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  • 2017/12/19 掲載

RPAで20人月分の工数を自動化、オリックスが大きな成果を出せたワケ(2/2)

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働き手の多様化に応えるためRPA活用を開始

 そして喜舎場氏は、働き手の多様化へと話題を進め、まず働き手の多様化を考える上では、VMO(ベンダー・マネジメント・オーガニゼーション)という考え方を採っていると説明する。

 「一般的にVMOは、仕事を発注する社外の複数ベンダーを管理するための考え方だが、OBCOでは働き手の一人一人を、そのベンダーに見立てて、様々な業務を多様な働き手にどう振り分けていくかを考えている」

 そのファーストステップが冒頭でも少し触れた働き方の多様化で、OBCOでは2015年に常時/随時の在宅勤務制度や、時間単位での有給休暇制度を導入した。そして2016年から働き手の多様化に着手、OBCOの在宅OB/OGを中心に構成されるプライベートワークグループ(PWG)、クラウドワーカー、RPA、外部委託業者の各々について、それぞれどんな特徴を持っているのかを把握した上で、業務特徴を区分けして再配置することを実践している。

「業務を細分化して定型業務を切り出そうという視点でずっと業務設計を行ってきたが、やがて切り出す先は何も社員でなくてもいいよね、という発想に行き着いた。VMOでは人員レバレッジ率(=業務量÷人員数)を最大化できれば、ローコスト化につなげられるという考え方に基づいて、業務の再配置を行っている」

 定型業務の切り出し先として、まずPWGは、OBCO独自に組成したチームで約20名からスタートした。仕事出来高制の請負契約で業務を依頼する働き手で、細分化した定型業務を遠隔地で処理してもらうという発注内容だ。

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元社員や県内外の短時間雇用者を対象にプライベートワークグループを組成

 またクラウドワーカーは、OB/OG以外にも発注先を広げようという目的で設置した働き手で、新たにクラウドソーシングシステムを自社開発し、ここを経由して、たとえば大量の情報を細分化して配信し、入力作業を行ってもらうというものだ。ただし、オリックスグループのセキュリティレベル上、不特定多数の人に発注することはできない。そこで現状は沖縄県のみの展開で約100名、一人一人面談して履歴書も出してもらった上で、スタッフを登録している。

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働き手の多様化としてクラウドワーカーを活用

 そして3つ目の働き手がRPAで、OBCOでは2015年からRPA活用のための取り組みを開始した。

「当時RPAはまだそれほど注目されていなかったが、その時に強く感じたのは、この仕組みはいずれ日本を変えるだろうということ。働き手の多様化を進めていた我々としては、入り込まなければ時代に乗り遅れるという恐怖が非常に強かった。そこでRPAも“働き手の一人”として、積極的に取り入れていく選択をした」

PoCでミス撲滅や処理コスト8分の1などの効果を実証

 そこで2016年4月からまずレンタカー業務を対象に、RPA適用のためのPoC(概念実証)を実施した。

 レンタカー業務は、顧客からメールや電話、Web、Faxの各媒体を介して予約の申込受付を行う。中でもWeb経由の申込は全体の44%と一番多い。

「このWeb経由の受付は実は意外にアナログチックで、当時は旅行会社などからの申込データを一旦紙に出力して、レンタカー独自の基幹システムにエントリーして車を押さえるというフローになっていた。多大な手間がかかり、またレジャー季節である夏場の繁忙が非常に大きかった。通常時で50名体制だが、ゴールデンウィークから夏場にかけては約80名の人手が要る。繁閑差にかなり苦しんでいた業務で、これを何とかRPAで代替できないかと考えた」

 そしてPoCの結果、QCD(品質/コスト/デリバリー)いずれの観点からも効果があるという結論に至った。

「まず品質でいえば、これまで3か月間で8件程度あったミスが皆無になった。1件当たりの処理コストも160円から28円へと約8分の1になり、デリバリーについても、従来の人手作業では処理件数に限界があるので納期ルールを設定していたが、RPAではロボットが動くので、その制限も無くなった。これらの効果を確認した上で、同年7月から全社展開に向けた対象業務の棚卸しに着手した」

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レンタカー業務でのRPAのPoC結果

 棚卸しの方法としては、ECOまるアーツで計測している業務をすべて書き出し、それらを入力作業や書類保管など11の業務タイプに分類、各々についてRPAに移行できるプロセスがないかどうかを精査して、自動化できる工数が34.7人月分あることを洗い出した。

 そして同年10月には、5名からなるIT企画チームを編成し、OBCO全体業務を11の業務種別に分類し、自動化領域を選定した上で、各事業部単位にてロボットを設計/作成するロボ専任者を配置し、全社に展開した。

「社内でRPA推進のため、IT企画チームを新設し、ロボの設計・開発のためにロボ担当者をアサインした。社外ベンダーにはそのロボ担当者の教育や開発サポートを依頼しており、こうした現場主体の体制を構築して現在も活動中だ」

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RPA要件定義などの推進ポリシー

 現在グループ企業12社から請け負っている27種類の直接業務のうち、7つのチームで合計77体のRPAを実装中で、デビュー待ちのロボットも後15体あるとのことだ。今後は1か月当たり30人月の削減を目標に、ロボットの開発または人とRPAとのハイブリッド運用に取り組んでいくという。

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人とRPAのハイブリット運用に取り組む

「当社には多くの企業様が見学にいらっしゃるが、皆さん口を揃えて言われるのは、これは沖縄だからできたんじゃないか、あるいはOBCOさんだからできたのではないかということ。でも我々がECOまる活動で効果を出せたのは沖縄だからでも、OBCOだからでもない。先にお母さんが多い職場と話した通り、お互い助け合うことで乗り越えられるのなら、そこは実直に、自律的にやろうというある意味、当たり前の社風があったからこそ。また自分たちの業務には当てはまらないということを言われる方もいるが、どんな業務でも必ず定型業務と非定型業務に分けることができる。自分たちの業務は特別だという意識はリセットされたほうがよろしいかと思う」

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