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  • 2018/03/08 掲載

関西都心部でタワマンが急増、小学校不足は解消できるか

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タワーマンションなど大規模マンションの建設が進む関西の都心部で小学校の児童が急増し、地方自治体が対応に追われている。住民の都心回帰の動きが子育て世代を中心に加速しているためで、大阪市が2018年度当初予算案に校舎の高層化を盛り込んだほか、神戸市は校舎増築と越境入学、京都市は小学校新設で対応する方針。これに対し、西宮市は児童急増地区のマンション建築自体を規制し、教育環境の維持に努めている。同志社大社会学部の鰺坂学教授(地域社会学)は「都心回帰の動きはあと5~10年くらい続く」とみている。急激な人口移動に振り回され、関西の自治体は頭を悩ませる一方だ。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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大阪市北区の中之島に登場したタワーマンション。大規模マンションの建設ラッシュが都心部で急激な児童増加を引き起こしている
(写真:筆者撮影)

大阪市は校舎の高層化を2018年度当初予算案に計上

 休み時間になると待ちかねたように児童が教室から運動場へ飛び出してくる。約2,600平方メートルとそれほど広くない運動場は、すぐに児童でいっぱいに。大阪市西区の西船場小学校。市内でも児童が最も急増している学校の1つに数えられる。

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幼稚園跡地に校舎を増築する計画の大阪市西区の西船場小学校。児童の急増で校内は満杯状態が続く
(写真:筆者撮影)

 全校児童は2017年度で500人を超えた。2011年度の282人に比べ、倍近い急増ぶりだ。2014年度に校舎を増築したが、すぐ満杯になった。運動場も学年ごとに交代で使用するルールを定めたものの、それも限界に来ようとしている。

 2022年度には全校児童が今より400人以上増えて950人を超し、11教室が不足する見込み。市教委は敷地内にある西船場幼稚園を廃園にし、校舎を増築することを住民らの反対を押し切って決めた。市教委施設整備課は「運動場を減らせず、増築場所が他にない」と苦しい胸の内を打ち明ける。

大阪市西船場小学校の児童増加予測
2011年度282人
2012年度313人
2013年度342人
2014年度378人
2015年度415人
2016年度466人
2017年度540人
2018年度601人
2019年度690人
2020年度783人
2021年度863人
2022年度952人
(出典:大阪市教委資料から筆者作成)

 市内で児童が急増しているのは、西船場小学校だけでない。都心部の北区、中央区、西区では8割の小学校が5年後に教室不足になる見通し。2022年度の児童数が現在の倍近くまで膨れ上がりそうな小学校は1つや2つではない。

 市の人口は2月現在271万人で、緩やかな増加傾向にある。これに対し、児童数は11万4,000人で、ピーク時の1958年に比べて3分の1以下になるなど減少傾向が続く。それにもかかわらず、都心部で教室不足になるのは子育て世代の都心回帰が続いているからだ。それを裏付けるようにここ数年、北、中央、西の3区は人口が急増している。

大阪市都心部3区の人口増加
北区西区中央区
2013年117,54388,30786,032
2014年120,67289,74088,963
2015年123,66792,43093,069
2016年125,98395,52295,457
2017年129,41297,66796,438
(出典:大阪市「大阪市推計人口年表」から筆者作成)

 このため、市は吉村洋文市長をトップに据えた組織横断型のプロジェクトチームを編成、対応策を検討してきた。その結果、浮上したのが校舎の高層化で、2018年度当初予算案に設計など関連事業費約15億円を計上した。

 高層化の設計を進めるのは、中央区の開平小学校。ほかに中央区の玉造小学校で新校舎の設計、北区の西天満、大淀、扇町、西区の西船場、堀江、中央区の中大江の6校で増築を進める。吉村市長は記者会見で「今後も北区にある高校跡地を活用するなど児童急増エリアの教育環境確保に全力を挙げたい」と決意を示した。

関西のマンション建設、首都圏を上回る伸び率

 都心回帰の動きを加速させている最大の要因が、都心部でのタワーマンションなど大規模マンションの建設ラッシュだ。不動産経済研究所大阪事務所によると、2017年に関西2府4県で発売されたマンションは1万9,560戸に上る。

 年間2万戸以上が発売されていた2010~2013年に比べると少ないが、対前年比4.7%の増。首都圏の0.4%増を上回る伸び率を記録した。うち、大阪府での発売分が1万3,097戸を占め、対前年比12.7%の伸びを示している。不動産経済研究所の笹原雪恵大阪事務所長は「場所は北区など都心部に集中している」と述べた。

 1月の関西マンション市場動向を見ても、新規発売物件に対する契約戸数の割合を示す契約率は前年同月比3.0ポイント増の78.1%。13カ月続けて好不調の目安とされる70%を超えた。

 大阪市中央区の「グランメゾン上町台ザ・タワー」初回売り出し166戸が月内完売したのをはじめ、2020年から入居予定の北区の「ブランズタワー梅田North」の売れ行きも好調。当分の間、今の勢いで都心回帰が続きそうだ。

【次ページ】神戸市や京都市も都心部で児童が急増

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