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  • 2017/12/15

八子知礼氏に聞くシンギュラリティ後の世界、「AIを使う人と使われる人に二極化する」

AI技術が進展することで、IoTの取り組みは今後どのように変わり、ビジネス、あるいは社会の仕組みはどう変わっていくのか。前編に続き、後編では、ウフル 専務執行役員 IoTイノベーションセンター所長の八子 知礼氏に、日本のモノづくりがどのように強みを発揮していけばよいか、「シンギュラリティ」後の社会の姿について聞いた。

(聞き手:ビジネス+IT編集部 松尾慎司)

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ウフル
専務執行役員
IoTイノベーションセンター所長 兼
エグゼクティブコンサルタント
八子 知礼氏

日本のものづくり企業の生き残り方法

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──日本でも「ものづくりベンチャー」待望論がありますが、必要なことは何だとお考えですか?

八子氏:一つのヒントとして、さまざまな技術を応用した「モノづくり」があります。たとえば、長野県伊那市にあるスワニーという会社は、社員20人程度の小さな会社ですが、「デジタルモールド」という技術を持っています。

 これは、3Dプリントした樹脂型を用いた熱可塑性樹脂を射出成形する最新技術を用いて、迅速で安価に、金属部品の試作製造を小ロットで行うという仕組みです。たとえば、PoCを行う場合などは、台湾などの海外メーカーに発注して2週間かかるところを、スワニーでは2日程度で完成してしまいます。さらに技術的には、3D CADと組み合わせて極めて高精細なモノづくりが可能な技術も有しています。

 しかし、今のところ日本の高い要求品質の中では、こうした技術はまだ「安かろう、悪かろう」という見られ方をしてしまう。いい技術なのに、インダストリアル領域にも、コンシューマー領域にも、そういったモノづくりから生まれた製品が広まっていかないのです。

──ある程度、メジャーを指向していくべきなのでしょうか。

八子氏:すべてがメジャーを指向する必要はありません。マスプロダクションというより、ユーザーのニーズに合わせて色や形を変えながらマスカスタマイゼーションで少量多品種生産します、というようなビジネスにスケールしていかないことに歯がゆさを感じます。

 これは産業構造的に、そうしたベンチャーにお金が回っていかない、つまり、発注者側の意識として「迅速に、安価に」モノづくりをするのは日本においてはコストの安い海外という固定観念があるのかもしれません。それに対抗して、上述したスワニーなどは、地産地消という、地場の会社ですべてを完結するバリューチェーン、ビジネスモデルの中で最新技術を使えばまだまだ迅速にやれることがある、ということを受注者として誇示し、発注者に暗に価値として突きつけているわけですね。今後大いに期待しています。

 やはり、日本国内で完結するモノづくりをもっと実現していくには、国が主導して取り組んでいって欲しいとは思いますね。

──ニッチで生きていくのか、それともマスプロダクションでスケールしていくのかは、経営戦略としても難しいところがあります。

八子氏:特化した技術があっても、自社だけのビジネスにこだわっている会社は、ニッチに進んでいった結果、サイロ化していくケースが多いと思います。どんどんサイロ化していって、後継者がいなくなり廃業に追い込まれるケースです。こうしたケースでは、その事業を競合にでも売却して、ある程度の規模を持った“かたまり”にしていくアプローチをとらないと、この先、5年、10年後には立ちゆかなくなってしまいます。

 たとえば、モノづくりを他の会社に譲る、あるいは、これまで、加工の部分を取引先に外注していたのを、共同受注、共同の工程管理、共同の販売、出荷、納品計画、もしくはサポートというところまで、トータルで共通化していく。これもある種のプラットフォーム化ですが、日本もこうしたある種の合従連衡をもう少し加速していく必要があると思います。

 具体例を挙げると、今野製作所、西川精機製作所、エー・アイ・エスという都内の金属加工の3社が、ITを活用してつながり、共同受注、共同生産、出荷管理の取り組みをしています。それぞれが得意分野を生かしながら、顧客から見ると1社に発注したような商流になる。それによって売上も生産性も上がっていく。日本の地方中小企業も自社だけでもがくのではなくもっとこういう取り組みをすべきだと思いますね。

