて現在の対応状況についてお話しますと、問題に対しては厳しい努力をしていかなくてはいけないと思っております。社会の中にヘイトは残念ながら存在して、100%は難しいがどれだけ早く対処していくかが大切なこと。AIの言語解析の精度を高めたり、人的なリソースも拡充したりするなど、粛々と対策を進めている。ツイッターにとっても日本は大切なマーケット。私自身の仕事の1つとして責任をもって改善をしていきたい」(笹本氏)

 ツイッター ジャパンは2017年10月19日、日本での月間利用者数が4,500万人を突破したと発表した。この1年1か月で500万の増加、グローバルでは米国に次いで2番目に多い利用者数だ。他国では利用数の鈍化傾向もあるなか、日本では利用を伸ばしている要因は、動画視聴数の多さだ。日本での1日の動画視聴回数は12億回(2017年8月現在)で、1年間で2倍に伸びている。

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テレビ視聴やYouTubeなど、動画サイト利用ではフォローできないユーザーにもTwitterでリーチできると試算している

「元気ないんじゃないのかという声もいただいていますが、対前年比でみると着実に成長している。日本においてはカルチャーにもフィットしたのか最も早く成長している国の1つ。私が四年前に就任したころからは約4倍の数になっています」(笹本氏)

 Twitterのアクティブな利用者、特に動画利用者は10~20代中心という印象もある。しかし、テレビCMやプロダクト改善などを行った結果、30代以上のユーザーも半数を占め、年齢分布のバランスは均衡するようになったという。では、現在の利用動向はどのようになっているのか。

【次ページ】140文字のテキスト情報を見ているのではなく、「テキストで検索して動画を見る」という状況が生まれている

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