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- 2018/03/20 掲載
スクエニの三宅陽一郎氏、農家エンジニアと「ゲームとキュウリのAI活用」を語る
これからのゲームは「三つのAI」が自動で動かす
今日、ゲームソフトの開発にも当たり前のようにAIが活用されている。このほど都内でAIをテーマに、専門家たちが最先端テクノロジーを語るトークイベント「J-WAVE INNOVATION WORLD COMPLEX vol.1 ~AIを知る・AIを体験する~」が開催された。
イベントのMCを務めたのは、AR三兄弟・長男の川田十夢氏と、番組アシスタントとして活躍しているAI Tommy。AI TommyはIBM WatsonのAPIが活用されており、番組ではゲストの性格分析も行っている。イベントのオープニングでは、会場からの質問に答えるというパフォーマンスも見せた。
「ゲームAIはメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの三つで構成されている」と三宅氏。
「メタAIは各プレイヤーの心理を観察して、ゲームワークそのものを自動生成する。これはゲーム全体をコントロールするAIで、私は『神様AI』と呼んでいる」(三宅氏)
たとえば、プレイヤーの緊張度が低いと、メタAIがゾンビを出現させ続けてユーザーの緊張を煽り、ある程度のところで徐々にゾンビの数を減少させ、リラックスさせるといった演出を自動で行う。「最近ではプランニングという物語をAIが作り出す技術も搭載している。これからはメタAIが各ユーザーに合わせたゲームを出してくれる時代になる」と三宅氏は説明する。
キャラクターAIはキャラクターの感覚や思考、身体能力を実現するAI。ナビゲーションAIはその名の通りカーナビのようにナビゲーションを行うAIである。
つまり、両者で構成されたゲーム空間を俯瞰的に見てコントロールするのがメタAIというわけだ。蓄積されたプレイヤーのデータをもとに、「ここにたくさんのプレイヤーがいるから、こういうイベントを起こして人の流れを整理しよう」というな処理を、人間を介さないでできるようになるという。
キュウリもAIで選別する時代に
小池氏によると、キュウリは長さ、太さ、曲がり具合、色などにより等級が分かれるという。この選別作業は難しく、長年の経験や生産者のこだわりがものをいう。特に難しいのが品質の判断で、この時間がかかる手作業をAIに置き換え、その時間をキュウリの世話に充てたいという思いから、等級を自動選別するAIの開発が始まった。
開発から改良を重ね、今ではテーブル形キュウリ選別システムが作業場で用いられている。テーブルの上にキュウリを置くと、上部のカメラでキュウリを撮影、その画像をAIが判断して等級を表示するというものだ。
ハードウェアにRaspberry Piを使用、AIの機械学習のエンジンはTensorFlowを採用したという。テーブル形キュウリ選別システムはスタンドアローンで開発されており、どこの作業場にも持って行くことができる。さらに、等級を判定するだけではなく、教師データを集め学習させるモードや収量などを表示するモードも搭載している。こうしたAI導入により、選別作業は「1.4倍にスピードアップされた」と小池氏は話す。
現実を拡張するには「メタAI」が欠かせない?
川田氏は「テクノロジーの次の一手は、人の経験を受け渡すことにある」と述べ、「現実を拡張するというAIの役割を考えたとき、メタAI的なモノが一つ上にあると、人の経験や知識を受け渡すことが容易になるのではないか」と三宅氏と小池氏に問うた。三宅氏は同意し、次のように述べた。
「今、家庭でもお掃除ロボットをはじめ、AIが搭載された家電が増えている。今はそれぞれがバラバラに動いているが、メタAI的なものがあれば、各家電に搭載されたAIが調和して、より高い品質のサービスを与えることができるようになる」(三宅氏)
また小池氏も「たとえば農業で使うハウスの環境の管理など、人の知識や経験、ノウハウが必要だったものにAIを活用したい。そのためにはメタAI的なモノが有効だ」と語る。
セッションの最後に、三宅氏、小池氏は現実を拡張するAIについて思いを語った。
「ゲームをスクリーンから解き放ち、街全体にゲームを実装していけるような仕組みを作って、現実空間とデジタル空間を融合したゲームを作りたい。もちろんそのゲームを管理するのはメタAI。メタAIがある場所にイベントを発生させたり、人が集まりすぎると他の場所に誘導したり、ゲームの内容をダイナミックに制御するモノを作っていきたい」(三宅氏)
「農業人口は加速度的に少なくなっている。高齢化で今までの生産ノウハウはおそらく数年で失われてしまう。それを継承するためにAI技術を活用し、これまで培ってきた生産ノウハウを効率的に未来に残していく活動をしていきたい」(小池氏)
最後に川田氏から「このセッションを機に、これからも対話を継続的にし、今語られた構想を実現につなげていきたい」と抱負が語られた。
【次ページ】「未来の運動会」プロジェクトとは
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