──一方で、モノづくりの現場では、深刻な人材不足という問題も抱えています。

八子氏:技術があって、ビジネス機会もある。ところがそれを実現していく人材がいないという課題を持つ企業は多いです。IoTではとりわけ、ITとモノづくりの両方が分かっている人材が極めて少ない。

 もう一つ悩ましいのは、組み込みの開発などに携わっている技術者は、自分たちをハード屋と呼び、ITに携わっているという意識が薄いということです。まさか自分たちが、IoTの世界で必要とされるスキルを持っているとは感じていない場合が多いです。中国企業などでは、たとえば、生産工程のスキルを持つベテランに工場の立ち上げに従事してくれたら、イニシャルボーナスで3000万円を保証しますというような条件を当たり前のように提示するところがあります。

 ですから、本気で人が欲しいなら、日本企業側も、これまでの待遇や給与体系とは違うモデルで、人材を確保していくアプローチを取っていく必要があるでしょう。一方で、上述したように、社内には有望な人材がいるケースもあって、そのあたりの処遇改善や流動化を促進していく必要があるのかなと感じています。

人口減による「縮退」に準備すべき

──今後IoTはどう進展していくのか、中長期での見通しをお聞かせください。

八子氏:デジタル化が進んでいく中で、テクノロジーが我々の解釈を超え始めていくでしょう。たとえば今から10年後には、コンタクトセンターにいる人間のエージェントは今の半分以下の人数になってしまって、電話をかける我々は、通話の相手がロボットだとは思っていない、という状況が起こりうるわけです。

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テクノロジーが我々の解釈を超え始めると、リキダイゼーション(液状化)が起こる

 テクノロジーが我々の解釈、能力を超え始めていくと、これまで職種別、業種別、もしくは能力別というように分類されていた産業構造が曖昧になっていく。我々は「リキダイゼーション(liquidization:液状化)」と呼んでいますが、ビジネスの垣根があいまいになり、無秩序化していく。

 そうなると、ビジネスのアセットも、重厚長大ではなく、小さなアセットが、小さな単位で稼動して、ビジネスはそのアセットの集合体で構成されていくという考え方になってくると思います。

──ITの世界でいう「マイクロサービス」に近い考え方でしょうか。それを組み合わせることでビジネスの柔軟性を確保するといった文脈になりそうです。

八子氏:そうですね。それから、もっと長いスパンで見ると、リキダイゼーションの先に何が起きるかというと、日本に限っていえば「縮退」です。20年後の日本では、いよいよ人口減少が現実のものとなります。1億1,000万人を切る人口というのは、ちょうど1960年頃と同じくらいでしょうかね。

 ということは、我々の生活、社会インフラも、本来であれば1960年頃の水準まで落とさざるを得ない事態に直面します。今から20年後、30年後には、今整備されている高速道路やダムのうちの半分くらいはもう整備しない、できないという可能性があるわけです。

 そのときに、整備されていない道路でも、走れるのか、走れないのかを、カメラやセンサーで撮影、把握できるということになれば、今とは違うアプローチでインフラを維持できるかもしれません。IoTを用いた社会インフラの維持は、そうした時代を見越して、今から準備を始めていかなければならないテーマです。

──しかも年齢の人口分布は、1960年の頃に比べると圧倒的に高齢者が多くなると。

八子氏:労働人口という意味では、定義が変わる可能性もあると思っていて、「人生100年時代」には、今まで65歳で線引きされた労働人口は減るかもしれませんが、逆に65歳から85歳まで人口は増えるわけで、その意味で、労働人口をプラス20年、加算して考える必要があるのではと思います。

 これまで65歳で引退しようと考えていた人にとっては、85歳まで元気に働かないといけない世の中がやってくるわけです。そうなると、テクノロジーの「使いどころ」も変わってきます。今のように、何でもかんでもIoTで自動化、無人化すればいいというわけではなく、場合によっては、元気な高齢者が、より安価な労働力を提供するというケースがあるかもしれないということです。

【次ページ】AIで高度化した領域と、AIに人が使われる領域に二極化が進む

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