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- 2018/01/23 掲載
エクスポネンシャル思考とは何か? 企業を「指数関数的に」飛躍できる考え方
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「エクスポネンシャル思考」とは何か?
「エクスポネンシャル」とは、「指数関数的」という意味。1の次が2、2の次が3、3の次が4というのが人間の直観にそった「リニア(直線的)」な変化だが、「エクスポネンシャル」な変化は1の次は2だが、その次が4、その次が8というもの。この変化を10回繰り返すとリニアとエクスポネンシャルの差は100倍近くなる(図1)。エクスポネンシャル思考のすさまじい威力は、とんち話でも良くある。豊臣秀吉が家臣の曾呂利新左衛門に褒美を聞いたところ「1日目はたたみ1畳に米1粒、2日目は次の1畳に2粒と倍にして、この広間にある100畳分の米粒を下さい」と答えた。秀吉は「欲がない」と思ったが、実は50畳目には500兆粒を超える(100畳目は天文学的数字)。インドにも賢人が王とのチャトランガ(チェスの原型のゲームで64マスある)の勝負の賭けで、「1番目のマスに1粒、2番目に2粒と倍にして全マス分欲しい」といった同様の話がある。
指数関数的な変化は、科学技術から経済社会にわたって幅広くみることができる。もっともよく知られているのが「ムーアの法則」である。シリコンバレーの代表的企業であるインテル創業者の一人のゴードン・ムーアが1965年(インテル創業が1968年なのでその前)に提唱したもので「半導体の集積密度は、18カ月~24か月で2倍になる」という経験則である(図2)。
身近な例では、金利の複利計算や経済成長率は指数関数的な変化の代表例である。1800年前後からの産業革命により経済成長が可能になった国とそうでない国に分かれたが、たとえ毎年数パーセントの成長率でも200年にも及ぶとその差は明白で、「大分岐」とよばれる(図3)。現在さまざまな格差があり、それがますます加速しているのはエクスポネンシャルの力の負の側面であり、その威力を深く知るシリコンバレーでは「べーシックインカム(最低限所得保障制度)」の議論が盛んなのだ。
「エクスポネンシャル思考」と成功者たち
このエクスポネンシャル思考で最もパワフルな「時間が経過するに従って増加速度がますます増していく性質」を「収穫加速の法則」という。アインシュタインは複利のことを「人類最大の発明」と言ったとされるが、科学者や実業家問わず多くの成功者たちはエクスポネンシャル思考をしている。シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタルのYコンビネータの創業者ポール・グレアムはDropboxやAirbnbに投資して成功した。投資家が最も欲しいものは「エクスポネンシャルな成長の秘訣」であり、「エクスポネンシャルな成長は人類の直観に反するので急成長するスタートアップでは創業者ですらその速度に驚いてしまう」としている。
シリコンバレーに多数の人材を輩出するペイパル・マフィアのドンとして知られるピーター・ティールは、万物の法則は指数関数から導かれる「べき乗則」に従うという。そして「特別に重要だが、驚くほど理解されていない次元がある。ベンチャーキャピタルで飛びぬけて重要な概念、それこそが〝エクスポネンシャル・パワー″だ」とまで断言している。
グーグル創業者で現アルファベットCEOのラリー・ページは「漸進的アプローチではいずれ時代に取り残される。とくにテクノロジーの世界では漸進的進化ではなく、革命的変化がおこりやすいからだ」(土方奈美訳『How Google Works』より)と述べた。グーグルには「10%の改善ではなく10倍のスケールを狙え」との不文律があるが、これらもエクスポネンシャル思考からくるものだ。
そしてエクスポネンシャル思考を語る上で欠かせない人物は、レイ・カーツワイルだろう。
【次ページ】「エクスポネンシャル思考」とシンギュラリティの関係
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